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不動産の購入や売却、住宅ローンの借り入れなどをしたときには、登録免許税という税金を支払う必要があります。あまり聞き馴染みがないものなので、このような疑問を持つ方も多いでしょう。
- ● 納税額はいくら?
- ● 手続きの方法は?
- ● どのタイミングで支払うの?
今回の記事では、不動産の登録免許税の計算方法や手続きの流れについて解説していきます。
目次
1. 登録免許税の概要
まずは、登録免許税とはどういう税金なのかご説明します。
不動産の登録免許税とは
登録免許税は、登記をするときに国に対して納める税金です。登記は大きく分けて不動産登記と商業登記の2種類に分かれていて、土地や建物に関するものが不動産登記になります。
不動産登記とは、土地や建物の物理的状況や権利関係などを法務局の帳簿に記録したものです。登記をすることで、土地や建物に対する自分の権利を第三者に主張することができます。
登記簿は一般公開されているので、誰でも全国の土地や建物の情報が分かるようになっています。
登録免許税が必要な不動産登記の種類
登録免許税は、すべての不動産登記において納付するものではありません。登記の種類によっては、登録免許税が非課税のものもあります。
登録免許税が必要な不動産登記(例)
- ● 所有権保存登記
- ● 所有権移転登記
- ● 抵当権設定登記
- ● 抵当権抹消登記
- ● 賃借権設定登記
- ● 住所・氏名変更登記
- ● 合筆・分筆登記
これらの登記手続きを行う際には、原則として登録免許税の納付が義務付けられています。
一方で、下記の不動産登記は非課税となっています。
登録免許税が非課税の不動産登記(例)
- ● 建物表題登記
- ● 建物滅失登記
- ● 地目変更登記
どのようなときにどの登記が必要なのかは、こちらの画像を参考にしてください。比較的メジャーな不動産登記をご紹介しています。
2. 登録免許税の計算方法
つづいて、登録免許税の計算方法についてご説明します。
税額の基本的な計算方法
登録免許税の税額は、登記の種類や原因(登記する理由)、対象となる不動産によって異なります。
基本的には、以下の計算式で算出されます。
登録免許税額=課税標準×税率
課税標準は、登記の種類によって以下の3パターンに分かれます。
- ① 不動産の価額(固定資産課税台帳の価格)
- ② 債権金額
- ③ 不動産の個数
不動産の価額で計算する場合
登録免許税の計算で一番多いパターンは、①不動産の価額です。
ただし、不動産の実際の購入価格で計算するわけではありません。市町村などの役所(以下、市役所とする)が管理している固定資産課税台帳の価格(または評価額)があれば、それを使用します。
一般的には、固定資産課税台帳の価格は実際の取引価格よりも安いです(取引額の7割前後)。
固定資産課税台帳の価格は、毎年市役所から不動産の所有者へ送付される「固定資産課税明細書」で確認できます。登記の申請をするときには、この課税明細書を添付することになります。
もし紛失してしまった場合は、市役所に行って固定資産評価証明書を発行してもらいましょう。
不動産の価額で登録免許税を計算する登記の代表例と、基本の税率をご紹介します。
登記の種類 | 基本の税率 | 軽減措置の有無 |
---|---|---|
所有権保存 | 0.4% | 〇 |
売買・贈与・交換による 所有権移転 |
2% | 〇 (売買のみ) |
相続による 所有権移転 |
0.4% | × |
賃借権設定 | 1% | × |
同じ所有権移転登記でも、相続の場合は税率が低くなっています。
また、登記によっては軽減措置というものがあり、条件を満たすことで税率が低くなることがあります。詳しくは後ほど解説します。
債権金額で計算する場合
登記の中には、債権金額(借り入れした金額)を基に登録免許税を計算することがあります。それは、「抵当権設定登記」という住宅ローンを借りたときに申請する登記です。また、「根抵当権設定登記」という登記でも債権金額(厳密には極度額)を基に登録免許税を計算します。
抵当権設定登記の基本税率は0.4%ですが、条件を満たすと軽減税率の0.1%になります※。
※令和9年(2027年)3月31日までの申請が対象。後ほど解説する「建物の軽減措置」と同様の条件を満たす必要があります。
例えば5,000万円を住宅ローンで借り入れて、購入した土地と建物を担保に入れるとします。
登録免許税は、基本税率なら5,000万円×0.4%=20万円です。もし軽減措置が適用されるなら、登録免許税は5万円になります。
ここで、「土地と建物にそれぞれ登記をするなら、20万円×2で40万円になるのでは?」と疑問に思う方もいらっしゃるでしょう。土地と建物を同時に担保に入れる(まとめて1件で抵当権の登記申請をする)場合、登録免許税は20万円(または軽減税率で5万円)になります。
なぜかというと、登録免許税の計算の基になるのは債権金額だからです。
なお、土地と建物を共同担保にするものの、先に土地だけ抵当権設定登記をして、建物は完成してから追加で抵当権設定登記の申請をするケースもあります。
この場合、土地の抵当権設定登記の登録免許税は「債権金額×税率」ですが、建物のときには「不動産の個数×1,500円」が登録免許税になります。建物が一棟だけなら、1,500円です。
このように、ケースによっては抵当権設定登記でも不動産の個数で計算することがあります。
不動産の個数で計算する場合
最後に、登録免許税を不動産の個数で計算するパターンをご紹介します。
先ほどご紹介した抵当権設定(共同担保の追加)については紛らわしいので記載していません。
登記の種類 | 不動産1つあたりの金額 |
---|---|
抵当権抹消 | 1,000円 |
住所・氏名変更 | 1,000円 |
分筆 | (分筆後の土地数で計算) 1,000円 |
賃借権設定 | (合筆後の土地数で計算) 1,000円 |
このように、基本的には不動産の個数×1,000円となっています。
例えば土地2筆と建物1棟を住宅ローンの担保に入れていたとします。つまり、不動産の個数は3つです。
住宅ローンを完済したら、3×1,000円=3,000円の登録免許税を納付して、抵当権抹消登記を申請します。
抵当権設定の登録免許税は債権金額が基になっていましたが、その設定登記を抹消する登記では不動産の個数が基になります。少しややこしいですが、間違えないようにしましょう。
3. 登録免許税の軽減措置(軽減税率)
次に、登録免許税の軽減措置について解説します。
登録免許税は、一定の条件を満たす場合に軽減措置が適用される場合があります。先ほどご紹介した「抵当権設定登記」以外にどんな軽減措置があるのか、見てみましょう。
なお、今回ご説明する条件は2024年6月現在のものになります。軽減措置の期間は延長されることもあるので、国税庁ホームページなどで最新の情報をご確認ください。
土地の軽減措置
土地については、「売買による所有権移転登記」と「売買による所有権信託登記」に軽減措置が適用されます。信託とは、自分の財産を信頼できる人に託し、自分が決めた目的に沿って運用・管理してもらう制度のことです。
画像出典:国税庁「登録免許税の税率の軽減措置に関するお知らせ」
土地の軽減措置は、令和8年(2026年)3月31日までに登記申請することが条件となっています。
建物の軽減措置
建物については、「所有権保存登記」と「売買による所有権移転登記」に軽減措置が適用されます。所有権保存登記は新築住宅を購入した場合、所有権移転登記(建物)は中古住宅を購入した場合に申請する登記です。
画像出典:国税庁「土地の売買や住宅用家屋の所有権の保存登記等に係る登録免許税の税率の軽減措置に関するお知らせ」
なお、省エネ性能が優れた建物の場合は税率が優遇されます。
画像出典:国税庁「特定の住宅用家屋の所有権の保存登記等に係る登録免許税の税率の軽減措置に関するお知らせ」
建物の軽減措置は、少し細かい条件が設定されています。
- ● 自己の居住の用に供した家屋であること
- ● 床面積50㎡以上の家屋
- ● 中古住宅の場合、昭和57年以降に建築されたもの又は一定の耐震基準等に適合するもの
- ● 新築又は取得後1年以内に登記申請する
- ● 令和9年(2027年)3月31日までに登記申請する
個人の住宅用の家屋(建物)で、かつ、床面積50㎡以上でなければなりません。床面積は「内法面積」が適用されます。不動産会社のパンフレットやサイトに書いてある床面積は、壁芯面積であることが一般的ですのでご注意ください。登記簿の面積は「内法面積」になります。
所有権移転登記については、こちらの記事でさらに詳しく解説しています。
所有権移転登記の方法や費用、必要書類について解説します。
4. 登録免許税のシミュレーション
マイホームを購入したときに、登録免許税がいくらになるのかシミュレーションしてみます。
- 条件
- 〇 新築の戸建てを購入(省エネ住宅ではない)
- 〇 土地価額:1,750万円
- 〇 建物価額※:1,391万円
- 〇 住宅ローンは5,000万円借り入れ
※参考:https://houmukyoku.moj.go.jp/tokyo/content/001413439.pdf(東京法務局新築建物課税標準価格認定基準表)
軽減措置が適用されると、登録免許税はこのようになります。
登記内容 | 登録免許税額 |
---|---|
所有権保存 (建物) |
2万800円 |
売買による所有権移転 (土地) |
26万2,500円 |
抵当権設定 | 5万円 |
合計 | 33万3,300円 |
登録免許税は、合計約33万円でした。
なお、もし軽減措置が適用されないと、登録免許税は60万5,640円になります。かなり差が大きいですよね。
建物の軽減措置は、建物新築(または取得)から1年以内に登記申請しなければ適用されません。忘れないようにしましょう。
5. 登録免許税の手続き方法と支払うタイミング
固定資産税や不動産取得税は、マイホームを購入してしばらく経ってから税務署や市役所から通知が届いて、それから支払うことになります。登録免許税はどんなタイミングで支払うのでしょうか。
最後に、登録免許税の手続きについてご説明します。
登録免許税は、法務局へ登記申請を行うときに納付します。売買による所有権移転の場合は、不動産の引き渡しとほぼ同時に登記申請するケースがほとんどです。
つまり、固定資産税や不動産取得税と比べると早いタイミングで支払うことになります。
なお、一般的にはマイホーム購入時の登記申請は司法書士が行います。登録免許税も司法書士が代わりに支払ってくれるので、心配はしなくて大丈夫です。
事前に司法書士へ登録免許税と報酬をまとめて支払うことになるでしょう。
自分で登記申請をする場合は、登記申請書に収入印紙を貼ってください。
法務局の一部通知には「登録免許税が3万円以上の場合は現金を国(税務署等)に納付して領収書を申請書に貼る」とされていますが、実務上は3万円以上でも収入印紙で納付するケースがほとんどです。
ただ、同じ法務局でも支局によって取り扱いが違うケースがあるので、事前に聞いておくと安心でしょう。
6.まとめ
今回の記事では、登録免許税の計算方法や軽減措置について解説しました。
登録免許税の中には、住宅の省エネ性能が高いと税率が通常より軽減されるものがあります。実は、省エネ性能が高い住宅は登録免許税以外の税金も安くなることがあるなど、メリットが多いです。
詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
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