2025年夏、日本列島は記録的な猛暑にさらされている。群馬県伊勢崎市では最高気温41.8℃を観測し、全国で熱中症搬送者が5万人を超えるなど、気候変動の影響がいよいよ日常生活に直結するようになってきた(NHK 2025年8月2日)。この「暑さの常態化」は、住まい選びの考え方にも大きな変化をもたらしている。
マンションを資産と捉える読者にとって、「どこに住むか」という立地に加え、「どう住むか」という居住性能への視点は、ますます重要な評価軸となっている。とくに注目したいのが、「夏の快適性」を左右する住戸性能の違いである。
具体的には、断熱性能・日射遮蔽・通風設計・空調効率などがその代表だ。単板ガラスの窓や断熱材の薄い壁構造では、冷房が効きにくく電気代がかさむ。一方で、Low-Eペアガラスや断熱材の厚い住戸では、室内温度が安定し、冷房効率が高まる。快適性が光熱費にも直結するのだから、これは「暮らしやすさ」にとどまらず、「資産価値」の下支え要因とも言えるだろう。
資産価値の高いマンションとは何か――。立地、駅距離、ブランド、管理状況などが一般的に重視されるが、今後は「気候変動に耐えられる快適性」も、資産性を左右する新たな指標になってくるはずだ。実際、暑さが厳しくなればなるほど、快適に過ごせる物件とそうでない物件の“差”は顕著になり、その違いは市場での評価にも反映されていくだろう。
「新築か中古か」で悩む人も多いが、快適性という観点から見れば、新築マンションの方が優位である。近年の新築物件は、建築基準法の改正やZEH(ゼロ・エネルギー・ハウス)志向の流れを受け、断熱性能や省エネ性能が格段に向上している。仮に価格だけを見れば中古マンションの方が割安に見えるかもしれないが、冷暖房効率や住み心地、さらには将来的な修繕コストを考慮すれば、「新築の高値には理由がある」と理解できるはずだ。
とくに小さな子どもや高齢者がいる家庭、テレワーク中心の生活など、「家の中で長時間を過ごす人」にとって、室内の温熱環境は極めて重要だ。たとえ立地が良くても、真夏に室温が上がりすぎる住戸では生活の質が損なわれ、結果的に住み替えや賃貸化といった選択肢が現実味を帯びてくる。
資産性とは、将来的な「流動性」とも言い換えられる。売りたくなったときに売れるか。貸したくなったときに借り手がつくか。そのとき「快適性が高い住戸」は、価格交渉で強く出られるし、競合物件よりも早く動く。つまり、断熱性や居住性能は、じわじわとだが確実に“売りやすさ”に影響していく。
とはいえ、広告やチラシの情報だけでは、快適性の良し悪しまでは見えてこないのが現実だ。だからこそ、モデルルームでのヒアリングや、販売員への質問、資料請求時のスペック確認が重要になる。また、マンション比較の観点では、「住まいサーフィン」に掲載されているコラムやレビュー、ランキング記事なども参考になる。快適性の面からマンションを評価した情報や、断熱性や構造に関する情報が整理された記事も多く、購入判断の一助になるはずだ。
大袈裟な言い方だが、気候変動という“ゆっくり迫る現実”を見据えた視点を持つことが、資産を守る行動につながる。この猛暑を「我慢」で乗り切るか、それとも「快適にしのげる住まい」を選ぶか。答えは、資産価値の差となって10年後に表れるかもしれない。