建築士は建設予定地に初めて訪問するとき、周辺の環境、敷地周りの状況等、ここにどんなスタイルの家を建てると美しく、しかも機能的であるかなどをイメージします。
しかし最も重要視するのは、施主と家族の暮らしぶりから施主の考え方や隠された本音を感じ取る事です。
設計士が初めて敷地や施主宅を訪問するときに観察する手法から、自分たちの希望の整理・優先順位のつけ方の方法を考えてみましょう。
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自分たちの希望の整理・優先順位をつけておきましょう
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プロとのやり取りもレベルアップし、上手にプロを活用できるようになり、より良い住まいの取得に近づきます。
設計士は暮らしのどんなところを観察するか?
施主の暮らしぶりは、実に多くの情報を設計士に与えてくれます。施主の隠された本音や、気づいておらず表面に出てきていないニーズをもあぶり出してくれます。
特に大切なのは、バランスを崩しているところ、違和感を感じるところを察知することです。そこに本質が隠されている場合があります。
- 1. 物があふれているか。どのような物がどのようにあふれているか。
- 2. 家族の団欒はどのようなスタイルか。まとめ役は誰か。
- 3. 以前に聞いていた希望と暮らしぶりがマッチしているか。
- 4. 違和感があれば、本音はどこにあるのか。 施主も気がついていない場合もあります。
- 5. 調度品はどのように使用されているか。
自分で簡単にできる暮らしの観察
本音まで自分で観察するのは大変でしょうが、小さな問題点でも、掘り下げて考えていくと次第に核心に近づけます。順を追って、現在の不満な箇所をより具体的に確認していきましょう。
・観察の手順庭⇒玄関⇒リビング⇒キッチン⇒水周り⇒個室等、ひとつひとつ検証していきます。普段の状態の改善したい問題点を、スペース毎にピックアップしてみましょう。より具体的に表現することがコツです。
例:洗面脱衣室⇒洗濯物入れは60cm×60cm・高さも60cmは必要
家族の下着入れ・リネン庫が必要・化粧用の収納も必要。
・問題点の原因を探る例:洗面脱衣室が乱雑な原因
⇒洗面室で行う作業が多い。従って洗面室に収納するものが多い。化粧スペースも兼用している。
⇒洗濯・乾燥・収納を一室で済ませ、家事を省力化したい。化粧後にアクセサリーをつけるので、その収納も必要。
・スペースと設備での解決方法を考える⇒洗面脱衣室に多くの収納を設ける
⇒主寝室に簡単な洗面を設けて、機能分散できるか
下記の表は、観察結果を書き入れるシートです。外回りから順々に各室記入していきます。リビングなどは平日と休日を分けて観察すると良いと思います。改善案は思いつくものがあれば書き入れますが、問題点の抽出の方が大切です。マンション取得の場合は収納が少ないケースが多いので、特に注意してチェックしてみてください。そのほかに価格、立地や総戸数、販売会社や施工会社、築年数、環境やサービス、付帯設備などの項目も入れて評価してみてください。候補のマンションの比較表にしても良いと思います。
©佐藤章子デジカメ活用で、街並みにフィットするスタイルを見つけよう
駅から歩いて周辺の環境を見ながら、敷地にどんな建物をどのように配置すると美しく機能的かを考えていきます。
施主であれば、より具体的な情報を持っているでしょう(風の向き・ここら辺まで日が当たる・隣家のこの部屋のピアノがうるさい・過去の災害等…)。これらもあわせて考えて、まとめておきましょう。
まとめたものを設計士に渡せば、言い忘れもありません。また、住宅誌等で気に入った外観の建物があれば、切り抜いておきましょう。切り抜きを持って、外に出て敷地に建物のイメージを浮かべてみましょう。最近は簡単に画像加工ができるので、雑誌の切り抜きと敷地周りの写真を合成してみませんか。
・敷地の今までの問題点のリストアップ雨・水・雪・音・風・視線・日照・火などがキーワードです。デジカメ+雑誌切り抜き作戦植栽や緑の大切さを実感すると思います。
街並みに置いてみると、素敵と思った外観も意外に映えなかったり、何気ない外観が意外にしっくりしたりするのに気づくと思います。自分でできることを最大限実行していくと、プロとのやり取りもレベルアップし、上手にプロを活用できるようになり、より良い住まいの取得に近づきます。
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Author:佐藤 章子 先生 (一級建築士・CFP・一級FP技能士)
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写真提供:佐藤章子一級建築士として、大手ゼネコンや住宅メーカーで設計・商品開発・不動産活用などに従事し、2001年に独立。2002年に『住まいと暮らしのコンサルタント事務所』ハウステージを設立。
「健全な住まいづくりは、健全な生涯設計に宿る…」をモットーに、ファイナンシャルプランニングと建築のハード面の双方から、住まい作りや暮らしを総合的にアドバイスしています。