こんにちは、にこです。
前回は、「良い住まい」に必要な「風」についてお話しいたしました。
今回は、「空気」の大切さについて解説いたします。
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「空気」を司る要素のひとつは建材
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シックハウス症候群について知ろう
風と空気はどう違うのか?
「風」と「空気」、何だか似ているようで似ていないこの2つ、あえて切り離したのには理由があります。それは、住宅の「風」を司るのは、主に窓や通気口など間取りの問題が大きな要素を占めますが、「空気」はその他に建材という新たな要素が加わるからなのです。
皆さまは、シックハウス症候群という言葉を聞いたことがありますか?
ご存知の方も多いと思いますが、文字通り「家にいるだけでかかってしまう」病気のことです。これは家を新築もしくはリフォーム、大きな家具を購入した後に「家に入ると目がチカチカして涙が出る」「喉が渇いてイガイガする」「体がだるい」「不安感がある」「頭が痛い」などの多様な症状を訴えるというものです。
混同されがちですが、前回までにお話した夏型過敏性肺臓炎を始めとした病原微生物由来の感染症・一酸化炭素などの有毒ガスによる中毒は、体調不良の原因が明らかですので、シックハウス症候群には含まれませんのでご注意ください。
主な原因として、住居に使用されているさまざまな材料に含まれる化学物質が挙げられています。化学物質としては、接着剤や防腐剤として使用されるホルムアルデヒドやアセトアルデヒド、塗料の溶剤として使用されるトルエンやキシレンなどが有名です。それらを含めた13種類の揮発性有機化合物(VOC)は、厚生労働省が基準値を定めて管理しています。シックハウス症候群を避けるためには
「シックハウス」という名称からは家の建材が原因であると想像しがちですが、実は壁紙やタンスなどの大型家具、カーテンやじゅうたんが原因であることもあります。以前よりも家の気密性が上がっているので、少量の化学物質でも、室内の化学物質濃度が上昇してしまうことがあるからです。また、必ずしも家で発症するとは限らず、滞在時間の長い職場や学校で生じることもあります。
ちなみに、症状が出るかどうかについては個人差がかなり大きいといわれており、同じ部屋に入っても症状が出る人と出ない人がいます。これについては、まだ病気の全容が解明されたとは言えないこともあり、発症の遠因として心理的、または社会的要因が関与しているという説もあります。
したがってシックハウスを診断する特異的な検査はありませんし、治療についても室内のVOC濃度が下がるのを待つ、ということしか有効な手立てがありません。
発症を避けるためには、新築あるいはリフォームを行う時点で業者をしっかりと選定し、できるだけVOCの少ない建材を使用するしかありません。つい価格やデザインで業者を選びがちですが、一番大切な健康のため、「実際にどんな材料を使用しているか」や「VOC対策を行っているかどうか」という観点からも業者選びを行うことをお勧めします。
次回はいよいよ最終回です。良い家には欠かせない「人」の大切さについて解説いたします。 -
Author:にこ 先生 (医学博士)
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- 1999年 某大学医学部卒業、医師免許取得 大学病院勤務
- 2000年 某大学大学院医学研究科入学、同年長男を出産
- 2004年 大学院修了、医学博士号取得
- その後、民間病院勤務を経て
- 2013年より某地方都市の市立病院内科に勤務、地域医療に携わる。
- 「健康寿命を延ばすこと」をテーマに診療および執筆活動を行う。
- ※ご提供いただいている記事は あくまでもにこ先生個人による見解です。