編集部厳選!マンション知識最前線!? 不定期
住まいサーフィン編集部

[第58号]たったこれだけ?シンプルでおしゃれな空間を作るインテリアコーディネート術: 建築士が語る住まいづくり特集

2016年10月18日

日本の一般的な住まいは多くの家具や物であふれ、雑然とした雰囲気であることが多いのではないでしょうか。しかし最近は「断捨離」、「ミニマリスト」という言葉が注目されていて、シンプルでおしゃれな空間へのあこがれは強いのです。もともと日本の家屋は、室内にほとんど家具もなく、いたってシンプルな空間だったのですが、どうして変わってしまったのでしょうか。

シンプルでおしゃれな空間は「引き算」で

できるだけモノに頼らずに空間を作ることが大切です

インテリアを考えるってどういうこと?

住まいのインテリアをどうにかしたいと考えるときのインテリアとはそもそも何なのでしょうか。スケルトン(構造体)に対してインフィル(内装)という言葉もあります。しかしそもそも住まいを設計するに当たってそのような区別はありません。私は建築士ですが、住まいの設計をする際に構造体と内装に分けて考えたりデザインしたりすることはありません。例えば教会や寺社の建物ではスケルトンとインフィルが渾然一体となっています。昔ながらの日本の家屋も同様です。たたみに障子、土壁に襖・・・。どこまでが本体でどこからが内装かは判然としないところが多いのです。

シンプルな空間とは何かを考えるうえで、「内装」という考えを見直すことからスタートしましょう。インテリアを仕事にする人々の呼び名や資格はいろいろあり、インテリアデザイン、インテリアコーディネーター、インテリアプランナー、インテリア設計士…家具やキッチン、照明等のパーツに対する資格もあります。どう違うのでしょうか。どの資格でも大切なのは、引き算ができるかどうかなのです。

インテリアは引き算が大切

インテリアをデザインするのに、家具が必要、カーテンや照明器具、クッションやカーペットが必要というのは足し算のインテリアです。戦後、もともとの日本の住空間に欧米式の家具を次から次へと導入した結果、日本の住まいが雑然となってしまいました。インテリアを足し算で考えていてはシンプルでおしゃれな空間はできません。むしろどれだけそれらを最小限にして空間を作るかの引き算で考える方が失敗のない空間ができるでしょう。引き算とは、「一つの家具などを多目的に利用する」、「家具やファブリックでなく、建具や作り付けの家具などにする」、「本当にそれが必要かを考える」など、とにかく、できるだけモノに頼らずに空間を作ることが大切です。

空間とは何?どうしたら作れるの?

空間を作るということは、人の「居場所」を作るということです。空間は人のためにあります。では居心地の良い居場所を作るには3つのツールが必要です。椅子とテーブルと照明です。椅子は座れればリビングの中にある階段の一段目でも構いません。テーブルもお茶のカップや本などを一時的に置いておければ、先ほどの階段の2・3段目でもOKです。この3つがあれば、「居場所」が作れます。
椅子とテーブルと照明
©佐藤章子
家族の団欒を考える場合は、家族それぞれの「居場所」をいろいろ作ることが大切です。ソファやダイニングテーブル、家事コーナー…など、なんでもOKです。団欒だからと言って、A図のようにソファセットで面と向かってのだんらんは居場所が1か所しかなく居心地がよくありません。セット家具でもB図のように分解すると居場所は2か所になります。C図であれば3~4か所になります。子供は勉強、父親は新聞、母親は家計簿つけなど、家族それぞれが別のことをしながらも、互いに気配を感じ、時々会話するのが団欒だと思います。面と向かって「さあ、団欒しましょう」で団欒できるものでもありません。
家族の団欒を考えた部屋づくり
©佐藤章子


自分で自作してみよう

和紙のスクリーン
©佐藤章子
左の写真の窓にあるのは和紙のスクリーンです。Wのカーテンレールに取り付けてありますので、スライドできます。リビングなので遮光のためのドレープは必要ありません。
しかしレースだけは室内に照明を入れると向かいのマンションから中が見えてしまいますし、ケースメントも風が吹くと揺らいで、実際の役には立ちません。
スクリーンは風には揺らぐので風を取り入れることは可能ですが、その場で動くだけなので、向かいからの視線はさえぎることができます。
明るくてほぼ半永久的に使えます。障子紙も破いたりしなければ多少黄ばみますが長く使えるのと同じです。
和室にもフィットします。自分で作れて障子よりはシンプルで掃除も楽です。

Author:佐藤 章子 先生 (一級建築士・CFP・一級FP技能士)


写真提供:佐藤章子

一級建築士として、大手ゼネコンや住宅メーカーで設計・商品開発・不動産活用などに従事し、2001年に独立。2002年に『住まいと暮らしのコンサルタント事務所』ハウステージを設立。
「健全な住まいづくりは、健全な生涯設計に宿る…」をモットーに、ファイナンシャルプランニングと建築のハード面の双方から、住まい作りや暮らしを総合的にアドバイスしています。