田中和彦が斬る!関西マンション事情 不定期
田中 和彦

[第218号]高経年マンションに居住する70 歳以上の世帯主が半数以上

2024年06月26日

 インパクトのあるタイトルの調査結果が国土交通省のサイトで報告されていた。

 これは去る6月21日に国土交通省より発表された「令和5年度マンション総合調査結果」の中の内容だが、以前にも取り上げた「マンションと居住者、二つの老い」が見事に数字で物語られている。

 居住者における70歳以上の割合は、2018年が22.2%だったのに対し2023年は25.9%と3.7%増加している。同じ期間ではないが総人口における70歳以上人口の比率は、2020年22.2%→2025年(推計)24.2%と5年で約2%しか増加していないことと比べると、マンション居住者の高齢化の方が早いことがわかる。

世帯主の年齢
画像出典:国土交通省ホームページ「高経年マンションに居住する70 歳以上の世帯主が半数以上に ~令和5年度マンション総合調査結果(とりまとめ)~」

 

 また高齢化の度合いは、築年数の古いマンション、いわゆる高経年マンションの方が高い。平成27年以降(築10年未満)のマンションは70歳以上割合が7.4%であるのに対して、昭和59年以前(築40年以上)のマンションは55.9%が70歳以上、なんと過半数が70歳以上となっている。ここ5~10年間の都心部マンションには当てはまらないが、かつて新築マンションの購入は結婚や第一子の学校入学などがきっかけとなることが多く、築年数の新しいマンションが居住者の年齢も若いことは、なんとなく想像はつくのだが、「築40年以上は過半数が70歳以上」といった数字を見せつけられるとハッとするものがある。

築年数に対する年齢の割合
画像出典:国土交通省ホームページ「高経年マンションに居住する70 歳以上の世帯主が半数以上に ~令和5年度マンション総合調査結果(とりまとめ)~」

 

 ところで、70歳以上といえばそろそろ終活をはじめようかという年齢。しかも2019年における日本の平均寿命は男性81.41歳、女性87.45歳だが、健康寿命は男性72.68歳、女性75.38歳であり、70歳を超えると健康寿命は「あと数年」しかない。築40年以上のマンションは、あくまで平均的な数字の話だが、居住者の過半があと数年で健康寿命を迎える、すなわち管理運営に関して若年層への負担が重くなることが容易に想像できる。

 さらに築40年以上のマンションは旧耐震設計であり、また、給排水管の老朽化や設備の陳腐化等々から建替を検討する時期に差し掛かっている。建替計画を立案、居住者の合意形成、資金計画、プラン作成、施工業者決定等々やるべき事が目白押しで、これらを進めるには軽く数年はかかる。建替計画が進捗し始めると助成金・補助金の活用、そして区分所有者仮住まい・売却等の支援を行う必要がある。最終的には工期も含めて10年近くの年数が費やされる。

 やるべきことが多いにも関わらず、高齢化で担い手がいないというマンションは今後ますます増える。またこれらは築40年以上のマンションの話だが、住んでいれば10年なんてあっという間で築30年、平成初期のマンションもそう遠くない時期にこのような事態に直面する。

 と、あくまで上記は統計上の平均からの話であり、実際は高齢でも元気な方が取り仕切っていたり、信頼のおける管理会社に任せているため手間が少なかったりと、築年数が古くても問題なく管理組合が機能しているマンションもある。中古マンションの購入には管理の良し悪しを見抜く眼力が必須だ。

 

この記事の編集者

田中 和彦

株式会社コミュニティ・ラボ代表。マンションデベロッパー勤務等を経て現職。
ネットサイトの「All About」で「住みやすい街選び(関西)」ガイドも担当し、関西の街の魅力発信に定評がある。

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