「七月五日に日本が滅亡する」。そんな都市伝説がSNSで話題になった。日本滅亡や世界滅亡の「危機」は過去にもいくつかあった。富士山噴火、首都直下地震、はたまた巨大隕石の衝突からUFOの襲来説まで、そのバリエーションは実に多彩。だが過去はもちろん、今回も何も起こらなかった。ただの日常が、何事もなかったかのように続いている。
とはいえ、「何も起こらなかったから良かった」で済ませてしまっていいのかといえば、そうでもない。天災や有事は予測不能だが、それに備えておくことは大切だ。実際に平安時代と江戸時代は大地震や火山の噴火等の天災がきっかけでその時代が終わったとも言われている。不動産という長期保有となる資産に関しては、いつ起こるかわからないがいつかは起こる天災も念頭におき、不確実性を前提に「立地」を読み解く必要がある。
ここからは簡単に思考実験。大災害に備え、日本が国としてこれから取るべき施策にはどのようなものがあるだろうか?
たとえば、以下のような方策がたびたび議論されてきた。
- ● 都市機能の一部分散/高台への移転や浸水リスク地域の再開発
- ● 緊急避難機能をもつ広域交通ネットワークの再整備
- ● 津波・液状化に強い地盤への都市集中
- ● 地方創生を兼ねた災害時のバックアップ都市の育成
実際にこれらが実現すれば、注目を集めるエリアはどこだろうか?筆者の住む関西においてはいくつか思いつく節がある。
例えば亀岡市は丹波高地に囲まれ、標高も高い。京都市に比べて地震・浸水のリスクは低く、気候変動リスクに対する「避難先候補」としても注目される。京都市内の住宅価格高騰を受け、通勤圏としての実用性も増している。
大阪であれば箕面市。北摂エリアの中でもとりわけ標高の高い場所に立地し、地盤も評価されている。2023年には北大阪急行線が延伸開業し、大阪中心部へのアクセスも改善。災害に強く、文教エリアとしても人気が高い。
阪神間であれば三田市。阪神圏の中で標高が高く、神戸や大阪への通勤も可能で、災害時のバックアップ機能を担うとされる候補地でもある。今後の都市再編次第で評価が上がる余地がある。
先にあげた施策が実現した場合、上記の地域は「災害に強い都市」として評価され、不動産価格が底上げされるかもしれない。移住・法人移転の候補地ともなり、人口流入の起爆剤になりうるからだ。
一方、実現しなかった場合はどうか。今のところ、これらの地域は「都心に比べて割安な住宅地」としての評価にとどまり、資産性としては中立もしくは都心回帰が続けばジリ貧となる可能性が高い。とはいえ、さらなる住宅ローンの金利上昇や建築費高騰などにより都心部で購入できない人の移住圧力が強まれば、違った展開もあり得る。
「災害対策」の名目で注目されることが、そのまま投資価値の上昇に直結するとは限らない。仮に実現した場合は、それを考慮して先回りした人間だけが、その恩恵に預かれる。
七月五日、日本は滅びなかった。都市伝説は信じるに足らない。より信じるべきは、地形とインフラであることは間違いない。