この度の令和6年能登半島地震で被災された皆様に心よりお見舞いを申し上げます。また、お亡くなりになられた方々のご冥福をお祈りするとともに、ご遺族には心からお悔やみを申し上げます。
2024年1月1日、実家や旅行先等で団欒の時を過ごしていた人も多いだろう午後4時過ぎ、石川県能登地方を震源とする地震が発生、多くの建物が倒壊し、尊い命が失われた。
震源地に近い場所はもちろん、距離の離れた地域でも、ご自身の所有する建物や実家の倒壊や損傷を心配した人は多いであろう。と同時に、少なくとも今後当分の間不動産市場では、今まで以上に耐震性能が注目されることになると予想される。
ここで、よく話題に上がる新耐震と旧耐震について改めてその内容をおさらいしたい。
新耐震基準が適用されたのは1981年6月1日。今から四十数年前。1978年に発生した宮城沖地震の被害を受けて建築基準法が改正されたことによるものだ。この日より前に建築確認が完了している物件は、新耐震基準を満たしたいない可能性が非常に高い。逆に言えば建築確認完了日が1981年6月1日以降の建物は新耐震の基準を満たしていることになる。
ポイントは建築確認完了日であり、竣工日ではないこと。例えば1981年6月1日竣工の物件は、建築確認完了日が1981年5月31日以前であるため、新耐震基準を満たしていない(可能性が非常に高い)。建築期間を考慮すると、低層建築物で1982年以降、中高層建築物で1983年以降の竣工なら新耐震基準で建てられた建築物と考えても差し支えない。
ただ、建築確認取得後に相当期間着工をせず(or何らかの事情で着工できず)に、確認取得は1980年、着工1981年、竣工1982年といった物件も存在する。新耐震か旧耐震かの見極めは必ず建築確認完了日を確認してほしい。
気になるその耐震強度だが、旧耐震では「震度5程度までの地震で修復可能/倒壊なし」であるのに対し、新耐震では「震度5強程度までの中規模地震では軽度なひび割れ程度、震度6強~7の大規模地震でも倒壊なし」となっている。震度6~7の地震にあった際、想定される損傷の差は大きい。旧耐震物件は、震度7の地震が発生すれば「震度5程度まで~倒壊なし」裏を返せば「震度6以上では倒壊なしと言い切れない」という建物強度に不安が残る。
旧耐震物件はおよそ築40年。マンションであれば耐震補強問題だけではなく建替問題が喫緊の課題となる。そのどちらも対策されていないマンションの価値は低く見ざるを得ない。一方、立地がよい物件で、かつ、防災や耐震といった問題に真摯に向き合い対策を施しているマンションであれば、旧耐震であっても急激な価値の下落はないであろう。中古物件を購入する際は、ただ単に旧耐震・新耐震というだけではなく、マンション単体での取組み等を確認することが必要だ。
ちなみに2000年には阪神淡路大震災をきっかけとして、新耐震基準がさらに強化され「新々耐震」となった。災害が起きるたびに法令も、人々の意識も進化している。居住するマンションが地震による被害を受ける可能性は低いかもしれないが、仮に大地震が起きれば建物はどうなるか、どのような備えがあるかは購入時に確認しておきたい事項だ。関西においても阪神淡路大震災直後数年は、マンション購入時に活断層の位置を気にする人がほとんどであったが、最近では検討時に気にする人はかなり減った。「天災は忘れた頃にやって来る」とならぬよう、このような災害がいつ起きるかわからないことはしっかりと覚えておきたい。