田中和彦が斬る!関西マンション事情 不定期
田中 和彦

[第202号]資産価値に関わる管理の良し悪し 〜 どこを見れば良いか?

2023年10月25日

国土交通省が「マンションストック長寿命化等モデル事業」の事業者を募集している。対象は、マンションの寿命を延ばすもしくは建替えるための計画や工事を支援する事業だ。具体的な補助対象は以下の通り。

  • ● マンションの長寿命化に必要な調査・検討等に要する費用
  • ● マンションの改修事業に関し、調査設計計画に要する費用または長寿命化に資する工事に要する費用
  • ● マンションの建替事業に関し、調査設計計画に要する費用・土地整備に要する費用・共同施設整備に要する費用
  • ● 管理水準の低いマンションが、管理水準を向上させ、大規模修繕工事等を実施するために必要な 調査・検討等に要する費用

建替にしろ大規模修繕にしろ、築年数が経ち高経年マンション(=築古マンション)となれば何がしか手を加える必要がある。そのために必要なのは「住民の合意」と「十分な資金」なのだが、合意を得たり資金を貯めるには仕組みが必要だ。今後、高経年マンションが増加する懸念から、その仕組みを採取し一般化して普及させるため「先導性のある取組」を増やそうとする政府の取り組みが「マンションストック長寿命化等モデル事業」だ。

高経年マンションの中でも、とりわけ対策が必要なのが旧耐震マンション(築約40年)。全国で約103万戸ある。これらのマンションストックが今後建替をするか否かの決断を迫られるようになる。仮に一棟100戸としても都心部中心に全国1万棟でこのような議論がなされることになる。具体的な数字を見ると、これらの事案をスムーズに進めるためには過去事例を踏まえて、効率よく進めることが不可欠であることがよくわかる。

では20年後はどのような様子になっているであろうか?高経年化マンションを築40年とするならば、20年後の2043年は高経年化マンション(=2003年以前のマンションストック)は約427万戸、現在の4倍以上となる。思い切った法改正でもなければ、今よりも高齢化と人口減が進む20年後のマンション建替・大規模修繕問題は相当深刻な状況となっている。

そのような未来が見えている今、マンション購入の際に必ず確認しておきたいのが「住民の合意」と「十分な資金」について。住民の合意は、それがスムーズに進むための管理組合運営が健全になされているか、実効性のある大規模修繕計画が立てられているか。十分な資金は、修繕積立金が潤沢かどうかに他ならない。

この辺りの話は、いろいろなところで何度も見聞きしてらっしゃることかと思う。しかし多くの人が「管理など気にせずとも売れる時は売れる」と考えている。確かに管理状態をそれほど気にすることなく購入する人も多い。だがそれは「終活の準備ができていない」ことに気づいていない人が多いだけの話で、マンションに終わりが来ないというわけではない。大丈夫だと高を括っていたのに、何かのきっかけで途端に困ることになるのは十分に考えられる。相続しかり、バブルが弾ける時しかり。今大丈夫でも「その時」は必ず来る。

では一体何から始めれば良いか?

まずして欲しいことは、今所有しているマンションの大規模修繕計画と大規模修繕積立金総額の確認。これは総会の資料等を見れば簡単にできる。そして「管理組合が機能しているかどうか」の確認。「機能しているかどうか」については理事会の開催回数・出席率や総会に上がる議案を見るのが良い。理事会の開催回数が少なく出席率が低い、総会の議案が毎年変わり映えしない。そんなマンションは住民の意識が低いと考えられ、大規模修繕や建替がうまく進まない懸念がある。積立金総額の確認に比べると多少骨は折れるが、区分所有者であれば情報へアクセスすることは難しくない。

今後10年から20年をかけて「マンションは管理を買え」は「管理がいいマンションは住みやすい」程度の軽い意味合いではなく、深刻な話となる。マンション管理の良し悪しは、資産価値にストレートに跳ね返る時代が来る。管理が良ければ資産価値が上がるかどうか、それは定かではないが、管理が悪ければ資産価値が下がるのは確実。長期保有を考えている人は特に気をつけておきたい。

この記事の編集者

田中 和彦

株式会社コミュニティ・ラボ代表。マンションデベロッパー勤務等を経て現職。
ネットサイトの「All About」で「住みやすい街選び(関西)」ガイドも担当し、関西の街の魅力発信に定評がある。

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