田中和彦が斬る!関西マンション事情 不定期
田中 和彦

[第190号]京都市高さ規制緩和、25日から施行

2023年04月26日

京都市で、4月25日から高さ規制が一部緩和されることになった。関西ローカルではニュースでも取り上げられ筆者もコメントをした(末尾リンク参照)。

さて、この高さ規制緩和で京都の街はどうなるのだろうか?結論を言えば、それほど変わらないと言える。

以前、本コラムの「第178号:京都市内高さ規制緩和か?超高層マンション供給可能に!?」にも取り上げたが、今回の規制緩和で一部エリアでは3〜4階高い建物が建つことになる。今までの規制に比べ、建物の戸数をより多く(正確には「総専有面積を広く」)することができる。しかし、分譲単価(賃貸であれば賃料)が安くなるかというと、そうはならないであろう。売主(貸主)からすれば、高く売れる(貸せる)恩恵は享受したいと考える、すなわち価格を安くすることはしないであろうし、土地価格もより大きな建物が建つとなればそれを織り込んだ価格で市場に出ることになる。

高い建物が建つことで景観が崩れる、という見方もあるがそれもさほど影響はない。そもそも市内中心部には、2007年以前の現在の高さ規制が実施される前の15階建ての建物が多くあり、高さ規制緩和後の建物であってもその高さまでは建たない。よって「高さ規制緩和後の建物」が特段目立つこともなし。また、高さ制限が無制限となる六地蔵界隈には20階建てのマンション、JR「向日町」駅周辺には高さ100mでビルとしては京都市で一番の高さの日本電産ビルがある。すでに「違和感のある風景」となっている。

この高さ制限緩和、字面だけに反応して「けしからん!」などという人もいるが、街の構造を見ると至極妥当な判断と言える。

通常、都市部は中心部ほど容積率が高く高層建築物が並び、周辺部に行くにつれて高い建物が少なくなる。中心部ほど高密度で人口が多くなる。大阪もそうだ。大阪梅田周辺には超高層建築が居並ぶ。三宮も然り。

しかし京都は中心部に京都御苑、二条城、東本願寺、西本願寺等、都市計画的には「低未利用地」が広大な面積を取り、他にも京都の街の魅力の一つでもある「既存不適格で築古の木造住宅」である京町家が数多く残る。どちらも京都市のもつ大切な資産であるため、中心部の開発が難しい。おのずと高層建築物を建てるとすれば、周辺部となる。

京都市が常々子育て世代の呼び込みをしたいと発信していることから、高さ制限緩和→マンション供給増加→マンション価格下落→子育て層の回帰、と風が吹けば桶屋が儲かる的なことを市が期待していると考える人もいるが、市もそれほど単純な思考ではない(少しは期待しているであろうが)。この施策で簡単に子育て層を呼び込めるとは考えていない。これは、京都市特有の「中心部が開発できない」という事情から行き着いた結論と言える。

*参考サイト:
京都市“高さ規制”緩和 不動産高騰で人口流出・税収減少のピンチ 緩和で子育て世帯を呼び込めるか?(関西テレビ)

この記事の編集者

田中 和彦

株式会社コミュニティ・ラボ代表。マンションデベロッパー勤務等を経て現職。
ネットサイトの「All About」で「住みやすい街選び(関西)」ガイドも担当し、関西の街の魅力発信に定評がある。

Official Site:https://c-lab.co.jp/
YouTube:@clabkyoto
Twitter:@tanakahant
Instagram:@kazuhiko.tanaka