京都市内の中心部は町名を聞いてもその場所に辿り着くことができない。そんな馬鹿なと言われそうだが実際の話だ。
最大の理由は、同じ区内に同じ町名が複数あり、町名だけで場所を特定できないからだ。
下京区鍵屋町。特定の職種の人がそこに多くいたかのような町名だ。しかし「下京区鍵屋町」と伝えても、それだけでは現地に着くかどうかわからない。なにせ鍵屋町は区内に4ヶ所もある。鍵屋町通の鍵屋町、正面通の鍵屋町、麸屋町通の鍵屋町、若宮通の鍵屋町。通り名をつけなければどの鍵屋町か分からない。塩屋町、材木町、稲荷町、上柳町、堺町なども3ヶ所以上ある町名。2ヶ所以上となるとさらにたくさんある。
ちなみに鍵屋町は下京区だけでない。上京区にも鍵屋町(間之町通)、鍵屋町(丸太町通)と2ヶ所、東山区にも1ヶ所ある。町名だけを聞いても、そこには辿り着けない住所が複数ある。
次の理由は、町の範囲が小さく町名が数多いから。
同じ町名が複数存在するが、同区内に一つしかない町もある(考えてみれば当たり前の話なのだが……)。だがそれでもその町名だけで伝わるかどうかは怪しい。「Yahoo!地図」で下京区の町名を確認したが、重複町名を含めばその数は軽く500は超える。自宅や職場等の馴染みの深い場所でなければ覚えることもままならない。
そのような理由から、京都市内とりわけ田の字地区と呼ばれる市内中心部周辺は、町名ではなく通り名を使って場所をあらわす。
では交差点名で伝わるか?答えはNO。交差点名を伝えた後、例えば「四条河原町です」と伝えると、おそらく次のように質問されるであろう。「四条河原町の、どこ?」。これは京都に限ったことではない。交差点名だけを聞いても北に行くのか、東に進むのかわからない。そこで知っておきたいのは京都での方角の伝え方。ちゃんとルールがある。
まずは図を見ていただきたい。京都では北に進むのは「上(あが)る」、南は「下(さが)る」。東に進むのは「東入ル」、西は「西入ル」。このように表す。書き方は「上る」と書いたり「上ル」と書いたり、「東入ル」と書いたり「東ル」と書いたり、表記に揺れはあるが南北は上下、東西は入(ル)と覚えておけば大丈夫だ。
例えば四条河原町の北側の●。ここは河原町通に面しているのでまず「河原町通」と表し、これで東西の位置関係が決まる。次は南北の位置関係だがここは四条通を北に上がった場所なので「四条上ル」となる。後の方は「通」が抜けているのがポイント。
ルールと通り名を覚えればわかりやすいのだが、それらがわからないと「住所で言ってくれ!」となりそうなこの伝え方。住む人だけでなく、観光で来るにしても市内中心部で飲食店やホテルの場所を特定するために、タクシー運転手に伝える時などに必要となるスキル。京都移住や京都にセカンドハウス購入をお考えの方には是非覚えておいていただきたいルールだ。