田中和彦が斬る!関西マンション事情 不定期
田中 和彦

[第166号]マンション管理計画認定制度スタート、チェックすべきポイントは?

2022年04月28日

同制度は「マンション管理適正化法」の改正を受け、国土交通省により創設されたもの。これにより自治体は適切な管理を行うマンション認定を行ったり、適正な管理がなされていないマンションには指導や勧告を行うことができるようになった。

認定基準は全部で17項目、最後の「都道府県等マンション管理適正化指針に照らして適切なものであること」を除くと16項目ある。この制度の運用がどのようになされるか、中古マンション市場への影響はどの程度あるかはまだわからないが、項目自体は何年もの時間をかけて専門家によって考え抜かれたものであり、中古マンションを購入する際のチェックポイントとしては大変有意義なものとなっている。その16項目は以下の通りだ。

1、管理者等が定められている
2、監事が選任されている
3、集会が年一回以上開催されている

これらの内容は「当たり前」とも言える。さすがにこの部分で問題のあるマンションは少ないだろう。しかし最近ニュースでも話題となった『秀和幡ヶ谷レジデンス』のように、大きな問題を抱えているマンションもないわけではない。「多分大丈夫」は危険とも言える。

4、管理規約が作成されていること
5、緊急時の専有部 の立ち入り、修繕等の履歴情報の管理について定められている
6、財務・管理に関する情報の交付について定められている

5については記載のないものもあるだろう。築年数の古いマンションは「ペラペラの管理規約」である場合も少なくない。そのようなマンションでも内容をアップデートしているマンションはある。その経緯を確認してみるのもいいだろう。

7、管理費と修繕積立金等を明確に区分している
8、修繕積立金会計から他の会計への充当がされていない
9、修繕積立金の三ヶ月以上の滞納額が一割以内である

この辺りの内容は、仲介会社の担当者や管理会社によっては要領を得ない答えが返ってくる可能性も高い。9については「守秘義務」を持ち出して開示を拒む管理会社もいるだろう。

10、長期修繕計画、修繕積立金額が集会で決議されている
11、長期修繕計画の作成または見直しが七年以内に行われている
12、長期修繕計画の計画期間が三十年以上で、残存期間内に大規模修繕工事が二回以上含まれている
13、長期修繕計画で将来の一時的な修繕積立金の徴収を予定していない
14、修繕積立金の平均額が著しく 低額でない
15、長期修繕計画の最終年度に借入金の残高がない

長期修繕計画の内容については、仲介会社も把握していないことが多い。ここに挙げたような内容は、管理会社が仲介業者や所有者に提供する「重要事項調査報告書」(管理会社によって名称の違いあり)に記載されていないことも多い。

16、組合員名簿、居住者名簿を毎年確認している

昔なら理事の人が名簿を個人持ちしていることも珍しくなかったが、今は個人情報の取り扱いも以前とは異なり、管理会社もあまりこのような「管理が必要な情報」は持ちたがらない。この質問をすることで、管理会社の個人情報に対するスタンスを知ることができる。

これらの項目を全て購入前にチェックする買主は稀、というよりも殆どいないかもしれない。また、確認することで仲介担当者や管理会社担当者が面倒くさがる、面倒な客と思われたくないから質問しない、といったこともありえる。そのようなことが減るという意味では、公の認定制度ができることは中古マンション流通にとって良いことだ。

とはいえ、冒頭に述べたようにこの制度が活用されるには時間がかかる。それまでは、面倒ではあるがチェック項目をもとに必要に応じて各自で確認する必要がありそうだ。

参照:マンションの管理の適正化の推進を図るための基本的な方針

 

この記事の編集者

田中 和彦

株式会社コミュニティ・ラボ代表。マンションデベロッパー勤務等を経て現職。
ネットサイトの「All About」で「住みやすい街選び(関西)」ガイドも担当し、関西の街の魅力発信に定評がある。

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