都心部ではコロナ禍に関わらず不動産価格が値上がりしている一方、郊外では買い手のつかない空き家も多数。かといって郊外物件が軒並み値下がりしているわけでもなく、首都圏ではむしろ郊外地の価格上昇が話題となっている。
そんな先の見えない不動産市況を受けて「今不動産を買うべきか?」「購入予定のこの物件をどう思うか?」といった相談が増えている。そういう時には「資産価値を考えると一戸建てとマンションを比べるなら、マンションの方が良い」と答えることにしている。紙幅の関係で、今回と次回の2回に分けてその理由を解説したい。
マンションをお勧めする最大の理由は「権利関係が明瞭だから」だ。
分譲マンションは、一部例外もあるが、そのほとんどは大手不動産会社・マンションデベロッパーが正しい手続きを踏んだ上で建設・分譲している。建築確認を取得し、検査済を受け、銀行の審査も通っている。敷地の境界確定もなされているし、電気・ガス・水道等の生活インフラも整っている。
なんだ当たり前のことを、と思った人は気をつけた方がいい。一戸建ての場合は、これらの「当たり前のこと」が整っていないことが多い。
建築基準法が施行されたのは昭和25年なのでそれ以前の建物には、当然ながら建築確認がない。また、最近でこそ少ないが昭和50年代位までの建物には、検査済証を受けていない建物は珍しくない。建築確認・検査済証は銀行融資を受ける際にほぼ必須の書類なので、これらがない建物は現金で購入する顧客にしか売却は難しい。
また、隣地との境界確定が未了の土地も少なくない。境界確定がない土地は隣地との境界トラブルの可能性をはらんでいる。現所有者と現隣地所有者が良好な関係であっても、隣の土地を次に買う人がそうであるとは限らない。また、筆界確定未了の土地は分筆もできない。
インフラについては特に水道に注意が必要だ。蛇口をひねれば水が出るからOKというわけではない。そこに至るまでの水道管が他人地、例えば第三者が所有する私道や隣地敷地を通っている場合も珍しくない。そのような場合、水道工事の際に当該土地所有者の掘削同意が必要となる。裏を返せば掘削同意を取れない時は工事ができない。
「最悪の事例」ばかり挙げているように見えるかもしれないが、どれも実際に筆者が経験した事例だ。このような事例を踏まえて伝えたいことは「マンションに比べ、一戸建ては購入の際に慎重な調査が必要」ということ。全ての一戸建てがこのようなトラブルもしくはトラブルの種を抱えているわけではない。むしろ権利関係に問題のない一戸建ての方が多い。しかし購入者の立場となれば、一戸建てを検討する際は、これらのさまざまなリスクを物件ごとに確認する必要があるわけで、これは大きなストレスとなる。
このようなことを確認・検証する必要がないマンションの方が「安心して買える」というわけだ。
(2に続く)