田中和彦が斬る!関西マンション事情 不定期
田中 和彦

[第129号]「住みここち」と「住みたい」の違い。1位は意外な街!

2020年10月14日

賃貸管理大手の大東建託が「街の住みここち&住みたい街ランキング2020」を発表した。大阪・京都・兵庫・奈良・滋賀・和歌山の24県を対象とした「関西版」も発表されている。

ところで、このランキングが面白いのは「住みたい街」以外に「住みここち」をも評価しているところ。多くのランキングでは「住みたい」という願望を取り上げており、東京の「吉祥寺」、関西の「西宮北口」の様に「人気の住宅地」が上位を占める「代わり映えのしないランキング」となってしまう。その上、住んだ人の票ではないので「住みたい街」が「住みやすい街」であるとは限らない。

ところがこの「住みここち」は、「現在居住している駅・行政区について、大変満足:2 満足:1 どちらでもない:0 不満:-1 大変不満:-2 を選択肢として回答」されているため実際に住んでいる人の意見。では一体どの様な街が選ばれているか。「住みここち『自治体』ランキング」の上位を見てみたい。

 

■1位 奈良県王寺町

1位は関西在住者でも知らない方が多いかもしれない行政区である王寺町。〇〇市王寺町ではなく、市・町・村の「町」だ。東西わずか4km四方におさまる小さな行政区で、その北端に位置するJR大和路線「王寺」駅が大阪方面・奈良方面への玄関口。新興住宅地が多い典型的なベッドタウンだ。

駅前商業施設以外に、アウトレットや大規模ショッピングモール等はないが、この街の魅力は山や川に囲まれた自然環境の豊かさと、古来より奈良と大阪を結ぶ交通要所であったことに由来する文化的な魅力だ。消費ではなく暮らしが魅力的な街。この辺りのニュアンスは「住みたい街」では浮かび上がってこないのであろう。

 

■2位 大阪市天王寺区

「王寺町」と見た目の感じ(漢字?)は似ているが全く性格の異なる街、天王寺区。王寺町が郊外ニュータウンであるのに対し、天王寺区は大阪市内のど真ん中、JR環状線・大和路線・阪和線、大阪メトロ御堂筋線・谷町線、近鉄線等々が利用できる都心ターミナルだ。買い物利便であることは言うまでもない。

だが、買い物・交通利便なだけではない。天王寺区の特徴は教育環境が優れていること。大阪星光学院、四天王寺中学・高校は大阪府下トップクラスの私立の中高一貫進学校。大阪教育大学附属天王寺中学もある。他にも有名中学高校が多く、その影響もあり進学塾も数多い。四天王寺、天王寺公園等の都心では珍しい広大な癒し系スポットがあることも「住みここち」につながっているのであろう。

 

■3位 大阪府箕面市

箕面の滝や紅葉で有名な大阪のベッドタウン箕面市。「ベッドタウン」といえども大阪都心部からの距離は近く、梅田までは20km足らず、自動車専用道の通称「新御堂筋」を利用すれば30分もかからない。

箕面市の魅力は、それだけ都心に近いのに自然が豊かであること。電車での移動は支線を利用する必要があり、住宅街はなだらかな丘陵エリア。北に行けばかなりの坂道エリアもある。昨今のトレンドである「都心部・フラット」とは真逆の立地であり、大規模マンションも少ない。せかせかせずにゆったりと暮らす。そのような生活スタイルが可能な人にはきっと「住みここち」よく感じられる街だ。

 

この後は兵庫県芦屋市、大阪市北区、西宮市、大阪市中央区、大阪市福島区とランキングで馴染みのある市区町村が続き、それほど「面白い結果」はなかった。このようなランキングの面白味は「?」と思える部分を見つけ、なぜそのような結果となっているのかを自分なりに考えること。住宅として王寺町や箕面市を検討したことがない、という人は一度街を訪れてみるのも良い。「住みここち」について考えるきっかけとなるかもしれない。

 

(参考サイト)

街の住みここち 「自治体」ランキング 関西版・2020

 

この記事の編集者

田中 和彦

株式会社コミュニティ・ラボ代表。マンションデベロッパー勤務等を経て現職。
ネットサイトの「All About」で「住みやすい街選び(関西)」ガイドも担当し、関西の街の魅力発信に定評がある。

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