田中和彦が斬る!関西マンション事情 不定期
田中 和彦

[第126号]大阪で注目度が高いのは「都心・タワー・大手」のマンション

2020年08月20日

住まいサーフィン」人気のコーナーの一つ、「今、旬なマンションランキング」。ランクインする物件はほとんど首都圏物件なのだが、時折関西の物件が入る。このランキングに入ることで「かなり注目度が高い物件」と考えられるので、定点観測している。

今原稿を書いているこの日(811日)の「最近、お気に入りに登録された数が多いマンション 」でランクインしている関西物件は3物件で、内1物件は2018年竣工済のマンション「ローレルコート京都太秦天神川 」。最近販売された新築マンションとしては「クラッシィタワー靱公園」と「グランドメゾン上町一丁目タワー」の2物件。どちらも大阪市内であること以外にも多くの共通点がある。

 

*タワーマンション 
一つ目はタワーであること。

上町は36階建で靱公園は27階建。両物件共に超高層ではないが、15階超の高さは周辺の物件と比較して十分タワーマンション といえる。「タワーマンションはアフターコロナで敬遠される」といった論調の記事を見ることもあるが、その度に「執筆者は現場をみているのか?」と思う。

アフターコロナで「換気が悪い」「密である」「都心である」等の要素が敬遠されることはあるであろうが、それはタワーマンション特有の話ではない。「狭い都心物件よりも広い郊外物件」という流れもあるだろうが、それとてタワーであるかどうかとは関係ない。ここ数年は郊外物件に比べてタワーマンション価格の高騰が目立ったため、多少の価格調整はあるかもしれないが、この2物件のランクインが示すように、今のところタワーマンション市場は動いている。

 

*複数路線利用可
二つ目は複数路線が利用できること。上町は最寄り駅は大阪メトロ長堀鶴見緑地線「玉造」駅(徒歩7分)で、それ以外に大坂メトロ中央線、谷町線、JR大阪環状線の4路線が徒歩圏。靱公園は大阪メトロ御堂筋線、四つ橋線、中央線、千日前線と京阪中之島線5路線が徒歩圏。どちらにしても超便利。どちらの物件も「縦(南北)移動の地下鉄」「横(東西)移動の地下鉄」「地下鉄以外の私鉄」の3パターンが利用できる。

総論として社会は人口減少・物件過多へと進んでおり、不便な物件は今後さらに競争力を失う。ただ、不動産需要全体の規模は縮小するものの、需要自体はもちろん無くならない。より利便性の高い物件へと需要は流れる。この2物件がランクインしているのは、より便利な物件を選ぶ人が増えた結果であるとも言える。

 

*売主が超大手
三つ目は売主が大手不動産会社であるということ。上町は積水ハウス、靱公園は住友不動産(と住友商事)。どちらも名前を知らない人はいない大企業だ。

分譲マンション市場はここ10年ほどで寡占化が進んでいる。きっかけはリーマンショックだ。それまでは数多くの中小デベロッパーがマンション事業を展開していたが、倒産等で市場から退場。この10年で上位5社のシェアが約20%から約40%に増加したとも言われている。

アフターフォローや保証等の手厚さ、知名度の高さによる中古市場での強さ、大企業に対する信頼度の高さ。中小デベロッパーの建物が劣るとは思わないが、現実に都心部では大手の物件が強い。

 

コロナ禍によって需要の変化や需要の増減がどのように起きているかが話題になることが多い。しかし、経済的指標等は実際の動きと発表の間にタイムラグが生じる。その点「今、旬なマンションランキング」はタイムリーに人気の高さがわかる媒体と言える。

 

この記事の編集者

田中 和彦

株式会社コミュニティ・ラボ代表。マンションデベロッパー勤務等を経て現職。
ネットサイトの「All About」で「住みやすい街選び(関西)」ガイドも担当し、関西の街の魅力発信に定評がある。

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