田中和彦が斬る!関西マンション事情 不定期
田中 和彦

[第124号]コロナ禍で人気が高まる不動産は住宅

2020年07月22日

第二波襲来の不安感からか、GoToキャンペーンは東京都発着が除外になる、キャンセル料を負担するなど右往左往しているが、「アフターコロナ」の不動産市場はある程度方向性が見えてきた。

住宅投資はあまり減速しておらず、今後も堅調であると予想されている。この辺りの事情を投資家の目線で簡単に説明したい。

不動産にはさまざまな種類がある。住宅・オフィス・商業施設・物流施設等々。様々なジャンルの中で著しく価格が下落しているのがホテルなどの宿泊施設。宿泊施設ほどではないが商業施設も下落が激しい。

両施設は住宅やオフィスに比べ一般的に単位面積あたりの賃料が高い。賃料が高ければ利回りが高くなる。なので不動産価格を高く設定できる同じ不動産でも賃料が2倍になれば、不動産価格が2倍になっても利回りは変化しない(*)。

民泊がブームになったのもこの考えだ。1ヶ月に10万円の賃料が取れる一戸建てを1泊1万円で貸すことができれば100%稼働で賃料収入は30万円となり、住宅と比べて約3倍。運営に要する経費を引いて、手残り20万円になったとしても利回りは2倍。仮に住宅としての相場が2000万とすれば、4000万円にしても利回りは変わらない。2000万円と4000万円の間の価格設定にすれば「住宅利用よりも高利回りの物件」として売却が可能であり、リフォーム費用を差っ引いても利益が残る。

このように賃料が高く取れる不動産は高価格となるのだが、そこには大きなリスクがある。それは運営リスクだ。

宿泊施設であれば予約サイト等での集客、空室・予約等の客室管理、チェックイン・チェックアウト、宿泊客滞在中のサービス、リネン交換、客室清掃。様々な作業・サービスを安定的に供給する必要がある。これが一つ目のリスクとすれば、それ以外に二つ目のリスクとして稼働率・単価等の収益面のリスクがある。

安定した運営ができ、収益面も問題ない。そのような場合であれば事業者も高額な賃料を支払うことが可能だが、運営がうまくいかない、収益が上がらない、となると多額な賃料は支払えない。今回のコロナ禍のように旅行客が激減し収益が上がらない等の不測事態が起きると、既存の宿泊施設事業者は撤退、新規の開業計画も進まない。宿泊施設のリスクを吸収できず不動産価格は下がる。

商業施設も同様のことが言える。本来、運営が伴う不動産は、運営事業者の力量や市況によって賃料収入が決まる部分が大きく、安定的な収入という面では運営の伴わない不動産に劣る。

それに比べて住宅は、収益面での安定性が高い。土地価格が高騰・暴落しても同じ比率で賃料が上下することはない。土地価格が上昇している局面では賃料上昇が土地上昇に追いつかない反面、下落局面ではたとえ土地価格が半値になっても賃料は半値にはならない。

当然、住宅賃貸事業も集客や管理等の「運営リスク」があるが、宿泊施設や商業施設のそれと比べると微々たるものと言える。「新しい生活様式」による需要変化のリスクもあるが、これも宿泊施設・商業施設と比較すれば小さい。

このようなコロナ禍の状況において、住宅は安定的な投資先として注目を浴びており、実際に価格もあまり下がっていない。エリアや種別によって今後需要の強弱に変化があるであろうが、不動産投資は相対的に「住宅優位」だ。

こと都心部においては住宅投資はむしろ注目度が高まっていくであろう。

*実際には固定資産税等の賃料に左右されない出費(固定費)があるため、賃料2倍・不動産価格とも2倍になっても利回りが正確に2倍になるわけではない(2倍を上回ることもある)が、話を単純にするためこのような説明にしているとご容赦願いたい。

 

この記事の編集者

田中 和彦

株式会社コミュニティ・ラボ代表。マンションデベロッパー勤務等を経て現職。
ネットサイトの「All About」で「住みやすい街選び(関西)」ガイドも担当し、関西の街の魅力発信に定評がある。

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