田中和彦が斬る!関西マンション事情 不定期
田中 和彦

[第87号]供給エリアで明暗 〜「売主別 中古マンション値上がり率ランキング2018(関西版)

2018年12月12日

「住まいサーフィン」から「売主別 中古マンション値上がり率ランキング2018(関西版)(https://www.sumai-surfin.com/price/UrinushiTourakuKansai2018/)」が発表された。トップは昨年同様阪急阪神不動産(昨年は「阪急不動産」が1位)だったが、それ以外の順位はどのような結果だったのだろうか?気になったことを幾つか紹介してみたい。

まずは平均値上がり率の数値。16社中プラスのだったのは上位7社のみ。これはなかなか購入者及び購入検討者にとって厳しい数値といえる。8位日商エステムから13位住友不動産は-0.1%から-3.7%で、見方によれば「ほとんど下がっていない」とも言えるので問題ないとしても14〜16位がほぼ10%も下落しているのは少し目を疑うような結果だ。

同じランキングでも関東では20社中17社がプラス。マイナスの3社についても、最下位の積水ハウスが-3.0%であり、ほとんど下がっていない。関東のランキングが2006年以降に分譲されたマンションが対象であるのに対し、関西は「昨今の京都地区の急激な価格上昇を考慮し2009年以降に竣工した物件に限定」されているため、リーマン直後の割安だった物件が含まれていないため多少「不利」ではあるが、それにしても10%前後下落している売主が3社もいるのは驚きだ。このランキングを見る限り、関西でのマンション選びは、より立地等にシビアな目を持つ必要があるといえる。

もう一つ、関東関西を見比べて気づいたのは「TOPブランドは強い」ということだ。ランキングの売主の平均値上がり率を単純平均すると関西は-0.71%、関東は3.68%。これを三菱地所、三井不動産レジデンシャル、野村不動産の3社に限ってみれば関西は8.4%、関東は13.3%。全売主平均と三菱三井野村の3社平均の差は関西9.1%、関東9.6%。関西関東限らず「3社のマンションは1割高い」結果が出ている。

一方、関西関東で評価の差が大きかったのが東急不動産。関東では8.2%と堂々2位であるのに関西では、9位で-1.6%と振るわない。東急不動産は、関東においては人気沿線である東急沿線を中心に供給するデベロッパー。比較的学校区人気の高いエリアで分譲しているのも特徴だ。しかし、残念ながら関西ではデベロッパーとしての存在感は、以前より向上しているものの、いまだそれほど高いとは言えない。関東における東急のポジション、具体的に言えば「人気沿線である阪急沿線」や「比較的学校区人気の高いエリア」を中心に供給」する阪急阪神不動産が関東の東急不動産とほぼ同等の平均値上がり率というのも対象的で面白い。

関西トップの阪急阪神は阪急沿線、関東2位の東急は東急沿線。それぞれに「人気沿線」を得意としているが、関西3位の京阪電鉄不動産は同じ私鉄系デベロッパーでも阪急阪神不動産、東急不動産とは異なる。京阪電鉄の沿線は、正直言って「人気沿線」とは言い難い。「関西 住みたい街ランキング2018(スーモ)(https://suumo.jp/edit/sumi_machi/2018/kansai/)」で京阪沿線の駅は、JR・地下鉄の駅と隣接する「京橋」駅が一番最高位で35位。次が「枚方市」駅で39位。上位40位にたったの2駅しか含まれていない。

京阪電鉄不動産の平均値上がり率が高かった理由として、一番考えられるのは京都の不動産価格が上がったから。「ファインフラッツ」シリーズの知名度は上昇しつつあるが、三井三菱をおさえて平均値上がり率が高い理由とは考えづらい。

同じような印象を持つのが6位の睦備建設。この売主名は関東の人はおろか、関西の人でもあまり知らない人が多いかもしれない。同社は滋賀県京都府で事業を行うローカルデベロッパー。しかも京都市内中心部ではなく京都市伏見区や宇治市での供給が多い。地元以外では知名度が低いが、供給エリアではブランド名(パデシオン)も浸透しており「京都人気」と「ブランド認知」が野村不動産や近鉄不動産をおさえての6位につながったように思える。

ところで、この関西のランキング。関東と比べるとローデータの数が少ないというきらいがある。関東は20社中、100棟超が7社、最低が30棟であるのに対して、関西は16社中30棟を超えるのが2社しかない。しかしその30棟超の、比較的ブレが少ないと考えられる売主で-10.3%の平均値上がり率、わかりやすく言えば10.3%の下落が観測されている。和田興産だ。

和田興産は、神戸市内を中心に比較的小規模な分譲を行う事業主。関西ではここ数年、インバウンド需要やホテル供給等で大阪・京都の不動産市場に活気があったなか神戸は後塵を拝していた。また市場では、タワーマンションを含むゆとりある敷地計画の大規模マンションの人気が高い。そんななか和田興産の得意とする商品が中古市場では評価が低かったと考えられる。

売主別の資産価値を図るこのランキング。かなり興味深い企画だが「街ランキング」同様、結果を鵜呑みにするのはよくない。不動産の資産価値を決めるのはあくまで「立地」。そしてその次にランドプランや設備、仕様なども含む「建物」。そしてその物件をいくらで買うか、新築の場合なら「分譲価格」。物件ごとにそれらをしっかり見極めるの必要がある。その上でこの「売主別 中古マンション値上がり率ランキング」を、売主別に立地・建物・分譲価格の傾向が反映された結果としてみるのが「正しい見方」であると考える。

 

この記事の編集者

田中 和彦

株式会社コミュニティ・ラボ代表。マンションデベロッパー勤務等を経て現職。
ネットサイトの「All About」で「住みやすい街選び(関西)」ガイドも担当し、関西の街の魅力発信に定評がある。

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