東京オリンピックに向けて首都圏では各所で再開発が進んでいる。それに比べて関西の開発関連は少し地味な印象だ。JR「大阪」駅北側再開発、いわゆる「うめきた2期」ばかりが目立っていて、ときおりJR「三宮」駅界隈のビル計画が取り上げられる程度。JR東海道線を中心に、複数の再開発が予定されていることは地元以外では案外知られていない。以下、JR東海道線〜山陽本線駅前再開発を幾つか紹介したい。
【JR「草津」駅】
北中西・栄町地区第一種市街地再開発事業
https://www.city.kusatsu.shiga.jp/shisei/kaigishingikai/hokoku/naibu/toshisaisei/honbukaigi.files/youshisetumei.pdf
琵琶湖の南東部に位置する草津市は東洋経済が調査した「住みよい街ランキング 近畿ブロック」で1位を2013年から2017年まで5年連続で獲得している人気行政区。その中心地と言えるJR「草津」駅では旭化成不動産レジデンスを事業主とするタワーマンションを中心とした再開発計画が進行中だ。地上26階建て・高さ約99m・延床面積約39,900㎡の規模。この計画の南側にはタワーマンション「リーデンスタワー草津」、周辺には「ザ・草津タワー」があり、草津駅東口の高層化が進む。
【JR「岸辺」駅】
北大阪健康医療都市整備事業
http://www.city.suita.osaka.jp/home/soshiki/div-kenkoiryo/kento/seibijigyou.html
吹田市南東部に位置するJR「岸辺駅」の北側、吹田市と摂津市にまたがる吹田操車場跡地では北大阪健康医療都市「健都」の建設が進んでいる。その愛称から想像できる通り「健康・医療のまちづくり」がされており、国立循環器病研究センターの移転のほか市立吹田市民病院、高齢者向けウェルネス住宅などができる予定。住宅部分は近鉄不動産・大和ハウス工業・名鉄不動産が事業主となる15階〜20階の合わせて5棟824戸からなる「ローレルスクエア健都ザ・レジデンス」が現在販売中だ。
【JR「西宮」駅】
JR西宮駅南西地区再開発
https://www.nishi.or.jp/shisei/seisaku/toshikeikaku/shigaichisaikaihatsu.html
JR「西宮」駅では西宮市の公設・民設の卸売市場再編となる複合型の再開発が計画されている。地上37階建ての規模で、卸売市場の他に住宅・商業施設等の機能が導入される予定となっており、「2024年度末頃の完成を目指して手続きが進行中」とのこと。住宅部分の事業主は決定されていない。
【JR「芦屋」駅】
JR芦屋駅南地区第二種市街地再開発事業
http://www.city.ashiya.lg.jp/gairo/jrashiyasouth.html
駅前再開発がすでに実施されている駅北側と比べて駅前の風景としては少し見劣りするJR「芦屋」駅南側が東急不動産を事業協力者として開発される。地上12階建て、住戸約50戸と規模は小ぶりだが、新快速の停車するJR「芦屋」駅とペデストリアンデッキで直結し商業施設も併設。人気のマンションとなりそうだ。
【JR「垂水」駅】
垂水駅前中央東地区第一種市街地再開発事業
https://www.re-port.net/article/news/0000054607/
垂水駅の北側の「垂水廉売市場」を中心とした敷地で進行しているのは再開発計画「垂水駅前中央東地区第一種市街地再開発事業」。延床面積約36,400㎡、地上25階建てのタワーマンションを中心に、低層部に店舗と生活利便施設等が入居する計画で2023年度の竣工が予定されている。垂水駅東地区(レバンテ垂水)、垂水駅西地区(ウエステ垂水)は2002年に事業完了しており遅れること約20年、ようやくJR「垂水」駅前の開発が完成しそうだ。事業協力者は野村不動産。
記事を読んでいただけるとわかるが、JR「芦屋」駅前の再開発をのぞき、いずれも目玉となるのは「駅前タワー」。東京に限らず地方都市も含めて再開発といえば「駅前タワー」と判に押したような計画ばかりだ。この駅前タワー、首都圏では圧倒的な人口の多さと首都圏以外からの人口流入でニーズが満たされるが、関西の再開発要注意だ。短期的な視点では、駅前再開発を選んでおけばそれほど大きな失敗はないだろうが、中長期的には大阪市以外のエリアは、たとえそれが駅前であっても周辺人口や住宅部分以外の「開発による伸びしろ」等も考慮して慎重に選びたい。