●「大規模=郊外」から「大規模=都心」の時代へ
大規模マンションは郊外で供給され、都心部では比較的小規模のマンションが多い。20世紀の分譲マンション分布は、都心部とその周辺エリアでおおよそそのような住み分けがあった。ところが近年ではその様子が少し変わってきていて、むしろ逆転現象が起きている。「住まいサーフィン」の人気コンテンツのひとつ「今、旬なマンション」の大阪市内を見てふと思った(※)。
100戸未満には「プレサンスロジェ北田辺(2位 東住吉区)」、「サンクレイドル阿倍野阪南町(5位、阿倍野区)」、「(仮称)御堂筋線駅3分プロジェクト(5位 阿倍野区)」と複数の天王寺駅以南の住宅街に位置するマンションがランクインしている。それ以外のマンションの最寄り駅も「太子橋今市」駅、「都島」駅、「住之江公園」駅とターミナル駅・乗換主要駅では無い駅ばかりが並ぶ。「パークリュクス大阪天満」は最寄り駅が「天満橋」駅でありビジネス街のように見えるが、マンション建設現地は駅から北側に川(大川)を渡って南森町に近いエリア。都心ビジネス街というよりも住宅エリアに近い。小ぶりなマンションは総じて周辺部の住宅地である。
一方、200戸以上のランキングでは最寄り駅が「北浜」駅、「京橋」駅、「福島」駅、「中津」駅と都心のマンションがズラリ。それ以外のマンションも所在する区は福島区(「リバーガーデン福島木漏れ日の丘」、「ジオ福島野田The Marks」)、中央区(「グランドメゾン上町台ザ・タワー」)、北区(「ブランズタワー梅田North」、「シティタワー東梅田パークフロント」)といずれも大阪(梅田)にほど近い都心立地だ。唯一「都心」とはいえない「ジェイグランシティ塚本」(淀川区)にしてもJR「大阪」駅から一駅のJR東海道線「塚本」駅が最寄り駅である。
●都心大規模が増えた理由
以前は、マンションデベロッパーが広い土地を手当てできるのは郊外エリアであることが多かった。空き地や未利用地などだ。それが住宅地で稼働していた工場の跡地、金融機関等の寮や社宅などが、都心近郊の住宅エリア等でマンションになる例が増えた。これは2005年度から企業会計で不動産の時価評価が義務付けられ「土地保有による含み益」が消えたことが大きな原因の一つだ。
その後、首都圏を中心にタワーマンションの供給が増え、今までは特別な居住形態のように捉えられていたものが住宅の選択肢の一つとして供給が増えた。都心居住も一般的になった。
タワーマンションは、当然ながら多くの容積率を消化する。今までは「住宅地として不向き」「オフィスビル用地」として「デベロッパー向けの土地」ではなかった都心部の高容積率の土地が、俄然注目を浴び数多くのタワーマンションが供給されるようになった、というわけだ。
一方、「郊外大規模」は土地神話の崩壊や少子高齢化社会、空き家問題など不動産市場にネガティブな状況が広まるにつれ需要も供給も細っていった。
●今後も都心有利は変わらない
以上、紙幅の関係もありかなり端折ったが、おおまかに都心大規模への流れは理解いただけたであろうか。
では今後の流れはどうか?やはり「都心大規模、郊外小規模」の流れは変わらないように思われる。
需要供給の関係、具体的には人口減少(そして住宅購入層の減少)を考えると、全体的に不動産価格が上昇することは考え難い。また、多少の揺り戻し(郊外需要の回復)があったにしても、高齢者や共働き世帯といった生活利便な都心での居住を望む層は増え、都心マンションの供給は底堅い。相続対策も需要の下支えの大きな要因だ。
一方、郊外エリアは一定の「地元ニーズ」以上の需要が考えにくく、小規模供給が無難と言える。
東京オリンピック以降の不動産相場は、読みにくい。踊り場になるとの見方もある。だが、都心部と郊外部のバランスは「オリンピック以降」も変わりそうには思えない。
(参考:今、旬なマンション)
2018/03/14 01:15 更新 30日間・大阪 大阪市内・マイページ登録数
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