田中和彦が斬る!関西マンション事情 不定期
田中 和彦

[第65号]分譲年と行政区で損得がわかる? 〜マンション騰落率について(関西)〜

2018年01月10日

「いつ、どの場所でマンションを買った人が儲かっているか」がわかる「住まいサーフィン」の人気コンテンツ「行政区別マンション騰落率」の2018年版が公開された。内容はシンプルで、2016年7月から2017年6月までの1年間に売り出された中古マンションデータをもとに新築時価格と中古売出価格を住戸単位で比較、その騰落率を算出し行政区/分譲年別に平均した数値を「騰落率」としている。

以下では大阪市、神戸市、京都市の区別騰落率を順に見ていきたい。

【大阪市〜中心部とそれ以外で格差】
2001年以降で騰落率がプラスすなわち「購入価格より上がっている」年が多いのは福島区(11/12)、西区(10/13)、天王寺区(12/13)、北区(10/14)、中央区(12/14)。2001年から2014年の14年間のうち騰落率プラスが二桁ある区は大阪市内24区中この5区だ。北区(キタ)、中央区(ミナミ)、天王寺区の御堂筋沿いの3区とその西側(福島区、西区)の2区、いずれも大阪市内の中心部だ。

一方、それ以外の大阪市内は冴えない。上記の5区以外に平均騰落率がプラスなのは都島区、浪速区、阿倍野区、鶴見区。この9区以外の15区は平均騰落率がマイナスとなっている。

エリア的な特徴で言えば此花区(-9.5%)、大正区(-8.0%)、住之江区(-12.45%)の湾岸部、木造賃貸住宅が多く残る東淀川区(-11.1%)、生野区(-19.9%)、西成区(-20.5%)、そして大阪市内南部の住吉区(-9.8%)、東住吉区(-7.9%)、平野区(-15.2%)のマイナスが大きい。

【神戸市〜最近は相場が持ち直し】
2001年からの平均を見ると非常に寂しい数字だ。東灘区(0.6%)、灘区(3.9%)、中央区(3.2%)の3区がかろうじてプラスだが、それ以外の6区はマイナス。須磨区(-10.7%)、垂水区(-14.9%)、北区(-29.3%)に至っては二桁マイナスだ。

しかしこれは14年間の平均。2010年以降の数字を見ると様子は変わる。須磨区以外の8区は騰落率の平均がプラスとなっている。東灘区、灘区、中央区の「阪神間エリア」が上昇しているのは想像に易いが兵庫区、長田区が阪神間エリア同様プラスに転じているのが興味深い。

【京都市〜マンション買うなら中京区!?】
最後は京都市。中心部の相場が堅調だ。特に目立つのは中京区。2001年(79.2%)、2002年(69.8%)、2003年(53.0%)以降もプラスが続き、2008年以外は全年プラスで全て二桁増、平均は32.6%と群を抜いた数値となっている。単年の79.2%(2001年)と平均の32.6%は、首都圏も含めた行政区別マンション騰落率中1番。30%超は京都市中京区以外にはない。

数値でこれに続くのが南側隣接の下京区(15.5%)と東側隣接の東山区(16.7%)。JR京都駅北部エリアが強い。それ以外にも上京区(8.4%)、左京区(6.4%)、南区(3.2%)、右京区(1.8%)、西京区(0.2%)がプラスとなっている。

マイナスなのは北区(-6.8%)、伏見区(-6.6%)と山科区(-8.7%)の3区のみだ。しかし2012年以降は3区ともマイナスの年はなく、ここ数年の相場の上昇が見て取れる。

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以上、大阪神戸京都の3市の数値を見てみた。読者の方には言わずもがなであるかもしれないが、平均騰落率は、過去分譲されたマンションが値上がりした結果であって、今後価格が上昇するわけではない。ある年に買ったマンション価格が今上がっている理由としては、「分譲当時はエリア/物件が過小評価されていた」「今、エリア/物件が過大評価されている」「エリア/物件の価値(交通便、買物便等)が上がった」などが考えられる。

数値が上がっている(下がっている)ことに加え、「なぜ?」も一緒に考えてみたい。

 

この記事の編集者

田中 和彦

株式会社コミュニティ・ラボ代表。マンションデベロッパー勤務等を経て現職。
ネットサイトの「All About」で「住みやすい街選び(関西)」ガイドも担当し、関西の街の魅力発信に定評がある。

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