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「今、家を買うなんて信じられない」「5年後10年後には大変なことになる」――そんな声がインターネットやSNSで見られるようになりました。しかし一方で、都心部などでは家賃の上昇が続いており、むしろ“家を持たないこと”がリスクになる時代も見えてきています。
多くの人の憧れであるマイホーム。いつか結婚して、子供を産んで、家を買うというライフプランを描いている方も多いでしょう。とはいえ、前述のようなネガティブな意見を目にすると、「本当に今、家を買っていいのか?」と迷ってしまうのも無理はありません。
この記事では、「今家を買う人が信じられない」と言われる理由や背景を整理し、それらの主張が本当に正しいのかを検証。さらに、将来後悔しないために知っておきたいリスク対策についても解説します。
目次
- 1 今家を買う人が信じられない、5年後10年後には大変なことになると言われる理由
- - 住宅価格の高騰、都心マンションやタワマンは1億円以上
- - 住宅ローン金利が上昇中!5年後10年後には大変なことになる?
- - ライフスタイルは変化する、家を買って縛られる時代は終わった?
- - 人口減少&空き家だらけ、もう家はいらない?
- - 自然災害のリスク!地震が来たらタワマンは終わり
- 3 「今家を買う人が信じられない」の理由は正しいのか?
- - なぜ住宅価格は高騰?今後、大きく値下がりするのか?
- - 金利は今後も上昇していくって本当?
- - 持ち家はライフスタイルの変化に対応できないのか?
- - 家が余って資産価値が低下するという説は正しい?
- - 自然災害大国では、持ち家よりも賃貸の方が安心?
1.今家を買う人が信じられない、5年後10年後には大変なことになると言われる理由
まずは、「今家を買う人が信じられない、5年後10年後には大変なことになる」と言われる主な背景や根拠として挙げられているポイントをご紹介します。
ただし、これらの理由が“本当に正しいのか?”については慎重に検討する必要があります。記事の後半では、こうした意見の真偽を検証し、将来後悔しないために必要な考え方や対策についても解説します。
住宅価格の高騰、都心マンションやタワマンは1億円以上
「今家を買う人が信じられない」、そう考えられる理由の一つが住宅価格の高騰です。不動産経済研究所によると、2025年上半期の首都圏新築マンションの平均価格は8,958万円。東京23区に限ると、平均はなんと1億3,064万円となっており、“1億円超え”が当たり前の時代になりつつあります。
参考:不動産経済研究所「首都圏新築分譲マンション市場動向2025年(上半期)」
2025年販売・新築マンションの価格例(予定価格含む)
マンション名 | 価格の例 |
---|---|
THE TOYOMI TOWER MARINE&SKY | 約1.90億円 (48階・西向き・約74㎡の住戸) |
ブリリア二番町 | 約1.84億円 (2階・南向き・約61㎡の住戸) |
ブランズタワー大阪梅田 | 約1.45億円 (28階・南向き・約76㎡の住戸) |
URAWA THE TOWER | 約1.74億円 (20階・東向き・約76㎡の住戸) |
上記の例は、いずれもプレミアムフロアではなく、一般層向けの住戸価格である点に注目すべきです。一方で、最上階やペントハウスなどは5~6億円を超えることもあり、“超高価格帯”の供給も増えています。
中古や戸建ても例外ではなく、いまや「首都圏で家を買う」こと自体が高コストとなりつつあります。
首都圏の中古マンションの平均価格推移
画像出典:公益財団法人東日本不動産流通機構「首都圏不動産流通市場の動向(2024年)」
首都圏の新築戸建ての平均価格推移
画像出典:公益財団法人東日本不動産流通機構「首都圏不動産流通市場の動向(2024年)」
中古マンションは、10年前の約2倍の価格となっています。また、首都圏以外の地域でも価格高騰は継続中です。
「これだけ価格が高騰しているから、今はバブルだ。いつバブルが弾けるか分からないから、今家を買うのは危険。5年後10年後には大きく値下がりする。」と考える方もいるでしょう。
住宅価格が高騰している理由と値下がりのリスクについては、「今家を買う人が信じられない」の理由は正しいのか?で解説します。
住宅ローン金利が上昇中!5年後10年後には大変なことになる?
かつては超低金利が続き、変動金利で0.3%前後という時代がありました。しかし2024年3月、日銀がマイナス金利政策を解除したことをきっかけに、金利の上昇局面に入っています。
住宅ローンには、大きく分けて「変動金利」と「固定金利」の2種類があります。現在、借入者の7割以上が選んでいる変動金利は、固定金利よりも金利が低いことから人気ですが、政策金利の影響を受けやすいという特徴があります。
たとえば2025年7月時点の 三菱UFJ銀行では、変動金利が0.595%~、35年固定金利が2.570%~と、約2%の差があります。
しかし、今後も利上げが続けば、変動金利の返済額が徐々に増え、家計を圧迫する可能性もあるのです。
さらに、固定金利も例外ではありません。長期金利の上昇により、固定金利もすでに引き上げられています。
いずれの金利タイプも「かつての低水準」からは脱しつつあり、「今ローンを組むのは危険では」と考える人も増えてきています。「5年後10年後に金利がさらに上がれば、住宅ローンの返済が大変なことになるのでは?」という不安が広がる背景には、こうした金利動向の変化があるのです。
では実際に、どれくらいの影響があるのか。この点については、後半の章「今家を買う人が信じられない」の理由は正しいのか?で詳しく解説します。
ライフスタイルは変化する、家を買って縛られる時代は終わった?
持ち家と賃貸どちらが良いのかは意見が分かれるところですが、賃貸のメリットとしてよく挙げられるのが「いつでも気軽に引越しできること」です。賃貸の自由度は、多様化するライフスタイルにマッチしているという声もあります。
たとえば以下のような理由で、予想外の引っ越しを迫られることもあるでしょう。
引越しが必要になる例
- ● 結婚
- ● 出産
- ● 子どもの成長等を理由とした部屋不足
- ● 転勤
- ● 転職
- ● 両親や祖父母の介護
- ● 子どもの独立
しかし、持ち家を購入すると「一生住む前提」でローンを組む方も多く、将来の変化に合わせて住み替えが難しいと言われることがあります。こうした背景から、「今の時代に家を買うのはリスクだ」という意見が生まれています。
では本当に、持ち家はライフスタイルに対応できないのか?引っ越しが必要になったらどうすれば良いのか?詳細は、「今家を買う人が信じられない」の理由は正しいのか?で解説します。人口減少&空き家だらけ、もう家はいらない?
日本の人口は2008年をピークに減少を続けており、少子高齢化の進行も止まりません。現在の人口は約1.2億人ですが、2070年には8700万人になると推計されています。
このような人口動態の変化から、「空き家が増え、住宅の資産価値は今後下がる」という見方が広がっています。
画像出典:総務省統計局「人口推計(2025年(令和7年)1月確定値、2025年(令和7年)6月概算値)」
人口減少でよく問題提起されるのが「空き家問題」です。野村総合研究所の研究結果では、「2043年には、空き家は約25%に上昇する見込み」となっています。
参考:株式会社野村総合研究所「2040年の住宅市場と課題」
人口減少によって家の資産価値が下がる、家が余るなら家を建てる必要はない、という考え方があります。
空き家問題はどうなっていくのか、家の資産価値は下がっていくのかについては、「今家を買う人が信じられない」の理由は正しいのか?で解説します。
自然災害のリスク!地震が来たらタワマンは終わり
地震・台風・洪水など、日本では年間を通じてさまざまな自然災害が発生します。「災害が多い国で、ローンを組んでまで家を持つのはリスクが高い」と考える人も少なくありません。
特に近年は、線状降水帯による大雨や洪水など、これまで想定されていなかった災害リスクが顕在化しています。2024年夏には「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)」が発表され、日本列島に大規模地震の可能性があることも示唆されました。
災害によって住宅が全壊・半壊すれば、家を失っても住宅ローンだけが残るという最悪のケースもありえます。こうした背景から、「今あえて家を買うのは危険」「むしろ賃貸のほうが柔軟に避難・移住できる」という意見が出てくるのです。
また、実際に起きた災害が「購入をためらう理由」として記憶に残っているケースもあります。
たとえば2019年の台風による大雨では、神奈川県川崎市・武蔵小杉のタワーマンションで浸水被害が発生。地下電源設備が浸水し、全棟が停電。電気・水道・エレベーターが使用不能となり、特に高層階の住民は大きな不便を強いられました。この出来事は全国的に報道され、「タワマンは災害に弱い」という印象が広まるきっかけになりました。
さらに、2025年3月にミャンマーで発生した地震では、現地の高層マンションが倒壊し、その映像が日本国内でもSNSを通じて拡散されました。これを受けて、「大地震が来たら日本のタワマンも同じように倒壊するのでは?」といった不安が改めて高まっています。
こうした災害リスクを理由に、「今家を買う人が信じられない」「特にタワマンはやめたほうがいい」という声があるのも事実です。
では、本当に持ち家は危険で、タワーマンションは災害に弱いのか。この点についての真偽や実際の対策は、後半の章「今家を買う人が信じられない」の理由は正しいのか?で解説します。
2.それって確証バイアスじゃない?賢い人の検証方法
ここまで、「今家を買う人が信じられない、5年後10年後には大変なことになる」と言われる主な理由をご紹介してきました。これらの主張が本当に正しいのかを検証する前に、情報を見極めるうえで大切な“考え方”をご紹介します。
今の時代、インターネットを使えば必要な情報はすぐに手に入ります。YouTubeやX(旧Twitter)、InstagramなどのSNSでは、自分が欲しいと思った情報を発信している人を簡単に見つけることができます。だからこそ注意したいのが、「確証バイアス」という心理現象です。
確証バイアスとは?
確証バイアスとは、自分に都合の良い情報だけを集めてしまい、そうでない情報は無視をする心理現象を指します。誰にでも起こりうる自然な心理現象ですが、意識せずにいると判断を誤る原因にもなります。
たとえば、「今家を買うのは危険だ」と思っている人は、その考えに合致した情報ばかりを集め、「今買っても問題ない」という意見やデータには目を向けなくなる可能性があります。
このバイアスを完全に避けるのは難しいですが、次のような意識を持つことで冷静な判断がしやすくなります。
賢い人が実践している、情報の検証方法
- ● 「自分は確証バイアスに陥っていないか?」と自問してみる
- ● 異なる意見にもあえて目を通してみる
- ● 感情や印象ではなく、客観的なデータを重視する
これらを意識するだけでも、情報の偏りを減らし、公平な判断がしやすくなります。
SNSなどでは、「今家を買う人が信じられない、5年後10年後には大変なことになる」といった意見を、著名人や不動産の専門家が発信していることがあります。コメント欄では「まさにその通り!」と同調する意見も多く見られますが、それが“真実”とは限りません。
「これは確証バイアスではないか?」「本当に客観的な視点か?」と立ち止まって考える姿勢が大切です。
3.「今家を買う人が信じられない」の理由は正しいのか?
それでは、「今家を買う人が信じられない、5年後10年後には大変なことになると言われる理由」でご紹介した理由は正しいのかどうか、検証していきます。
なぜ住宅価格は高騰?今後、大きく値下がりするのか?
先ほど解説したとおり、現在、住宅価格は新築・中古、マンション・戸建てを問わず高騰しています。この背景にはさまざまな要因があり、単なる一時的な“バブル”とは言い切れない構造的な事情も含まれています。
住宅価格が高騰している理由
価格上昇の主な理由要因には、以下のようなものがあります。
住宅価格が高騰している理由
- ● 地価の上昇
- ● 建築コストの上昇
- - 資材価格の高騰(円安・世界情勢)
- - 人件費の上昇(職人不足・2024年問題)
- ● 住宅性能基準の引き上げ(省エネ義務化など)
特に建築費については、ここ10年で大幅に上昇しています。2025年6月時点の建設物価建築費指数(2015年比)では、以下のようになっており、建てるコスト自体が以前とはまったく異なる水準になっています。
2025年6月の建設物価建築費指数(工事原価)
2015年からの上昇率 | |
---|---|
住宅(木造) | +42.7% |
集合住宅(RC造) | +38.8% |
また、2025年4月からは省エネ基準適合が義務化されました。省エネ性能を満たさない住宅は建てられなくなり、今後も一定のコスト上昇が続くと見込まれています。
今後、住宅価格は大きく値下がりするのか?
ここで、記事の本題に戻りましょう。「5年後10年後には大変なことになる」のかどうかです。「今の住宅価格はバブルで、そのうち崩壊して大きく値下がりしてしまう」のでしょうか?
実はこの主張は、ここ数年に始まったものではありません。コロナ禍に入る前から言われていて、「東京オリンピック後にはバブルが弾ける」という説を唱える人もいましたが、結果として住宅価格はその後も上がり続けてきました。
「バブルが崩壊する」と何年も言い続ければ、いつか当たるかもしれません。5年後10年後には今より住宅価格が下がっている可能性もゼロではないでしょう。しかし、少なくとも今の高騰には明確な理由があり、その構造がすぐに変わる兆しは見えていません。特に建築コストについては、急激に下がる見通しはなく、「値下がりを待つ」という選択が報われる保証はないのが現実です。
値下がりを待つことのリスク
「今は高すぎるから、価格が下がってから買おう」と考える方もいるでしょう。しかし、住宅価格が大きく下がるときは、社会全体が不安定になっている可能性が高いとも言えます。たとえば金融危機・自然災害・経済の停滞など、住宅購入どころではない事態が背景にあるケースも想定されます。
また、値下がりを待つ間に金利が上昇したり、希望の物件が売れてしまったりする可能性もあります。このようなリスクも踏まえると、「いつになるか分からない値下がりを待って買い控える」ことが、必ずしも得策とは言えません。
住宅価格が高騰している背景には明確な根拠があり、「近いうちに大きく値下がりする」とは限らない。この点を理解したうえで、今後の住宅購入を検討することが大切です。
金利は今後も上昇していくって本当?
住宅ローン金利には「変動金利」と「固定金利」がありますが、それぞれの金利は異なる要因で決まります。(銀行やローン商品によって違うことがあります)
金利タイプ | 基準となる指標 | 主な影響要因 |
---|---|---|
変動金利 | 短期プライムレート | 政策金利(=日銀の金融政策) |
固定金利 | 長期金利(例:10年国債利回り) | 金融市場の動向・経済見通し |
固定金利はすでに上昇中
固定金利の基準となる長期金利(10年国債の利回り)は、2025年7月15日に2008年10月以来、実に約17年ぶりの水準に達しました。背景には、「参議院選挙の結果によっては日本の財政状況がさらに悪化するのではないか」との懸念が広がり、国債を売る動きが強まったことがあります。
この長期金利の上昇は、固定金利の住宅ローンにも影響を与える可能性が高く、今後1~2か月以内にさらなる金利引き上げとして反映されることが予想されます。すでに2024年以降、固定金利は上昇傾向にありましたが、今回の長期金利の急騰を受けて、そのペースが一段と強まるかもしれません。
変動金利もすでに上昇中、さらに上がる可能性も
そして、日銀の金融政策によって決まる変動金利は、2024年からすでに少しずつ上昇しています。マイナス金利の解除に続き、これまでに2回の追加利上げが行われており、金利の上昇局面に入ったといえるでしょう。
日銀は「展望どおりに経済・物価の見通しが実現していけば、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくことになる」という考えを示しており、今後も段階的な利上げが続く可能性が高いと見られています。
政策金利がどこまで上がるのかは分かりませんが、日銀・植田総裁の会見では「名目中立金利は1%~2.5%の範囲にある」という発言がありました。
現在の政策金利は0.5%ですが、仮に2.5%まで引き上げられた場合、住宅ローンの適用金利はどう変化するのでしょうか?
金利が上昇した場合の返済シミュレーション
以下の条件で住宅ローンを借りるとき、金利によって毎月の返済額はどう変わっていくのか見ていきます。
- ● 変動金利・借入額7,000万円・借入期間35年・元利均等返済
- ● 政策金利0.5%のときの住宅ローン適用金利を0.75%とする
- ● 政策金利が2.5%まで上がる=住宅ローン適用金利が2.75%まで上がると仮定する
住宅ローン金利 | 月々の返済額 |
---|---|
0.75% (現在の政策金利=0.5%) |
189,549円 |
1.00% (政策金利0.75%) |
197,600円 |
1.25% (政策金利1.00%) |
205,860円 |
1.75% (政策金利1.50%) |
223,004円 |
2.25% (政策金利2.00%) |
240,966円 |
2.75% (政策金利2.50%) |
259,724円 |
仮に5年間は返済額が変わらない「5年ルール」が適用されても、5年後に2%の利上げが反映されれば、毎月の返済額が6万円以上増える可能性もあります。金融機関によっては5年ルールがない場合もあり、より早く返済額が増えることも考えられます。
こうした背景から、「金利が今より2%も上がったら、住宅ローン返済が大変なことになる」と心配する声が出てくるのも無理はありません。
金利上昇=買わない方がいい、とは限らない
ただし、日本経済が安定的に利上げを継続できるかどうかは、依然として不透明です。また、金利が上がれば不動産投資ローンや建築コストにも影響し、結果的に賃貸住宅の家賃が上昇する可能性もあります。
さらに、アメリカは2025年8月1日から、すべての日本製品に対して25%の上乗せ関税を発動する予定です。この影響により、日本からの輸出が鈍化し、企業収益や設備投資が減少することで、日本経済全体の勢いが弱まり、物価や賃金の伸びが停滞する懸念も出ています。
このように、金利は今後も上がるとは限らず、むしろ世界経済の不安定さがリスクとして立ちはだかる場面もあるのです。
後ほど解説するリスク対策をしながら、金融政策等に関する情報収集をすることが大切です。以下の記事は毎月更新していて、住宅ローンの最新金利情報や金融政策の動向を解説していますので、ぜひ参考にしてください。
住宅ローン金利の最新情報と今後の動向を解説します。
持ち家はライフスタイルの変化に対応できないのか?
持ち家は気軽に引っ越せないから、ライフスタイルの変化に対応できないと言われています。
たしかに、賃貸と比べて引っ越し時のハードルが高いのは事実です。売却活動や各種手続きが必要なうえ、住宅ローンの残債がある場合には、売却がスムーズに進まないこともあります。
ローン残債が売却額を上回ると「引っ越したくてもできない」状態に
すでに住宅ローンを完済している場合や、売却額がローン残高を上回っている場合には、問題なく引っ越しができます。一方で、売却額よりもローン残高の方が多い場合は、差額を自己資金で補う必要があります。
家の値下がりが著しいと、数百万~数千万円の自己資金が必要になり、引っ越したくても引っ越せないという状況も考えられます。これこそが、「5年後10年後には大変なことになる」と言われるケースの一つです。
資産価値が高ければ、持ち家でも柔軟な住み替えができる
そのリスクを防ぐための対策は後ほど解説しますが、実は持ち家だからこそ、ライフスタイルの変化に対応できる場合もあります。
それが、「資産価値が高い住宅を購入して、ライフステージに併せて住み替えをしていく」という方法です。資産価値が高い住宅は値下がりしにくく、売却や賃貸に出しやすいため、必要なときに柔軟に対応できます。
以下のように、引っ越しが必要になったタイミングで住み替えをしていくと良いでしょう。
- ● 就職してすぐに家を買い、結婚後に売却益を元手に大きな家に住み替えよう
- ● 交際中に二人で住む家を買い、結婚・出産を機に売却益を元手に大きな家に住み替えよう
- ● 子供が巣立ち夫婦二人になった後、売却益を元手に海外や地方に移住しよう
持ち家が「ライフスタイルに縛られるもの」になるか、「変化に対応できる資産」になるかは、どんな物件を選ぶかによって大きく変わります。将来の柔軟性を確保するためにも、住宅の資産価値は見逃せないポイントです。
家が余って資産価値が低下するという説は正しい?
日本は人口が減っているので、「空き家が増えて家の資産価値が下がる」と言われることがあります。しかし、この説は必ずしも正しいとは言えません。
日本の人口が減っているのは事実ですが、世帯数は増えているからです。
画像出典:厚生労働省「2022年国民生活基礎調査の結果概要」
特に東京都では世帯数の増加が顕著で、20年後も現在より世帯数が多いという予測も出ています(参考:東京都「東京都世帯数の予測」)。現在、都内は特に住宅需要が高く、賃料の上昇も止まりません。このように、「人口減=需要減」とは単純に言えないのが現状です。
空き家予測は「大幅に外れた」実績も
先ほどご紹介したように、野村総合研究所は「2043年には、空き家は約25%に上昇する見込み」と予測していますが、この予測は外れることも考えられます。同社は2015年にも予測をしていますが、予測数値は外れており、今後の予測値もこの10年間で大きく変わっています。
2015年の 空き家率予測 |
2024年の 空き家率予測または実績値 |
|
---|---|---|
2018年 | 16.9%(予測) | 13.6%(実績値) |
2023年 | 21.0%(予測) | 13.8%(実績値) |
2028年 | 25.5%(予測) | 15.5%(予測) |
2033年 | 30.2%(予測) | 18.3%(予測) |
2038年 | - | 21.6%(予測) |
2043年 | - | 25.3%(予測) |
データ出典:株式会社野村総合研究所のプレスリリース資料
当初は「2030年~2035年に空き家率25~30%」と予測されていましたが、最新の見通しでは20%未満に下方修正されています。よって、5年後10年後には空き家だらけになって大変なことになるという意見は、信ぴょう性に欠けると言えます。
エリアによって、資産価値の行方は大きく異なる
とはいえ、地方や郊外の中には人口減少が著しいエリアもあり、立地によっては家の資産価値が低下しています。そうしたエリアでは、高値掴みを避けることや、永住を前提に購入することが重要です。
一方で、都心や人気エリアでは今後も資産価値が上昇していく可能性があります。マンションについては、新築マンションの供給戸数は年々減少していて、取引される中古マンションの平均築年数は増加傾向となっています。
自然災害大国では、持ち家よりも賃貸の方が安心?
自然災害によって建物が損壊したとき、賃貸住宅であれば、原則は大家(オーナー)が修理等の負担をします。また、老朽化などの対応を自分で行う必要はありません。
一方で、持ち家の場合、建物に損害が出れば、自分で修繕や再建を行う必要があります。火災保険等で一部補償されされることもありますが、特に厄介なのは“家に住めなくなった場合”です。そのような状況でも住宅ローンの返済は続きます。新たに家を借りたり、仮住まいを用意したりすれば、ローンと家賃の二重払いになるおそれもあるでしょう。
地震で被災したら住宅ローンはどうなる?保険やローン特約についても解説!
住宅ローン返済と地震について詳しく解説します。
このように、自然災害時の金銭的リスクを考えると、持ち家より賃貸の方が負担が少ないと言えるケースもあります。しかし、自然災害はいつ起きるか分かりません。5年後10年後には何も起こっていないことも考えられます。「不確実なことを恐れて、何年もずっと家賃を払い続けたくない」と考える方もいるでしょう。
災害リスクを減らすには「立地・構造・性能」の確認が重要
家を購入する場合には、「立地」「防火性能」「耐震性」など、災害への強さが重要になってきます。
- ● 立地:ハザードマップ等で浸水・土砂災害・津波リスクを確認
- ● 防火性能:耐火建築物(RC造など)や木造耐火構造は火災に強い
- ● 耐震性:RC造は耐震性・耐久性にも優れており、タワマンの多くは「制振構造」や「免震構造」を採用
「タワマンは危ない」というのは本当か?
「自然災害が来たらタワマンは終わり」と言われることもありますが、日本のタワーマンションは厳しい建築基準で建てられており、地震で“折れる”ようなことはまずありません。
たしかに、2019年の台風で武蔵小杉のタワマンが浸水被害を受け、直後に相場が下がったケースもありました。しかし、その後1年ほどで武蔵小杉エリアの相場は回復。浸水被害があったタワマンも、2024年には3LDK住戸が8600万~1億3000万円で成約するなど、資産価値を維持しています。
ここまで、「今家を買う人が信じられない」の理由が正しいのかどうかを検証してきました。確証バイアスに陥らないために重要なのは、多角的な視点です。客観的なデータを基に考えるようにしましょう。
4.5年後10年後大変なことにならないために、リスク対策を!
最後に、5年後10年後に大変なことにならないためには、どんな対策をするべきなのかを解説します。
住宅ローン金利が不安なら?考え方とリスク対策を整理しよう
住宅ローンの変動金利は、今後も利上げとなる可能性が高いです。しかし、そのリスクがあるからこそ、固定金利よりも低い水準に設定されています。例えばPayPay銀行※は、変動金利は年0.730%~、35年固定金利は2.530%~です。
※2025年7月借り入れの場合
金利の選び方:変動 or 固定?
「返済しながら不安を抱えるぐらいなら、固定金利で返済したい」そう思う方もいるでしょう。固定金利(全期間固定金利)は途中で金利が上がることはないですが、下がることもないです。団信や事務手数料も含めて、しっかりと比較検討することが重要です。
固定金利と変動金利どちらにするか悩んでいる方は、こちらの記事を参考にしてください。
無理のない借入が原則。ただし“将来の収入”も考慮に入れて
よく言われることですが、住宅ローンはライフプランを立てたうえで、無理のない返済額に抑えることが基本です。ただし、近年の住宅価格高騰により、無理のない金額では希望の家が買えないケースもあるかもしれません。
これから収入が上がる見込みがある場合には、多少背伸びした金額を借りるのも一つの方法です。不動産はインフレに強い資産でもあるため、将来的に物価が上がった場合には有利に働く可能性もあります。
返済が厳しくなったときは、すぐに相談を!
ところで、もしも住宅ローンの返済が難しくなったらどうすれば良いのでしょうか。一番良くないのは、諦めて住宅ローンを滞納することです。複数回滞納すると、住宅ローンの残金を一括請求される事態になりかねません。そうなる前に、まずは住宅ローンを借りている銀行に相談しましょう。一時的に返済額を減らしたり、返済猶予を受けたり、金利の見直しをしてもらえる可能性もあります。
また、金利上昇が気になる場合は、適用金利の低い他行へ借り換えをするという方法も考えられます。
資産価値が高い住宅=安心材料。でも絶対条件ではない
この記事でも解説してきたように、資産価値が高い住宅を選ぶと、万が一の際に売却しやすく安心です。いざというときに“選択肢を持てる”という意味でも、大きな強みになります。
※資産価値が高い住宅の探し方については、最後のまとめでご紹介しています。
資産価値の高い住宅=都心・駅近…でも手が届かないことも
とはいえ、資産価値が高い住宅は「都心」「人気エリア」「駅近」などで、高すぎて買えないという方も多くなっています。
そんなときは、以下のような工夫で“資産価値が大きく下がりにくい住宅”を選ぶことが現実的な対策となります。
- ● 中古住宅も検討してみる
- ● 探すエリアを広げてみる
- ● 広さまたは築年数の条件を見直す
- ● 戸建てとマンションの両方を比較してみる
必ずしも“資産価値重視”でなくてもOK
一方で、「資産価値が低いのは承知しているけど、それでもこの家が欲しい」という方もいるでしょう。住み替えをする予定がない場合や家に資産としての価値を求めない場合は、永住前提でその家を買うのも良いでしょう。家の購入において重要なのは「自分や家族が満足して住めるかどうか」。他人に「今家を買う人が信じられない」と言われても、日々の生活に納得できるなら、それが一番の正解です。
ただし、リスク対策は忘れずに
永住前提であっても、金利が上がっても問題なくローン返済できるか、災害時に危険性はないかなど、しっかりと事前に確認しておきましょう。立地・ローン・災害への備えなど、「安心して住み続けるためのリスクヘッジ」は自分で整える必要があります。
このように「資産価値が高い住宅」=「正解」ではありません。ご自身のライフプランや価値観に合わせて、納得できる住まい選びをすることが何より大切です。
家を持たないことが、将来のリスクになる可能性も
「5年後10年後には大変なことになる」と言われるのは、今、家を買う人に限った話ではありません。むしろ、将来的に“家を持たない”ことがリスクになるケースもあるのです。
都心部で続く「家賃高騰」の現実
実際、東京都心などの賃貸住宅では、家賃の値上がりが続いています。引っ越したくても「家賃が高すぎて、借りられる家が見つからない…」という声が増えており、ニュースでもたびたび話題になっています。
また、現在住んでいる家の家賃の値上げが通知されるケースも増えてきました。
家賃が上がる主な理由
- ● 物価上昇に伴う、建築費・維持管理費・修繕費などのコスト増
- ● 住宅価格の高騰によって「家を買えない人」が増加 → 賃貸の需要が拡大
今後も家賃は「上昇傾向が続く」と予想されており、「気軽に引っ越せるから賃貸にしたのに、どこも家賃が高すぎて引っ越せない…」といった声が今以上に増えてくるでしょう。いわゆる“家賃地獄”です。
「今は買わない」という判断も、将来の備えが必要
家賃補助があるから大丈夫、という方も将来的なリスクには注意が必要です。実際には、以下のようなことが起こる可能性もあります。
- ● 勤務先の制度変更などで途中で家賃補助が打ち切られる
- ● 購入を先延ばしにしている間に、住宅価格や金利が上がってしまう
詳しくは、こちらの記事でも解説しています。
高齢になるほど、賃貸のハードルも上がる
さらに将来を見据えると、高齢者が賃貸住宅を借りにくくなるという問題も。実際、年齢や健康状態を理由に契約を断られるケースも少なくありません。
つまり、「今は買わなくても5年後10年後には困らない」かもしれませんが、「30年後・40年後には大変なことになっている」可能性もあるのです。住宅価格や家賃がこれ以上に上がる前に、自分に合った購入タイミングを見極めることが、将来的な安心につながります。
5.まとめ
今回の記事では、今家を買う人が信じられないと言われる理由や対策方法を解説しました。
最近は家賃の高騰がよくニュースになっていますが、住まいサーフィン代表の沖有人は、2年以上前から警鐘を鳴らしていました。
ファミリー賃貸は高騰するので、早く買っておいた方がいい(2023年3月)
5年後10年後どうなるのかを正確に予測することは困難ですが、1年後や2年後については、データに基づいてある程度予測することは可能です。住まいサーフィンの無料会員向けサービス「沖レク動画」では、住宅に関する予測や今後起こる問題の対処方法などを解説しています。ぜひご覧ください。
また、以下の記事では、暴落説の真偽や最新の市況についても解説しています。
不動産暴落説の背景や今後の見通し、そして今私たちが取るべき具体的な対策についてわかりやすく解説します。
ところで、住宅価格がこれだけ高いと、なかなか購入に踏み切れないですよね。また、物件価格の高騰以外にも、将来の金利上昇、建築費高騰、人口減少といった不安要素は多くあります。住宅購入で後悔しないためには、やはり情報収集が重要です。
とはいえ、どうすれば良いか分からないという方も多いでしょう。
そんな方におすすめしたいのが、当サイト住まいサーフィン代表の沖有人が過去に出演した動画メディアです。住まい選びの参考になるので、是非ご覧ください。
▼三崎優太(青汁王子) 沖さんは本当にすごい!不動産界のレジェンド
▼田端大学 投資学部 沖さん以外はだいたいダメ!資産を増やす不動産戦略とは
このような動画などで情報収集をしつつ、最終的には資産価値の高いマンション購入を行い、リスクヘッジする事が重要ではないかと考えます。
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