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住宅金融支援機構は、住宅ローンなどを提供する政府系金融機関です。「フラット35」という住宅ローン商品を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。
しかし、住宅金融支援機構と銀行の具体的な違いをご存じの方は少ないと思われます。また、住宅ローンを検討中の方の中には、銀行の固定金利と悩んでいる方もいらっしゃるでしょう。
今回の記事では、住宅金融支援機構の基礎知識と、民間の銀行との違いについて解説します。
目次
1. 住宅金融支援機構とは何か?業務内容を解説
まずは、住宅金融支援機構とはどのような組織なのかご説明します。
住宅金融支援機構とは
住宅金融支援機構の正式名称は「独立行政法人住宅金融支援機構」です。銀行は株式会社ですが、住宅金融支援機構は資本金がすべて日本政府から出資されている独立行政法人になります。平成19年(2007年)までは「住宅金融公庫」という組織でした。
住宅金融支援機構は住生活の向上に貢献するため、住宅金融市場における安定的な資金供給を支援する法人です。
住宅金融支援機構の主な業務内容
住宅金融支援機構と聞くと、住宅ローンのフラット35を想像する方も多いでしょう。フラット35というのは、返済期間中は金利が一定の住宅ローン商品のことです。
しかし、住宅金融支援機構が取り扱う業務はフラット35だけではありません。
例えば地震などの災害で住宅が被災した場合に、住宅を建設・購入・修繕するときの費用を融資してくれます。
他にも高齢者向け住宅ローン「リ・バース60」の融資、銀行の融資した住宅ローンの保険の引き受け、団体信用生命保険業務、住情報の提供など多岐にわたっています。
2. 銀行でフラット35を借りられるのはなぜ?
ここで、「フラット35は住宅金融支援機構の商品なのに、なぜ銀行で取り扱っているの?」と思う方もいらっしゃるでしょう。
その疑問を解決します。
フラット35は銀行が窓口になっている
フラット35は住宅金融支援機構の住宅ローン商品です。しかし、住宅金融支援機構はローンを借りる人へ直接融資をするわけではありません。
住宅金融支援機構の前身「住宅金融公庫」は個人に対する融資をしていましたが、住宅金融支援機構になってからは廃止されました。
現在、フラット35(買取型)はこのような仕組みになっています。
銀行はフラット35の受付をして、顧客に資金を渡します。そして銀行は住宅金融支援機構に住宅ローン債権をそのまま買い取ってもらうという仕組みです。
要するに、銀行はフラット35の販売窓口という役割を担っています。
なお、住宅金融支援機構は買い取った住宅ローン債権を「資産担保証券(MBS)」として投資家に売却しています。
フラット35の金利や手数料は銀行によって違う
住宅ローンを借りるときに気になるのが、「金利」と「住宅ローン手数料」です。実は、同じフラット35でも銀行によって金利も手数料も異なっています。
フラット35の金利は、①MBSを購入した投資家に支払う利息②住宅金融支援機構の運営費③取扱金融機関の手数料の3つで構成されています。
このうち③については金融機関(銀行)が独自に設定しているため、金利に差が出ています。
住宅ローン手数料についても金融機関が独自に決めているので、下記のようにさまざまです。
フラット35手数料の例
- ● 融資額×0.99%
- ● 融資額×1.1%
- ● 融資額×2.2%
- ● 融資額×1.87%
- ● 33,000円
- ● 55,000円
一般的には、金利が高い銀行は手数料を安く設定していることが多くなっています。
3.住宅金融支援機構と銀行の住宅ローンの違い
次に、住宅金融支援機構のフラット35と銀行の住宅ローンはどう違うのか見ていきましょう。
違い①銀行は変動金利や期間選択型固定金利も選べる
フラット35は全期間固定金利の住宅ローン商品です。返済期間中は金利が一定ですが、変動金利などに比べると金利が高いのが特徴となっています。
一方で銀行の住宅ローンには、変動金利や期間選択型固定金利もあります。
期間選択型固定金利というのは、選択した期間中は金利が一定で、期間終了後は変動金利か固定金利どちらかを選ぶタイプです。
さらに、銀行によっては変動金利と固定金利をミックスさせたプランも取り扱っています。
違い②審査の基準と厳しさ
フラット35と銀行の住宅ローンでは、審査の基準が異なります。
銀行の住宅ローンは、年収だけでなく勤続年数や収入の安定性なども審査対象になることがあります。銀行によって審査の基準もさまざまなので、「明確な理由は分からないけど住宅ローン審査に通らなかった」という人もいます。
しかし、フラット35は審査基準が明確です。
フラット35の融資条件
- ① 申込時の年齢が満70歳未満
- ② 日本国籍の方、永住許可を受けている方、特別永住者の方
- ③ 総返済負担率が基準を満たしている方
- ④ 申込本人またはそのご親族が住む住宅の建設・購入資金
- ⑤ 住宅金融支援機構が定めた技術基準に適合する住宅
- ⑥ 住宅の床面積が70㎡以上(マンションは30㎡以上)
③の総返済負担率(年収に占める年間合計返済額の割合)については、この表をご覧ください。
年収400万円未満 | 年収400万円以上 |
---|---|
30%以下 | 35%以下 |
銀行の住宅ローンに比べると、フラット35は審査に通りやすくなっています。
違い③団体信用生命保険の取扱い
フラット35と銀行の住宅ローンでは、団体信用生命保険の取扱いが異なります。
団体信用生命保険(団信)とは、住宅ローンの返済中に債務者(ローンを借りた人)に万が一のことがあった場合、残りの住宅ローンが保険金により弁済される制度です。
銀行は、団信の加入が義務付けられている場合がほとんどです。そのため、団信に加入しないと住宅ローンを利用することができません。
団信は誰でも入れるものではなく、健康上の理由で加入を断られることも。銀行によっては「ワイド団信」という加入条件が緩い団信を取り扱っていることもあります。
一方でフラット35は団信への加入が任意となっています。そのため、団信に加入しなくても住宅ローンを利用することが可能です。
しかし、団信に加入していない場合は、万が一借主が死亡した場合、残りの住宅ローンを相続人が返済する必要があります。
フラット35では、団信に加入しない場合は金利が少し低くなります。
フラット35の金利(2024年7月の最頻金利・融資比率9割以下)
借入期間 | 団信加入の金利 | 団信不加入の金利 |
---|---|---|
15~20年 | 1.25% | 1.45% |
21~35年 | 1.84% | 1.64% |
4.フラット35と銀行の住宅ローン、どちらがいいか?
銀行によっては、フラット35と同じような全期間固定金利の住宅ローン商品も取り扱っています。そこで、フラット35と銀行の住宅ローン(全期間固定金利)の違いを見ていきましょう。
また、フラット35と銀行の住宅ローン、それぞれ向いている人についても解説します。
フラット35と銀行の「全期間固定金利ローン」の違い
フラット35と銀行の「全期間固定金利」住宅ローンの違いを表にまとめると、このようになります。
フラット35 | 銀行の住宅ローン (全期間固定金利) |
|
---|---|---|
住宅ローン手数料 | 申込みする銀行によって異なる | 銀行によって異なる |
団信の加入 | 任意 | 必須 |
団信の特約 | 新3大疾病付き (金利+0.24%) |
銀行によって異なる |
審査の通りやすさ | 通りやすい | 厳しいことがある |
大きな違いは、「団信の加入義務」と「審査の通りやすさ」です。
また、住宅ローンの団信には特約を付けることができます。例えばがんと診断されると住宅ローン残高がゼロになる特約や、長期入院するとその期間の返済が保障される特約などがあります。
フラット35についても、「新3大疾病付き機構団信」というものがあります。3大疾病(がん、急性心筋梗塞、脳卒中)が原因で一定の要件を満たした場合や特定の介護状態になった場合に、住宅ローン残高はゼロになるという内容です。
銀行でもこのような特約を取り扱っています。特に最近はネット銀行を中心に、保障内容が手厚いところも増えています。金利を上乗せしなくてもがん団信や全疾病保障が付いてくる銀行もあります。
銀行の住宅ローンがおすすめの人
このような人は、フラット35よりも銀行の住宅ローンの方がおすすめです。
- ● 変動金利や期間選択型固定金利の住宅ローンを選びたい人
- ● お得な団信を希望する人
フラット35は、全期間固定金利の住宅ローンになります。全期間固定金利は、変動金利や期間選択型固定金利に比べると金利が高いです。今は特に変動金利が超低金利なので、全期間固定金利を選ぶことで結果的に損をする可能性があります。何より、月々の返済額が高くなってしまいます。
全期間固定金利以外を選びたい人は、必然的に銀行などの金融機関から住宅ローンを借りることになるでしょう。
また、フラット35には「新3大疾病付き機構団信」という特約付きの団信がありますが、金利を0.24%上乗せしなければなりません。
しかし一部の銀行では、金利を上乗せしなくても手厚い保障を受けられることがあります。特に20~30代で住宅ローンを借りる人にとっては、そのメリットは大きいと言えるでしょう。
例えば住信SBIネット銀行は、金利上乗せなしでも保障内容が手厚いです。
なお、フラット35の中には「保証型」というものもあります。取り扱っているところは少ないですが(新規受付中の金融機関は8機関)、保証型であればその銀行独自の団信に加入可能です。
フラット35がおすすめの人
このような人は、フラット35の方がおすすめです。
- ● 自営業の人や転職したばかりの人
- ● 健康状態の関係で、団信に入れない人
フラット35は年収をベースに審査をするため、一定額以上の収入があることを証明できれば融資を受けられます。自営業のため収入が不安定な人や転職したばかりの人など、銀行の住宅ローン審査に通ることが厳しい場合にはフラット35を検討しましょう。
銀行の住宅ローンは団信の加入が条件ですが、過去5年以内や現在進行形で大きな病気などをしている場合には団信に加入できないことがあります。しかしフラット35は団信の加入が任意なので、健康状態に問題があってもローンを組むことが可能です。
ただし、その場合は計画的な貯蓄や加入できる別の保険を探すなどの対策をするようにしましょう。
フラット35については、こちらの記事で詳しく解説しています。フラット35の借入金利を下げる方法なども解説しているので、是非ご覧ください。
長期固定住宅ローン金利「フラット35」をお得に借りる方法は?メリット・デメリットも解説!
フラット35のメリット・デメリットやお得な金利で借りる方法、おすすめの金融機関を解説します。
5.まとめ
今回の記事では、住宅金融支援機構の基礎知識と、銀行との違いについて解説しました。
住宅金融支援機構のフラット35は全期間固定金利の住宅ローンです。人によっては、変動金利と悩んでいるという方もいらっしゃるでしょう。
その場合は、こちらの記事も参考にしてみてください。メリットとデメリットを比較検討し、自分に合った住宅ローン商品を選択することが重要です。
変動金利と固定金利、どっちがいい?最新の住宅ローン金利推移についても解説!
変動金利と固定金利のそれぞれのメリットや向いている人、相場について解説します。
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