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住まいサーフィン編集部

[第138号]二世帯住宅と家族の本音:建築士が語る住まいづくり特集

2017年01月03日

二世帯住宅は一定の周期で話題に登場します。景気が悪くなったり、逆に景気がよく土地の価格が高騰したり、最近は震災で「きずな」の大切さが再認識されたことにより、二世帯住宅が見直されました。しかし、その背景に二世帯住宅の本音が見え隠れしているように思います。

二世帯住宅は将来のことまでよく考えてベストな着地点を探しましょう

将来どんな問題が発生するか、世代が変わったらどうなるかまでをきちんと考えましょう。

二世帯住宅の種類から探る二世帯と家族のあり方

下記の図は戸建て住宅ですが、マンションの場合でも親が子供の住宅購入を支援しているケースは、戸建ての二世帯住宅に類似する要素があります。
私の住むマンションでも2住戸所有しているケースはかなりあります。ほとんどは親が2住戸分を所有しているようです。

・分離型
住戸の境の壁や床は定められた耐火・遮音性能を有する必要があります。それぞれ独立した住戸として認められ、区分登記やそれぞれ別個にローンが借りられます。理論的には別々に売却もできますが、ニーズはほとんど無いかも知れません。

・家族型
玄関やキッチン、水周りが原則共用のタイプです。ミニキッチンのように簡易な設備を備えているものも含みます。二世帯というより多世代住宅といってよいでしょう。

・複合型
住まいとしてそれぞれ独立した機能はあるものの、客間や玄関などを共用とするケースです。思いは様々です。完全に分離型にする敷地の余裕が無いケースや、逆に家族型でよいが生活時間帯が違ったり、夜勤の勤務があったりして、ある程度分離せざるを得ないケースなど様々あります。
二世帯住宅の種類
©佐藤章子

二世帯住宅には、こんな問題が!

子供の独立・結婚・子供の誕生・相続の発生等、将来の家族構成の変化への対応はどうする?
転勤などで長期的に住まなくなった場合等の対応は?
親、または両親ともが介護が必要になった時は?
親、または両親ともが施設に入居する時は?
相続が発生した場合は誰が相続?片親が死亡した場合は?両親とも死亡した場合は?

♦将来どんな問題が発生するかを考える

最初に考えるポイントは?

なぜ二世帯にするのか
二世帯で実現したい生活とはどのようなものか
プライバシーと交流の度合いやあり方のイメージを話し合っておく
相手の世帯に期待することはなにか
相手が期待していることはなにかを想像する
年をとったり、自立できなくなったりしたらどうするか
相続が発生した時、住まいはどのように変化するか

♦暮らしのあり方は世代が代わる先まで考える

子供や孫と一緒で楽しいし、なにかと安心で、万一日常生活が不自由になっても支援が得られ、介護が期待できる…が親世帯の心情ではないかと思います。二世帯住宅取得の資金の多くを親が出しているのであれば、期待も当然かも知れません。
一方子供世帯は、親と同じことを考えているかどうかは疑問です。介護も想定に入れて考えているかも知れませんし、ただで土地を利用できる点を最大のメリットと考えているかも知れません。
考えが違うのは仕方がありません。間取りを考えていくうちに、自分たちのベストの着地点を見出せれば有意義な二世帯住宅となると思います。

Author:佐藤 章子 先生 (一級建築士・CFP・一級FP技能士)


写真提供:佐藤章子

一級建築士として、大手ゼネコンや住宅メーカーで設計・商品開発・不動産活用などに従事し、2001年に独立。2002年に『住まいと暮らしのコンサルタント事務所』ハウステージを設立。
「健全な住まいづくりは、健全な生涯設計に宿る…」をモットーに、ファイナンシャルプランニングと建築のハード面の双方から、住まい作りや暮らしを総合的にアドバイスしています。