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最近は、日本の住宅市場においても「省エネ住宅」であることが重視されています。
2025年4月には、新築住宅の省エネ基準適合が義務化。省エネ基準適合の要件の一つは断熱性能です。断熱等級4以上である必要がありますが、断熱等級4の家で暮らすとどうなるのでしょうか?
今回の記事では、断熱等級4の家のメリットや快適性を解説します。
目次
1. 断熱等級(断熱等性能等級)とは
そもそも、断熱等級とはどういうものなのでしょうか。
断熱等級は、住宅の断熱性能を評価するための基準になります。正式名称は「断熱等性能等級」で、「住宅性能表示制度」に規定される評価基準です。
現在、断熱等級は1から7までの7段階に分かれていて、数字が大きいほど断熱性能は高いことを意味します。
「住宅性能表示制度」についても簡単にご説明します。
住宅性能表示制度とは、国が定めた基準に基づいて住宅の性能を専門家が評価し、その結果を表示する制度です。各項目の性能が等級や数値で表示されるので、住宅性能がわかりやすく見える化されます。
この制度は、消費者が良質な住宅を安心して取得できるようにするための法律である「住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)」に基づいています。
断熱等級4は真ん中の水準
断熱等級は等級1から7まで分かれています。断熱等級4はほぼ真ん中なので、「耐熱等級4だと断熱性能が不十分ではないか?」とイメージされる方も多いでしょう。
しかし、そういうわけではありません。実は、2022年3月までは断熱等級4が最高等級でした。2022年というと、かなり最近のことですよね。
2022年4月に断熱等級5が創設され、その後断熱等級6~7も創設されました。そう考えると、断熱等級4は決して断熱性能が低いわけではないのです。
ただ、将来的には「断熱性能4の家だと、断熱性能は高くない」と思う方が増えてくるかもしれません。なぜかというと、2025年からは断熱性能4以上であることが義務化されるからです。
2025年から省エネ基準適合が義務化!断熱等級4が最低限の基準になる
建築物省エネ法が改正され、2025年4月以降はすべての新築住宅に省エネ基準適合が義務化されます。
省エネ基準適合と認められるためには、以下2つが両方とも基準を満たさなければなりません。
- ● 一次エネルギー消費量→等級4以上
- ● 外皮性能(断熱性能)→等級4以上
一次エネルギー消費量とは住宅で使用するエネルギーの総量のことです。具体的には冷暖房・換気・照明・給湯で使われるエネルギーを指しています。
エネルギー消費量を多く削減できるほど(つまり設備などが省エネであるほど)、一次エネルギー消費量の等級は高くなります。
そしてもう一つの外皮性能とは、ずばり断熱性能のことです。2025年4月以降は断熱等級4以上でないと住宅を建てられません。
省エネ基準適合の義務化についてさらに詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
2025年省エネ基準適合が義務化!マンションや戸建への影響とは!?
省エネ基準適合が義務化される理由やメリット・デメリットについて解説します。
2. 断熱性能が高いと、どんなメリットがあるのか?
つづいて、「断熱性能が高い家」とは具体的にどういうことなのか、そしてどんなメリットがあるのかご説明します。
断熱性能が高いことの意味
断熱等級は1~7までありますが、何を基準にして等級は決まるのでしょうか。
それは、UA値(外皮平均熱貫流率)とηAC値(冷房期の平均日射熱取得率)です。
画像出典:国土交通省資料「省エネ基準の概要」
UA値は熱の出入りのしやすさを表すもので、数値が低いほど熱が出入りしにくくなります。
ηAC値は冷房期の太陽日射の室内への入りやすさのことで、数値が低いほど日射は入りにくいです。太陽日射が入りにくいと、冷房の効きが良くなります。
それぞれの等級で求められるUA値とηAC値は、地域によって異なります。なぜかというと、日本は地域によって気温に差があるからです。
ηAC値は温暖な地域では基準が設定されていますが、北海道や東北など一部の地域では設定されていません。逆にそういった寒冷地は、UA値の基準が厳しめになっています。
UA値の具体的な数値は、こちらの記事で解説しています。
UA値で断熱性能を知ろう!基準値や高断熱住宅のメリットについて解説。
UA値の内容や基準値、高断熱住宅のメリットについて解説します。
断熱性能が高い家のメリット
断熱性能が高い家とは、外部の気温変化の影響を受けにくく、建物内部の温度を安定して保つ能力が高いということです。
断熱性能が高い家=冬に暖かいというイメージが強いと思いますが、快適なのは冬だけではありません。夏は外の暑さを遮断し、室内の涼しさを保ちます。これにより、エアコンの使用頻度が減少し、エネルギーコストの削減や節約にもつながります。
住宅内の温度差も少なくなるため、健康面でもメリットがあります。冬場はヒートショック、夏場は熱中症になるリスクが低くなるからです。花粉症・喘息・アトピーなどの症状が軽減されるという研究結果も出ています。
また、断熱性能が高い家は、「光熱費の節約」以外にも金銭面のメリットを享受できることがあります。
例えば住宅ローン控除は、「省エネ基準適合住宅(断熱等級4以上)」以上の住宅性能であることが条件の一つです。住宅ローン控除は年間の最大控除額が決まっていますが、住宅性能が高いほど控除額は大きくなっています。
新築住宅の借入限度額(上限額)
住宅の種類(性能) | 2022年・2023年入居の 場合の限度額 |
2024年・2025年入居の 場合の限度額 |
減税期間 |
---|---|---|---|
長期優良住宅・低炭素住宅 | 5,000万円 | 4,500万円※1 | 13年間 |
ZEH水準省エネ住宅 | 4,500万円 | 3,500万円※1 | 13年間 |
省エネ基準適合住宅 | 4,000万円 | 3,000万円※1 | 13年間 |
その他の住宅 | 3,000万円 | 0円 (2023年中の建築確認で 2,000万円) |
13年間 または 10年間※2 |
※1 子育て世帯と若者夫婦世帯は、2024年入居の限度額は2022~2023年入居と同様になる
※2 その他の住宅は、2024年と2025年の入居だと10年間になる
なお、ZEH水準省エネ住宅以上の住宅性能の場合は、断熱等級5以上である必要があります。
メリットをまとめると、このようになります。
高断熱住宅の主なメリット
- ● 冬は暖かく、夏は涼しくて家の中が年中快適
- ● 光熱費が削減される
- ● ヒートショックや熱中症のリスクが低くなる
- ● 補助金や税金の控除を受けられることがある
3.断熱等級4の家はどれくらい快適なのか
最後に、断熱等級4の家はどれくらい快適なのか見ていきましょう。
断熱等級が低い家と断熱等級4の家の違い
国土交通省の資料によると、断熱等級4の家では「暖房負荷の低減」「体感温度の改善」「部屋間の温度ムラの改善」の効果がしっかり表れたようです。
なお、今回引用した資料画像では、※1は昭和55年省エネルギー基準相当以下(断熱等級2以下)、※2は平成28年省エネルギー基準相当(断熱等級4、一次エネルギー消費量等級4)を示しています。
暖房負荷については、逃げていく熱エネルギーが半分以下になりました。
画像出典:国土交通省資料
また、冬場(外気温0℃)においては、体感温度が4度以上違うという結果になっています。
画像出典:国土交通省資料
ヒートショックの原因にもなる温度ムラについても、温度差は2℃になっています。
画像出典:国土交通省資料
このように、断熱等級4の家なら断熱性が保たれるので、快適かつ健康に過ごすことができます。
参考:国土交通省 省エネ技術解説テキスト
https://www.mlit.go.jp/common/001627105.pdf
断熱等級4のマンションに住み替えた人へのインタビュー
最後に、断熱等級4のマンションに住み替えをした住まいサーフィン編集部員にインタビューをしてみました。
断熱等級4の家は本当に断熱効果が実感できるのか、現状に満足しているのかなど率直な意見を聞いていますので、是非参考にしてみてください。
- インタビューをした住まいサーフィン編集部員
- ● 賃貸マンション(断熱等級3)から分譲マンション(断熱等級4)に住み替え
- ● 神奈川県在住、同一エリア内での住み替え
住み替えをしてみて、断熱性の違いは実感できましたか?

はい、確かに前に住んでいたマンションとは(断熱性能が)違うなと思っています。
住んでいる場所はほとんど変わらなくて、以前住んでいたマンションから徒歩10分の場所に引っ越しをしました。引っ越した季節は春で、暖房は必要ないような時期でした。だから転居直後は特に何も気にせず生活してたんですが、ある日の朝、天気予報で「今日は冬に戻ったような気温です」と言っていたことがあって。前日の最高気温より10℃以上低かったみたいなんですが、家の中は全く寒くなかったんです。家族と一緒に「本当に今日って寒いの?」と言いながら窓を開けたら、思った以上に寒くてびっくりしたのを覚えています。
寒い日でも室温はいつも通りだったのですか?

いつもよりは少し肌寒かったと思いますが、その日は暖房も付けなかったですし、室内にいるときの服装もいつも通りでした。
初冬や初夏は断熱性の高さを実感しやすいです。うちは家族が暑がりなので、前の住まいでは6月上旬ぐらいからエアコンを使っていました。年によっては5月から使ってたこともあります。
でも引っ越しをしてからは6月にあまり使わなくなったので、家は広くなったのに電気代は前よりも安くなっています。
エアコンの使用量はどれぐらい減りましたか?また、エアコンの効き具合はどうですか?

年間の使用量は減ったと思います。ただ、さすがに外の気温が30℃を超えてくると室内も暑くなりますね。本格的に暑くなったらずっとエアコンを付けている感じです。
エアコンは効きやすくなった気がしますが、引っ越した時にエアコン本体も高性能な製品に変えたので、それも関係あるのかもしれません。冬場も同じ感じで、本格的に寒くなったら床暖房を使っています。断熱等級5以上だったら、もっとエアコンや床暖房の使用量は減ったのかもしれません。
断熱に関して、何か不満に思ってることなどはありますか?

断熱等級とは直接関係ないことですが、24時間換気システムの周辺が、夏は熱気がすごいし冬はそこから冷気が入ってきます。でも閉めるとシックハウス症候群になるかもしれないので、仕方なく開けている状態です。第一種熱交換換気システムのマンションが良かったです。
マンションを選ぶときには換気システムも断熱等級も気にしていなかったのですが、次はしっかりチェックしたいと思います。
第一種熱交換換気についてはこちら
換気の重要性や基礎知識、第一種熱交換換気のメリット・デメリットについて解説します。/p>
インタビューによると、断熱性能4の住宅なら初夏や初冬でも冷暖房なしで生活できたということでした※。
※気温や感じ方などによって個人差があります。
ただ、本格的に暑い時期や寒い時期には冷暖房器具は必須のようです。より快適で健康な住まいに住みたいという方は、断熱等級5以上の住宅も検討してみましょう。
断熱等級5の住宅については、こちらの記事をご覧ください。
4.まとめ
今回の記事では、断熱性能が高い家のメリットや断熱等級4の家の快適さについて解説しました。
世界的にも省エネやカーボンニュートラルが重視されていますが、日本の住宅市場においても今後重要になるのが省エネ性能の高い住宅です。
また、新築住宅だけでなく、中古住宅でもリフォームをすることで断熱性能を上げることができます。国や自治体もさまざまな補助金制度で、省エネ住宅をバックアップしています。制度が充実している今こそ、断熱リフォームをするチャンスと言えるでしょう。
ところで、2025年4月から、すべての新築住宅に省エネ基準適合が義務化されます。一定以上の省エネ性能は保障される一方で、価格が心配という方も多いのではないでしょうか。住宅価格の高騰は今後も続く見通しです。
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