新生児の数が70万人を割った、そんなニュースの記憶がまだ鮮明なうちに、ある団体のプレスリリースで認知症患者が2025年に700万人を超えるという文章を見た。新生児一人に対し認知症患者が十人。2025年に700万人を超えるという記事のソースは2020年の金融庁のWEBサイトらしく、いささか古いものではあるが、改めて超高齢社会であることを感じ、また、社会全体の資産管理の在り方が今後大きく変化していくように思えた。
資産管理の中でも、とりわけ影響が大きいのが「不動産」であろう。認知症になると、本人の意思確認が困難になり、たとえ売却や賃貸のニーズがあっても手続きを進めることができなくなる。これによって、相続前の不動産が「凍結資産」と化し、活用も売却もできない状況が全国で急速に広がっていく未来が見える。
こうした背景から、今後の日本では「管理できる不動産」「相続しやすい不動産」「手離れのよい不動産」への評価が高まっていくことは想像に難くない。実際に田畑や山林、「田舎不動産」や「オールドニュータウン一戸建て」などの多くが負動産予備軍となっている。そこで改めて注目されるのが、分譲マンションの存在だ。特に都市部のマンションは、次の3つの点で今後の資産として極めて優位性が高い。
1.資産管理の手間が圧倒的に少ない
マンションは管理組合が建物の維持管理や修繕、共有部分の管理を担う。認知症や高齢化が進行する中、自らメンテナンスや隣人対応を行う必要がある一戸建てに比べ、将来の手間やトラブルのリスクが小さい。家族が代わりに対応しやすい点でも安心感がある。
2.流通市場が整備され、相続後も売却しやすい
分譲マンションは、立地や管理状況に応じた一定の価格評価が市場に存在しており、売却もしやすい。一戸建ては築年数や立地条件、建物の状態により価格に大きなばらつきが出やすく、相続人が「売れない」「価値がわからない」と悩むケースも少なくない。対してマンションは価格帯が読みやすく、買主の目も付きやすい。
3.家族信託等の施策と相性が良い
例えば家族信託を活用して資産を次世代に委託する場合、マンションのように運用・管理が標準化されている不動産は非常に扱いやすい。定期的な収益を生む賃貸に回すもよし、住み替え資金として売却するもよし。築浅で管理状態が良ければ、処分も比較的スムーズに行える。
今後の日本では、高齢者の資産凍結リスクがより顕在化する。「一生住む」ことよりも「いざというときに選択肢がある」ことのほうが、より大きな安心を生むのかもしれない。「売れるときに買っておく」「判断能力があるうちに整えておく」という考え方が主流になっていくはずだ。こうした中で、分譲マンションは、「住まい」としての快適性だけでなく、「将来、家族が困らない資産」としての優位性がますます際立つだろう。