田中和彦が斬る!関西マンション事情 不定期
田中 和彦

[第239号]“水が出るのが当たり前”ではいられない時代~水道インフラの見えないリスク

2025年05月14日

 都心での上水道の破損。京都市内で起きたかと思っていたら大阪市内でも発生した。ニュースの映像を見たところ京都の事故よりも大阪の方が被害が大きそうであった。グラウンドが水浸しとなり道路が冠水する姿にはゾッとした。

 高度経済成長期に敷設されたインフラは、その後更新されていなければおよそ50~60年程度経っており、今後はこのような事件が頻発してもおかしくない。というよりも相当高い確率で起きると考えておいた方が良い。

 洪水や土砂災害であればハザードマップ等で住宅購入前に確認することも叶うが、上水道や下水道のインフラは敷設時期までは調べてもその危険度(安全度?)までは調べることができない。せいぜい断水時の影響や対処法を考えておく程度であろう。

 ところで、マンションの給水方法には複数の種類があるのはご存知であろうか。大きく分けると2種類ある。水道水を上水道から直接給水する直結給水方式と、受水槽に貯留して給水する貯水槽方式だ。ちなみにさらにそれぞれを2種類に分けることができる。直結方式であっても、上水道の水圧そのままでは高層階に送れないため水圧をポンプで増圧する直結増圧給水方式がある。同じように受水槽方式についても、通常の受水槽方式が下階の貯水槽から上階に送るのに対して、屋上に水槽を設置してそこから水を落下させる高架水槽方式がある。

 今回のような上水道の破損で断水となった場合、直結給水方式であれば即断水となるが、受水槽方式であれば受水槽に水がある間は水道の利用が可能だ。

 これは停電時も同じ。受水槽方式では一定期間給水が可能であるのに対し、直結の場合は、行政区や場所にもよるが、多くの中高層マンションではポンプで増圧されているため断水となる。

 しかし、直結であっても非常用電源が整備されておりポンプが動く、すなわち給水可能な場合もあれば、受水槽であっても何がしかの電気系統を利用する装置であれば、断水となる。

 蛇口を捻れば水が出るのは当たり前だが、それは水道インフラがしっかりと整備されているからこそ。上水道の破損はもとより、停電や地震等でインフラが機能しなくなることもある。

 これをきっかけに、皆さんがお住まいの住宅の水道インフラを確認してみてはいかがだろうか?

 

この記事の編集者

田中 和彦

株式会社コミュニティ・ラボ代表。マンションデベロッパー勤務等を経て現職。
ネットサイトの「All About」で「住みやすい街選び(関西)」ガイドも担当し、関西の街の魅力発信に定評がある。

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