田中和彦が斬る!関西マンション事情 不定期
田中 和彦

[第237号]株価の下落と不動産

2025年04月10日

 株価が暴落している。

 この記事を書いている4月9日時点では32,000円前後。4月7日には一時期31,000円を割り、2023年10月以来の安値となった。数年前のオルカン※ブーム等で新たに株式投資を始めた人の中には、今回の下落で損失だけではなく投資全般について相当な不安を感じているであろう。不動産投資と違い保有資産の価値下落を数字で見せつけられる株式投資は心理的なストレスが大きい。
※「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」の略称。全世界の株式に分散投資できる投資信託。

 株価が下がれば不動産価格も下がるかといえば、一概にそうとはいえない。景気後退や金融引き締め等の要因が重なると株価・不動産価格ともに下落することもあるが、一方で株式市場が不安定なときは実物資産である不動産の方が信用できるという考えの人もいる。

 株と不動産の最大の違いはゼロになるかどうか。自然災害等でゼロになることもあり得るが、一般的には建物が老朽化しても土地という資産が残る不動産は、企業実績や企業存続に依存する株式に比べ「溶ける」ことはない。また不動産は、景気や金利が原因で賃料収入がゼロになることはなく暴落リスクが低い資産である。

 また、日本の構造的な背景も見逃せない。資源に乏しく、かつ労働力人口が減少し続ける日本において、今後はインフレ方向に進むと見るのが自然である。インフレとは、貨幣の価値が下がる現象であり、それはすなわち、実物資産の価値が相対的に上がるということを意味する。つまり、不動産のような現物資産はインフレ下において価値を維持・向上させやすい。

 このように考えると、不動産は今後も底堅い価値を保ちやすい資産と位置づけられる。もちろん全ての物件に当てはまるわけではない。むしろエリアは都心に限られるであろう。都心で需給バランスが取れているエリアでは、価格が下がりにくい傾向は今後も続くと考えられる。

 仮に今後も株価下落により市場全体の購買マインドが冷え込めば、「買い手にとってのチャンス」となる。一時の動揺に流されることなく、長期的視野で資産の構成を見直し、自らのポジションを再確認しておくべき時期といえよう。

 

この記事の編集者

田中 和彦

株式会社コミュニティ・ラボ代表。マンションデベロッパー勤務等を経て現職。
ネットサイトの「All About」で「住みやすい街選び(関西)」ガイドも担当し、関西の街の魅力発信に定評がある。

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