田中和彦が斬る!関西マンション事情 不定期
田中 和彦

[第235号]気になる郊外マンションのヒートアップ 〜全国新築分譲マンション市場動向を受けて〜

2025年03月13日

 先月末(2025年2月26日)、不動産経済研究所より2024年の全国新築分譲マンション市場動向が発表された。

 発売戸数は前年比8.6%減の6万戸割。近畿圏・東海中京圏は微減であったが、首都圏の14.4%減が大きく足を引っ張った。一方、価格は前年比2.9%増で初の6,000万超え。東京23区は2年連続の1億超えで、埼玉県千葉県が大幅な上昇(埼玉県 前年比13.8%増 5,542万円、千葉県 前年比18.9%増 5,689万円)を見せたため、一都三県で5,000万円超え。近畿圏も前年比14.8%増で5,357万と5,000万円の大台を超えた。

 大きな括りではこのような結果となったが、市外地中心部に限れば大幅な価格上昇を感じている人も多いであろう。筆者の住む京都では、坪単価が50万、100万単位で切り上がっていった感覚がある。現在分譲中のマンションも、高値で販売不調なものがある一方、次期以降に価格を上げる予定のものもある。

 かつての分譲マンション販売は、完成在庫を作らないために竣工完売を目指した。完成残戸がでたら値引き販売するのが常だった。しかし最近は、土地価格の上昇、建築費の上昇で後から出てくる物件の方が価格が高く、当初は高値であった物件が時間が経つにつれて割安になってくる事例が多い。

 さて、このような状況は今後どうなっていくのか。おそらくは、この価格上昇についていけるようなエリアは後数年価格上昇となるであろうが、価格上昇に顧客がついていけないエリアについては分譲マンションの供給自体が難しくなっていくと予想される。

 実際に賃貸アパート市場でも、郊外エリアで「建築費と賃料のバランスが取れない(=建築しても賃料で建築費の支払いが確保できない)」から、と賃貸アパートの建築を見合わす事例が見られる。

 バブル期は都心で住宅が買えないために、どんどん郊外へと住宅開発がスプロールしていった。当時のマンションやニュータウンの物件で、今では流通がままならないものは数多くある。埼玉、千葉、滋賀、和歌山等の郊外エリアの価格上昇が激しいが、バブル期のように顧客が“イケイケドンドン”だった時代と違い、今は景気に不透明感があり、当時のように遠方物件には顧客はついてこないであろうし、デベロッパーも同じ轍は踏まないだろう。先月のコラム([第233号]建築費高騰が進めば郊外のマンション市場は成り立たない)でも書いたが、今後は都心部・中心部のマンションを検討する方が無難である。

 

この記事の編集者

田中 和彦

株式会社コミュニティ・ラボ代表。マンションデベロッパー勤務等を経て現職。
ネットサイトの「All About」で「住みやすい街選び(関西)」ガイドも担当し、関西の街の魅力発信に定評がある。

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