田中和彦が斬る!関西マンション事情 不定期
田中 和彦

[第213号]大津市内で相次ぐ大規模物件供給

2024年04月10日

 「今、旬なマンションランキング」、滋賀エリア/200戸以上の1位の「シエリアシティ大津におの浜」が3月末に竣工した。「シエリアシティ大津におの浜」は西武大津ショッピングセンター跡に建築された総戸数708戸の大型マンション。関係者曰く、売れ行きは順調だとのこと。

 京都市内中心部のマンション価格が高騰し、ファミリー層には手の届かない価格帯に突入。マンション購入者が周辺行政区へと転出する流れが近年続いている。「シエリアシティ大津におの浜」が、周辺人口に比べて明らかに「供給過剰」(物件を中心にした等距離圏内の半分近くが湖、すなわち人が住んでいない!)にも関わらず着実に売れているのも、京都市内の分譲価格高騰の恩恵を受けたといえよう。

 ところで、京都市内で人気の高いエリアといえば京都御苑の南側「御所南エリア」、阪急京都線「烏丸」駅を中心とした「田の字エリア」、それ以外にも平安神宮に近い「岡崎エリア」などがあるが、阪急京都線が利用しやすい場所を除くと大阪方面への移動はあまり便利ではない。大阪通勤圏、もしくは京都勤務であっても転勤の可能性が高いサラリーマン層が京都市内人気エリアに居を構えることは、転勤により通勤困難になることが考えられる。となると京都、大阪、神戸を乗り換えなしの一本で繋ぐJR東海道線の方が選択肢としては無難。大阪通勤することを考えれば、御所南や岡崎は距離こそ近いものの、公共交通機関を利用した場合の所要時間は大津や草津とさして変わらない。交通利便性の高さや価格の安さを考えると、大津や草津等、JR東海道線沿線の滋賀県内で住宅を手当するのが理にかなっている。

 最近、この「シエリアシティ大津におの浜」を超える大規模マンション計画がニュースとなった。「シエリアシティ大津におの浜」は西武大津ショッピングセンター跡だが、今度は同じ大規模商業施設であるイオンスタイル大津京跡。工事施工者の長谷工コーポレーションによると、敷地南側のイオン店舗の跡地、北側の立体駐車場跡地にそれぞれ627戸・362戸を予定しているとのこと。2棟合わせて約1,000戸の大規模開発だ。人口約34万人の大津市だけでは捌ける戸数ではない。京都市民の購入を見込んでの供給であることは間違いない。

 しかし京都市内から集客するにあたり、イオンスタイル大津京跡マンションと「シエリアシティ大津におの浜」とは大きな違いがある。どちらも滋賀県大津市内のJR沿線マンションだが、イオンスタイル大津京跡のマンションはJR東海道線と違ってJR湖西線沿線というビハインドがある。JR湖西線はJR東海道線と比べて京都・大阪方面への電車の本数は半分程度。終電も早い。交通利便性では大きな差がある。それでも「京都市内と比べて安い」という理由で京都市内から子育て層が流出するのは間違いない。「子育て層を京都市内に」という行政の目論見は大変厳しい。

 

この記事の編集者

田中 和彦

株式会社コミュニティ・ラボ代表。マンションデベロッパー勤務等を経て現職。
ネットサイトの「All About」で「住みやすい街選び(関西)」ガイドも担当し、関西の街の魅力発信に定評がある。

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