田中和彦が斬る!関西マンション事情 不定期
田中 和彦

[第171号]祇園祭の際は何かと不便だがステータスあり~山鉾のある「山鉾町」

2022年07月14日

今年は祇園祭の山鉾巡行が行われる。コロナ禍で2年連続中止となっていた行事が3年ぶりに実施され、この原稿を書いている今も京都の街は多くの観光客で賑わっている。

山鉾巡行は、2014年から前祭(7月17日)と後祭(7月24日)の2回に分けて行われている。同日の午前中は四条烏丸~四条河原町~河原町御池~烏丸御池が通行止めとなる。山鉾巡行の当日は、周辺の移動が自動車だけでなく、自転車でも徒歩でも困難になる。

が、近隣の移動交通が難しくなるのは山鉾巡行当日だけではない。前祭では7月10日、後祭は7月18日から山建て・鉾建てが行われる。わかりやすく言えば山鉾が道路上で組み立てられる。実は山鉾巡行よりもこの山建て・鉾建ての方が日常生活に支障をきたす。

なにせ公道の真ん中に山鉾がドンと座るわけだ。車の往来ができない。もちろん一般車は通行禁止。当該エリアに駐車している車は、出入りが禁止されておらずとも、日中は山鉾をカメラに収めようと現地を訪れる観光客がごった返すため、現実的に出し入れが困難。この時期は別の場所に駐車場を借りたり、もしくは車の出し入れを諦めたりと「駐車場難民」「自動車難民」となる。

四条烏丸の西側エリアを中心にそんな不便が1週間~2週間と続くわけだが、ではそれが「ネガティブ要因」として評価され不動産価格にとってマイナスになるかというと全くそんなことはない。むしろ町内から山や鉾を出す町は「山鉾町」と呼ばれ特別なステイタスを持つ。

正直いうと、地元の人間が「鉾町だから住もう」となるわけではないが、地元ではない人、とりわけセカンドハウス需要層にとって「山鉾町」であることはステイタスとなる。実際に鉾町の分譲マンションは新築販売時にチラシにそう謳われていることが多い。

「花火が見える」ことが「売り」とされるような場合がよくあるが花火が見えるのは一晩の話。それに引き換え「鉾町」であることの優越感は祇園祭の間、7月一杯ずっと続く。山鉾の数は前祭23、後祭11の合計34町。残念ながら今新築での販売はない(はず)。京都の市街地中心部で分譲マンションを探す際には、「山鉾町か否か?」で一度見てほしい。購入が難しければ賃貸マンションもアリだ。マンション内に山鉾が格納されているマンションもある。正しい楽しみ方ではないかもしれないが、祇園祭のちょっと変わった楽しみ方ではなかろうか。

この記事の編集者

田中 和彦

株式会社コミュニティ・ラボ代表。マンションデベロッパー勤務等を経て現職。
ネットサイトの「All About」で「住みやすい街選び(関西)」ガイドも担当し、関西の街の魅力発信に定評がある。

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