筆者は京都に住んでいるが6月末、わざわざ用事を作って大阪に行った。見に行ったのは、例の西成区で起きた住宅崩落事故の現場だ。
何が驚いたといって、それが大阪市内のど真ん中で起こったことだ。山間部の村落や郊外のニュータウンなら台風、大雨、地震等の自然災害が原因となった事故が発生することも珍しくはないが、大都市の市街地で擁壁が崩れてその上の住宅が落ちるなんて聞いたことがない。私もそれをこの目で確かめたく現場に足を運んだ。ニュースで動画を見た人ならおわかりいただけるだろう。事故が起きたことはもとより、このような擁壁が大阪市内にあること自体に驚いた人もいると思う。
この事故現場、擁壁下で老人ホームの建築工事が進められていて、どうやら「人災」の可能性もありそうだ。工事に際して地域住民からは擁壁に対する対策を講じてほしいと要望が出ていたらしい。今となっては後の祭りだが、怪我人等が出なかったのが不幸中の幸いだ。
西成の事故から日をおかず、熱海で土石流の事故が起きた。こちらは豪雨に伴っての災害……、と思ったらやはりこちらも人災の疑いが持たれている。土石流の端緒部には大量の盛り土があり、これが原因ではないかという見方が多い。筆者もニュースやTwitterで盛り土前と盛り土後、崩落後の航空写真を見たが、確かに「粗い盛り土」であった事は見て取れる。
梅雨時期に起きた二つの事故。かたや擁壁、かたや盛り土とどちらも人工構造物が絡んだ事故だ。ということは、多少(特に熱海については)結果論だが、事前に予見できたとも言える。さて、これらの事故を踏まえてどんな点に気をつければいいか?簡単にポイントを上げたい。
1、周辺の地盤は軟弱ではないか?
かつて池や川だった土地は、気をつけた方が良い。売買の際には売主や仲介業者に聞けば教えてもらえるはずだ。しかし、国土地理院のページ(*)を見れば自分でも簡単にわかるので「他人任せ」にせず自分でしっかりと調べたい。
2、周辺の土地よりも低くなっていないか?
都市部では熱海のような土石流が起きることはそうそう無いだろうが、ゲリラ豪雨などがその土地の排水可能な降雨量を超え、建物が浸水することは少なくない。これを内水氾濫という。このような被害に遭う土地は「標高が低い土地」ではなく「周囲よりも相対的に低い土地」。坂の下、すり鉢状になった地形の下の土地は十分な注意が必要だ。
3、過去に災害は起きていないか?
ハザードマップは「将来の予測」。これはこれで大切だが、「ハザードマップを気にしていたら買えない」という人もいる。どのような災害からも「真っ白」なエリアはそれほど多くない。そういう場合は過去に災害がその場所で起きたかどうかを確認するのが良い。役所内でハザードマップを管轄する部署なら関係者に対して過去事例を開示してくれる可能性は高い。
感覚的な話となるが筆者の過去経験では、阪神淡路大震災の時を除いて、台風や大雨等で被害が起きた場所の多くは、過去にも一度二度災害が起きているもしくは「起きても仕方がないな」と災害予見できそうな場所で起きていることが多い。阪神淡路大震災の時でも「起きなさそうなエリア」では起きなかった。何かが起きてから後悔しないように、購入前には納得いくように調査をしてほしい。