新型コロナウイルスが猛威を振るっている。イベント類の自粛、テレワークの推奨、学校の休業等々、かつて経験したことがないような社会現象が日本規模で起き、それに伴い様々な業界がダメージを受けている。さて不動産関連業界ではどのような変化が起きているか?今後の動向も気になるが、それは別の機会に譲るとして、今回は私自身が見聞きした範囲内でのことを書き記したい。自身の活動エリアが京都を中心とした関西圏が中心となるため、首都圏等別のエリアでは少し事情が異なるかもしれないことはご承知おきいただきたい。
まずは住宅。消費者マインド、特に一次取得者の動きが鈍い。オープンルーム等への来訪者数が減っている。旅行やイベントの自粛等で経済活動が滞り、日本だけでなくニューヨーク市場でも株価が急落するなど先が見えない雰囲気となっているこの状況で、35年のローンを抱えマイホームを購入することを躊躇するのは当然と言えば当然かもしれない。
事業用不動産については、購入者マインドが下がっている感は否めないものの、住宅ほどではない。店舗や事務所は今後の動向次第ではテナント募集に影響が大きいが、住宅についてはコロナウイルスで極端に需要が減ることはない。資金力のある人は「条件の良いものは買い」と考え、資金繰りの悪化等で売却に出される不動産を待つ人も多い。
「資金繰りの悪化」といえば宿泊施設関連とりわけ近年業界に参入した小規模事業者の業績悪化が著しい。大阪においては昨年夏頃からの反日感情増大による韓国人観光客の減少、京都においてはホテルの激増と条例改正によるコスト増と理由は少し異なるが、もともと業績が芳しくない事業者が増えていた中での今回の騒ぎ。国内の移動自粛と海外観光客の激減による煽りを受け、すでに事業停止や資産処分の準備に入っている事業者もいる。
新築マンションでは、中国からの資材・建材の調達遅れに伴う工期の遅れが懸念されている。これはマインドの話ではなく物理的な話だ。3月7日に中国の税関当局の発表によると今年1月2月の中国の輸出額が昨年同時期と比べ約17%減とのこと。中国の税関当局は「新型コロナウイルスの感染拡大による影響は一時的だ」としているものの、昨今の様子を見ているとこの状態は当面続きそうに見える。
中古マンションの管理でも変化が起きている。設備業者等が住戸内に立ち入ることを敬遠するあまり消防設備点検等を延期するマンションが相次いでいる。消防点検や配管清掃の一部は、マンションの室内(専有部分)に設備業者が立ち入らなければ実施できない。事態が収束するまでの期間が短ければ問題ないが、この騒動が長期にわかる場合どのような対応にするか?その案までは聞こえてこない。
クルーズ船の話ばかりが取り沙汰されていた頃はまだ「対岸の火事」と考えていたのが、2次感染3次感染が起きている今では多くの人が自身や自身の職場等で発生しないか戦々恐々とし、自宅待機や行事参加等の自粛が続く中で疲弊している人も多いであろう。しかし、このような大きな変化はチャンスとも言える。不動産業界もテレワークの普及による「コワーキングスペースの増加」「住まいの多様性の促進」といった変化を期待する向きも多い。
これから大きく変わるであろう働き方住まい方ひいては生き方を踏まえた上で、自分や家族にふさわしい住まいはどうあるべきか。今は、そんなことをゆっくりと考えてみるチャンスなのかもしれない。