田中和彦が斬る!関西マンション事情 不定期
田中 和彦

[第114号]中古マンション値上がりランキング(関西)〜阪急阪神不動産が三年連続一位

2020年02月20日

住まいサーフィンの「売主別 中古マンション値上がり率ランキング2019」が発表されている。ここでは関西売主別のランキングを見てみたい。

1位になったのは「ジオ」ブランドを展開する阪急阪神不動産で、3年連続だ。2位は「パデシオン」の睦備(むつび)建設。京滋地区以外の人には聞き慣れない企業かもしれない。3位は商社系のデベロッパーである伊藤忠都市開発。ブランド名は「クレヴィア」。年配の方は「イトーピア」「シーアイハイツ」の方が馴染むが深いかもしれない。

ところで今回取り上げた「値上がりランキング」、エンドユーザー目線の大変意味のあるランキングだ。それに対し「供給戸数ランキング」はそれほど意味がない。

「たくさん供給されている」ということ自体、直接的には購入者にメリットはない。もちろん、たくさん売れていることは、それだけ多くの人が「購入する」という決断をしたということであり、全く意味がないとは言えない。しかし、たまたま大規模物件を供給したから、品質はそこそこだが価格が安いから、等々、供給戸数が多いことの理由は色々と考えられる。ほとんど実績のない売主ならともかく、そこそこの戸数を供給している売主であれば、ランキングに入っておらずとも、ランキング内の売主に劣っているとは言えない。

それに比べ「値上がりランキング」は、その売主の物件が値上がりしているという、とてもわかりやすい直接的なメリットがある。もちろん、値上がりは過去の実績であり、ランキングに名前がある売主の物件を購入したら儲かるわけではない。しかし3年連続1位の阪急阪神不動産のようにランキング常連ともなると、「その売主の物件を買おう!儲かるかもしれない!」などと想像を膨らませる人も現れるであろう。

そこでもう一歩考察を進め「なぜ値上がりしたか?」ということを考えてみたい。分譲マンションの価格が購入時から上がるケースには二つのパターンがある。一つは「分譲後に周辺相場が上昇したため」。要するに「値上がりする場所で供給された」。もう一つは「分譲価格が相場よりも安かったため」。言い換えれば「そもそも安かった」だ。

前者が主だった理由と考えられるのが2位の睦備(むつび)建設だ。2018年の6位から2019年は2位に順位を上げている。関東では無名だが、関西とりわけ京都方面に明るい人なら名前を知っている人も多い。「パデシオン」のブランド名で京都市内を中心にマンション・一戸建ての分譲事業を行うデベロッパーだ。宿泊施設ラッシュで土地価格が高騰、結果として分譲マンションの供給が減り京都界隈のマンション相場が高騰、同エリアに既供給物件の多かった睦備建設は順位が上昇したと考えられる。

一方、1位の阪急阪神不動産は後者の分譲相場が相場より安かったためではないだろうか。先に挙げた2位の睦備建設が極端に供給エリアが京都に偏っているのに対し、阪急阪神不動産の供給エリアは阪神間、北摂、大阪市内、京都方面と広範囲に渡っている。南大阪や奈良・和歌山方面の分譲実績がなく「供給は値上がりしたエリアに偏っている」と言えなくもないが、他にも「北摂・(大阪)市内・阪神間中心」の売主が他にもたくさんある中3年連続の1位は、「どこのエリアによらず値上がりしそうな場所で供給している」と考えるより、そもそもの分譲価格が良心的であったと考える方が妥当であろう。

阪急阪神不動産と睦備建設以外に、2年連続関西TOP10に入っている売主が3社ある。野村不動産(2018年7位、2019年5位)、三井不動産レジデンシャル(2018年5位、2019年6位)、京阪電鉄不動産(2018年3位、2019年10位)だ。野村・三井については圧倒的な企業グループの知名度と信頼度、京阪電鉄不動産は大阪都心部タワーと京都中心部のいずれも高級物件の供給が多かったことが理由であろう。ちなみに9位の日本エスコン、東証1部上場で首都圏での分譲実績もあるのだが今ひとつ首都圏での知名度が高くない。「日本〇〇」という社名が競合他社にも多くあることと、5〜6年程前に「ネバーランド」から「レ・ジェイド」へと変わったブランド名がまだエンドユーザーに浸透していないことが原因ではないだろうか。

大和ハウス工業(2018年2位)と三菱地所レジデンス(2018年4位)は、ランクから名前を消している。詳細データを見ていないので消えた理由は推察できないが、これだけ大きく順位を下げたのは理由があると考えられる。なぜこうなったかが気になるところである。

(参考リンク)
売主別 中古マンション値上がり率ランキング2019
https://www.sumai-surfin.com/price/UrinushiTouraku2019/

 

この記事の編集者

田中 和彦

株式会社コミュニティ・ラボ代表。マンションデベロッパー勤務等を経て現職。
ネットサイトの「All About」で「住みやすい街選び(関西)」ガイドも担当し、関西の街の魅力発信に定評がある。

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