「住まいサーフィン」から毎年恒例である「分譲年別行政区別マンション中古値上がり率」の2020年度版が発表された。
この資料からわかるのはズバリ「どの年に、どの場所に、マンションを買った人が、実際にどのくらい儲かったか(または損したか)」だ。関西はいつどこで買った人が儲かったのか?を見てみよう。なお、記載されている数値は市内(区内)の事例の平均値であるが、簡潔に記載するため「〇〇年の〇〇市は上がった」といった書き方にしている。実際には、事例数が少なく全体の評価と考えにくい場合は、「儲かった物件」と「損した物件」が併存し平均値を持ってして儲かった(損した)とは一概に言えない場合もあるのでご容赦願いたい。
◎京都府
特徴的なのは「京都市中京区で購入した人は儲かっている」ということだ。平均39%、最近7年間はどの年も20%以上、一番低い2008年竣工物件でも19.7%値上がりしている。14年中記録のある11年において実に9回で「京都府一の値上がり」。ここ数年は宿泊施設の開業が相次ぎ分譲マンションが激減、その煽りで中古マンション市場が上昇したと考えられる。
一方、京都市山科区は平均で14.8%の値下がり。2013年竣工物件を除き、記録のある年は全て値下がりしている。JR・京阪・地下鉄が利用でき自動車での移動も便利な割には京都中心部に比べて売買・賃貸ともに不動産相場が安いのが魅力の山科区。新築マンションに関しては割高な分譲が多かった、逆の見方をすれば中古マンションはお買い得のエリアと言える。
◎大阪府
大阪府で値上がりが顕著なのは大阪市内中心部。福島区・西区・浪速区・北区・中央区が平均15%超だ。天王寺区を除く中心部全てだ。ただ、この5区の次に来るのが天王寺区であり「大阪市内中心部で買った人は儲かっている」と考えて良いだろう。
同じ大阪市内でも中心部以外は「損した区」が多い。▲10%超の区は東淀川区・生野区・旭区・西成区・平野区、▲5%〜▲10%は大正区・西淀川区・東成区・住吉区・東住吉区・住之江区。24区中11区が▲5%以上のマイナス。
それ以外で目立っているのはここ最近の豊中市・吹田市。豊中市は6年連続、吹田市は5年連続のプラスとなっている。どちらの市も大阪メトロ御堂筋線沿線であり、自動車利用でも新御堂筋利用で梅田に一直線。大阪で「儲かる物件」は交通利便性が大きなポイントだ。
◎兵庫県
「儲かった物件」があるのはズバリ神戸市中央区と神戸市東灘区。全体平均でそれぞれ10%と6.5%。他に全体平均でプラスになっている市区町村は西宮市(0.4%)しかない。
この二つの区、近くにあるが隣り合ってはおらず、街の雰囲気も大きく異なる。中央区が三宮を中心とした商業地でありタワーマンションも多い高密度に開発されたエリア。一方、東灘区は阪急「岡本」駅、阪急「御影」、JR「住吉」駅などを中心にいわゆる「閑静な街並み」「お洒落な街並み」と呼ばれる住宅地。雰囲気は異なるがどちらも「神戸らしい」と言える。
「損した物件」が多いのは同じ神戸市でも西の端に当たる神戸市須磨区と神戸市垂水区。両区は事例が確認できたどの年もマイナス、すなわち「損した物件」となっている。決して環境や交通利便性が悪いエリアではない。むしろ瀬戸内海に面しJR一本で大阪に出ることができる歴史豊かなエリアで「須磨で欲しい」「垂水で欲しい」と他のエリアに出ない人も多い。だからこそ新築分譲価格が高めに設定され中古市場で安くなっているのであろう。
ーーーー ーーーー ーーーー ーーーー ーーーー
さて、この「マンション中古値上がり率」をみてどのように考えれば良いか?
かつて不動産は、安い時期に買えばどこで買っても儲かり、高い時期に買えばどこで買っても損をする、そのような傾向にあった。ところがここ10年、15年はそうではない。時期よりもエリアが「儲かる」「損する」に関係している。簡単に言えば「儲かる場所で買えばいつ買っても儲かり、損する場所ではいつ買っても損をする」ということだ。
例えば2008年前後の竣工物件はリーマンショック前の価格で売られていたものが多く割高だったと言える。また2013年前後は昨今のマンション高騰が始まる前であり振り返れば割安であった。しかし2008年前後でも「儲かった行政区」もあれば、2013年前後でも「損した行政区」もある。東京都23区の表が真っ赤で、千葉県の表が真っ青なのを見れば一目瞭然だ。
資産価値を第一に考えてマンション購入をするならば、「タイミング」を考えるよりも「場所」を考えて選ぶ方が賢明だ。
参考URL
https://www.sumai-surfin.com/price/AreaPriceTouraku2020/