田中和彦が斬る!関西マンション事情 不定期
田中 和彦

[第98号]数値にできない魅力あり!? 〜阿波座ライズタワーズ

2019年05月22日

【元大阪府庁跡地の大規模開発、阿波座ライズタワーズ】

大阪市西区に阿波座という駅がある。大阪メトロ中央線で「本町」駅迄1駅、千日前線利用で「なんば」駅まで3駅。大阪の「都会のオアシス」的存在の中之島や靭公園まで徒歩10〜15分程度。梅田やなんばより利便性は劣る(比べるのが間違いとも言えるが……)が、日常の買い物等は全く困らない。都心に近くて、繁華街とは程よい距離感がある暮らしやすい場所だ。

その「阿波座」駅から徒歩2分、木津川にほど近い旧大阪府庁があった敷地に高層タワーマンションが二棟建つ。「阿波座ライズタワーズ マーク20(2013年竣工)」と「阿波座ライズタワーズ フラッグ46(竣工2016年)」だ。隣接する総合病院「日本生命病院」とクリエイティブセンター「enoco」を合わせた総開発面積は16,900平米。かなりの大規模開発だ。戸数はそれぞれ565戸と187戸、合わせて752戸の「大きな一つの街」だ。大規模で敷地にゆとりがあることからマンションの足元は空地が多く、約2,600平米の緑豊かな庭を持つ。木津川に面していることもあり多くの人が暮らす街でありながら窮屈さは全くない。大変開放感のあるタワーマンションだ。

大規模マンション、駅徒歩2分。この2つのスペックは、中古市場でライバル物件と比較して選んでもらいやすい要素。特にタワーマンションにおいての「大規模・駅近」は強い。マンション検討者がポータルサイトを検索すしても選択肢に残りやすい。

そんな「定量的な魅力」を持つ「阿波座ライズタワーズ フラッグ46/マーク20」だが、この2つのマンションには他にも魅力がある。それも「定性的な魅力」、数字では計れないものだ。


【外部に開かれたレンタルスペース】

「enoco」というクリエイティブセンターがあると書いた。この施設の正式名称は「大阪府立江之子島文化芸術創造センター」。「アートやデザインなどの創造力で、大阪という都市を元気にすることを目指して」「クリエイティブな発想とネットワークで都市や社会が抱える様々な課題の解決に取り組んで」いる施設だ(カッコ内は施設の紹介施設から抜粋)。

このような施設が隣接することもスペックで計れない「定性的な魅力」には違いないのだが、「阿波座ライズタワーズ フラッグ46/マーク20」の魅力は同様の施設がマンション内にもあるところだ。

一般的な大規模マンションには多かれ少なかれ共用施設がある。ライブラリー、キッチンスタジアム、キッズコーナー等が他物件との差別化となる。しかし、これらの施設は当然入居者向けに作られたものであり、閉じられた施設だ。しかし「阿波座ライズタワーズ フラッグ46/マーク20」はそれぞれにレンタルスペースとして「フラッグスタジオ」「マークスタジオ」を持つ。この2つのレンタルスペースは、マンションに居住しない外部の人間にも貸し出されている。これは、かなり珍しい。

飲食店やスーパーがマンションの1階共用部にテナントとして入居し、テナントの顧客としてマンション内に外部の人間がが入ることはよくある。しかしこのマンションのようにレンタルスペースとして、しかも隣り合ったマンションのそれぞれが両方ともにスタジオがあるというのは、そうそう例がない。

このレンタルスペースは講演会やコンサート、ヨガ教室やリトミック等の目的で居住者はもちろん外部の人にも有料で貸し出されている。利用規約がWEBで公開されているが、そこには多くのマンションの使用細則等に記載されている「営業行為の禁止」という記載がない。それによってフリーマーケット、有料のワークショップ、月謝制の教室等の開催も可能となる。

共用部の外部者利用/営業行為ともに可能。これはマンション共用部としては画期的な運用だ。分譲マンションの事業主や管理会社はトラブルの少ない運用を好むため、集会室のようなスペースについては居住者の利用しか認めないことが多い。本マンションの運用は、分譲主の英断だ。


【コミュニティの活性化から資産価値向上に】

このような利用形態は、レンタルスペースの利用の幅を広げ、結果として多くの地域住民に利用されることになる。知人でも住んでいなければ立ち寄ることのない近所のマンションも、自分が利用し時には住民との交流を持つことで本マンションに対する好感度も上がる。中古マンションの多くは周辺住民が購入することを考えると、このレンタルスペースは資産価値向上に寄与しているといっても差し支えない。もちろん、マンション住民同士のコミュニティ活性化や地域とマンション住民とのつながりを作ることにも一役買っている。

「大阪という都市を元気にすること」はかなり壮大なことでこれからも取り組まれる目標といえるが、「マンションとその周辺を元気にすること」はすでに達成しているように思う。定性的なことで数値では表せないのがもどかしいが。

 

この記事の編集者

田中 和彦

株式会社コミュニティ・ラボ代表。マンションデベロッパー勤務等を経て現職。
ネットサイトの「All About」で「住みやすい街選び(関西)」ガイドも担当し、関西の街の魅力発信に定評がある。

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