田中和彦が斬る!関西マンション事情 不定期
田中 和彦

[第85号]大阪のビンテージタワー 〜 OAPレジデンスタワー 〜

2018年11月15日

【質感の高さが特徴】
今から20年前の1998年。JR大阪環状線「桜ノ宮」駅の南方にSRC30階建224戸のタワーマンションが竣工した。2年後には同じくSRC造30階建294戸のマンションが建築され、旧の淀川である大川沿いにツインタワーが並び立った。OAPレジデンスタワーだ。

OAPとは「大阪アメニティパーク」の略称。約5haの三菱金属(現三菱マテリアル)の工場跡地に建てられた複合施設で、OAPレジデンスタワー以外にはツインタワーよりも高さもボリューム感も勝る39階建OAPタワー、帝国ホテル大阪などから構成される。OAPタワーにはレストランやショップ、帝国ホテルにはブランドショップがはいり、全体としてグレード感の高い空間となっている。最寄駅がJR東西線「大阪天満宮」駅、JR大阪環状線「天満」駅まで徒歩10分。これらの駅イメージから想起されるもっちゃりとした「大阪的町並み」とは真逆といえる。


【過去には土壌汚染問題】
分譲時はタワーマンション人気や都心居住が今ほどメジャーな選択肢ではなく、三菱×大林組のタッグや工場跡地の複合開発施設といったスケール感の割にはそれほど注目されることもなかった。しかし、竣工後程なくして関西はおろか全国から注目されるような出来事が起きた。土壌汚染問題の発覚だ。正確には「土壌汚染の隠蔽」の発覚だ。

2002年に発覚したこの土壌汚染問題、本記事ではその詳細までは記載しないが(興味のある人は末尾の参考リンクを読んでほしい)、何度もテレビニュースや新聞記事になったので「そういえば、そんなこともあったな」という人も多いだろう。事件の影響で物件価値が大幅に下落するのではないかと考えられた時期もあったが、土壌汚染対策は施されていたため実害は少ないという市場判断が働いたのか、中古物件は問題なく流通している。また、今では事件のことを気にする人も少なく、覚えていても相場形成には影響しているようには思えない。


【水と緑に恵まれたビンテージタワー】
事件の影響もなく中古物件になっても市場性が高いのは、そのたぐいまれな立地によるところが大きい。

先述の通り、マンション以外の施設も含め、敷地規模は約5ha。環状線の内側でこの広さの開発はそれほど数多くはない。大川沿いというのもポイントが高い。川の向こうは毛馬桜ノ宮公園。春は桜を楽しめ、夏には天神祭の花火や船渡御で賑わう。南に行けば大阪城公園、南西方向には中之島公園。どちらも直線距離で1km程度。敷地内の公園も含め、水と緑に恵まれた季節感のある立地だ。

ここ数年、市内にはタワーマンションが数多く建設されており、北浜、本町、中津等、大阪からごく近い駅でも「駅直結マンション」が出現。特徴の少ない物件は今後中古市場での勝負が難しくなってくるのは想像に難くない。そんな中でもOAPレジデンスタワーは、駅近でなくとも立地で勝負できる物件だ。土壌汚染問題でケチはついたものの、分譲主は三菱地所、大林組とどちらも一流。「ビンテージ物件」と呼ばれる要素は揃っている。

参考リンク:
国土交通大臣免許業者に係る監督処分の概要
http://www.mlit.go.jp/kisha/kisha06/01/010613_3/01.pdf
OAP問題に関するご報告
http://www.mec.co.jp/j/csr/report/2007/pdf/csr2007_6_2.pdf

 

この記事の編集者

田中 和彦

株式会社コミュニティ・ラボ代表。マンションデベロッパー勤務等を経て現職。
ネットサイトの「All About」で「住みやすい街選び(関西)」ガイドも担当し、関西の街の魅力発信に定評がある。

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