田中和彦が斬る!関西マンション事情 不定期
田中 和彦

[第67号]不動産大手が注目する「コンパクトマンション」市場

2018年02月14日

(北浜で野村と三井の徒歩1分物件)
「住まいサーフィン」の人気コンテンツの一つ「今、旬なマンション」、「大阪市内」を見てみた。駅近物件、というよりも「駅徒歩1分」物件が目立つ。「中津」駅に複数の「駅徒歩1分タワー」が分譲されていることは以前にも書いたが、今回注目したいのは「北浜」駅最寄りとなる2棟の「駅徒歩1分」物件だ。
 
「200戸以上」のTOPは「プラウドタワー北浜」(42階建281戸 売主:野村不動産株式会社・大林新星和不動産株式会社)、4位が「北浜ミッドタワー」(43階建311戸 売主:三井不動産レジデンシャル株式会社・京阪電鉄不動産株式会社・積和不動産関西株式会社)。この2棟の駅徒歩1分高層タワーマンションの共通点はどちらも「分譲マンション業界における人気大手企業が売主(平たく言えば「野村と三井」)」であること、そしてその両社がともに「コンパクトマンション」に力を入れていることだ。
 
1位の「プラウドタワー北浜」の売主である野村不動産。マンション購入者・検討者にとって野村不動産といえば、高級感を売りにした「プラウド」ブランドでお馴染みなわけだが、「プラウド」以外にも「OHANA(オハナ)」というブランドを保有する。関西では馴染みがないが、首都圏ではすでに10物件以上竣工しており名前も知れている。
 
そのブランドコンセプトは「建物の質を高め、しかも分譲価格を上げない」こと。言い換えれば「価格がコンパクト」だということだ。場所は都心や駅近にこだわらないが「安いマンションの販売ラインナップ」を提供する。同ブランドのWEBサイトには「コストパフォーマンスのこだわる家族のライフスタイルマガジン」として「CosPer!」なんてコンテンツもあることからも、売主の狙うターゲットが見える。
 
4位の「北浜ミッドタワー」の売主の三井不動産レジデンシャル。こちらには「パークリュクス」というブランドがある。こちらのブランドも価格が「コンパクトマンション」だ。「OHANA」が「商品の規格化やバルク発注、大規模開発」によって価格圧縮を実現しようとしているのに対し、「パークリュクス」は1LDK・2LDK中心の小世帯向けの商品とし専有面積を抑えることによる価格圧縮を目指している。
 
(気になる大手の「コンパクトマンション」)
ここ数年マンション分譲価格の高騰が著しい。特に東京都内中心部においては、一般的な「サラリーマン家庭」には手が届きにくくなっている。だからといって野村、三井といった「ブランド企業」は、土地価格が安くステイタス感に乏しいエリアでの分譲はしない。そのような状況下から産まれたのが両社の「コンパクトマンション」であるが、この波が徐々に関西にも来ているように感じる。東京都区部には及ばないが、関西においても大阪市内や京都市内中心部ではマンション価格が高騰しているからだ。
 
また「コンパクトマンション」は、相続税対策としても注目されている。平成27年からの基礎控除金額引下げで、相続税を支払う必要のある家庭が一気に増えた。かつては相続税対策は一部の資産家だけのことのように考えられていたが、今では「持ち家1軒、夫と妻の両親が持家1件づつ」といったごく普通のサラリーマン世帯にも対策が必要となる。そのような場合、大手が分譲する「コンパクトマンション」は資産評価圧縮の選択肢として大いに注目されることになるであろう。
 
野村の「OHANA」は関西にはまだないが、三井の「パークリュクス」は「パークリュクス大阪天満」と「パークリュクス大阪京町堀」の2物件がすでに関西デビューしている。
 
北浜の両物件は、いずれも売主が保有する「コンパクトマンション」ブランドではないが、今後「大手によるコンパクトマンション」の動向には注目したい。
 
 
(参考)今、旬なマンション
2/13 08:00 大阪市内・30日間・マイページ登録数 を確認しました。

 

この記事の編集者

田中 和彦

株式会社コミュニティ・ラボ代表。マンションデベロッパー勤務等を経て現職。
ネットサイトの「All About」で「住みやすい街選び(関西)」ガイドも担当し、関西の街の魅力発信に定評がある。

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