田中和彦が斬る!関西マンション事情 不定期
田中 和彦

[第240号]万博と不動産選び ~ 未来を想像し、いま選ぶということ ~

2025年05月29日

万博とは、世界が未来を語る場所である。

最先端の技術、環境配慮、都市の構想。来場者は、まだ現実になっていない未来の暮らしをその場で体感し、自分なりのビジョンを膨らませていく。そこには、社会の課題を乗り越えるためのヒントもあれば、単純に「こんな生活がしたい」という直感的な願望を刺激する展示もある。

筆者もようやく、大阪万博を訪れる機会を得た。今回のコラムでは不動産が大好きな筆者が、万博で感じたことを率直に語りたい。

筆者が展示を見て強く感じたのは、「未来を描くことのリアリティ」である。理想だけでなく、その実現のための構造、仕組み、段取りが緻密に設計されていた。万博は単なる夢の博覧会ではなく、「現実に落とし込む力」を示す場だった。

それは、不動産選びにも通じるものがある。物件を選ぶという行為は、単に「今の暮らしに合う部屋を探す」ことではない。むしろ、「これからの暮らしをどうしたいか」という未来の姿を思い描き、それを叶える場所を選ぶ行為にほかならない。

子どもが成長しても手狭にならない広さ。将来的にリモートワークを見越した間取り。老後を見据えたバリアフリーや買い物の利便性。こうした視点があって初めて、不動産は「資産」ではなく「暮らしの器」になる。

万博の展示が単なる未来の夢物語で終わらないためには、正しい技術や制度設計が必要である。同様に、不動産選びでも正しい知識が重要だ。立地、建物の構造、法的な制約、住宅ローンの仕組みなどを理解しておかなければ、描いた未来は実現できない。情報を集め、比べ、判断する力が問われる。

もうひとつ、万博と不動産選びに共通するのは「体験」の大切さだ。万博では、ただ情報を読むだけではなく、五感で空間や構想を体感できる。実際に歩いてみて初めてわかる温度や空気感がある。不動産選びも同じだ。物件のスペックだけでは見えない街の空気、人の流れ、時間帯ごとの雰囲気。そういった感覚的な情報が、暮らしの満足度を大きく左右する。

未来は、思いつくだけでは近づいてこない。具体的に思い描き、情報をもとに判断し、自らの足で体験しながら選びとるものだ。万博が私たちにそれを教えてくれるように、不動産選びもまた、「未来をつくる力」を持っている。

今の延長線上だけではなく、少し先の自分を見つめてみること。不動産を選ぶというのは、そういう機会でもある。

 

この記事の編集者

田中 和彦

株式会社コミュニティ・ラボ代表。マンションデベロッパー勤務等を経て現職。
ネットサイトの「All About」で「住みやすい街選び(関西)」ガイドも担当し、関西の街の魅力発信に定評がある。

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