低廉な空き家等にかかる報酬額が改正される模様だ。
現在は「400万円以下の不動産売買の際は、売主から受領できる仲介手数料の上限額を18万円(税抜)とする」であるのが、今回の一部改正(案)では「800万円以下で30万円(税抜)」となっている。
仲介手数料の上限は400万以上の売買代金の場合は簡易計算で「3%+6万円」。現在の規定では800万円の「空き家等」を仲介した場合、売主に対して請求できる報酬は30万(800万× 3%+6万円=30万円)となり、800万以上の仲介手数料は現状と変わらない。
今回の改正で差が出るのは、より低廉な空き家等の取引だ。
物件金額 | 現状 | 改正案 | 差額 |
---|---|---|---|
400万円以下 | 18万円 | 30万円 | 12万円 |
500万円 | 21万円 | 30万円 | 9万円 |
600万円 | 24万円 | 30万円 | 6万円 |
700万円 | 27万円 | 30万円 | 3万円 |
800万円 | 30万円 | 30万円 | 0万円 |
上記のように、金額の低い住宅ほど改正の恩恵を被る仕組みとなっている。
長年放置されている実家等の空き家は、屋根・壁等の構造的な箇所以外にも、水回りの不具合や、残置物の処理、庭の手入れ等々、手を入れなければいけない箇所が多い。それらについて、どこまでを売主負担で行うか、また契約不適合責任について売主はどこまで責任を負うか(どこまで免責とするか)を売主・買主間で調整する必要がある。これらにかかる手間は都心部の築浅分譲マンションの契約の比ではない。
また調整箇所が多いということは仲介会社にとっては、売主・買主間で認識違い等のトラブルが生じて仲介責任を問われる可能性も高い。さらにはこのような案件は遠方にあることが多く、現地調査・役所調査等の負担が大きく、案件があっても断る仲介業者も多い。
都心にある5,000万円、1億円の分譲マンションが「空き家で困っている」という話はあまり聞かない。たとえ手間がかかっても数百万単位の報酬が見込めるため業務を受ける業者がいくらでもいるからだ。一方、郊外にある低廉な空き家は報酬と見合わないことがネックとなり放置されている場合が多い。この18万円から30万円への上限引き上げは空き家の流動化に寄与する改正となると思われる。
ちなみに首都圏、関西圏等では800万円以下で状態の良いマンションを見つけるのは難しい。日本の不動産は都心と郊外、マンションと一戸建てでは完全に「別の市場」となってしまった。