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住宅ローンは借り入れる金額が大きいので、多くの人が返済期間を20~30年以上設定しています。長年支払っていると、完済のときの嬉しさもひとしおではないでしょうか。
しかし、返済さえすれば終わりではなく、やらなければならない手続きがあります。
今回の記事では、住宅ローン完済後にやるべき手続きについて解説します。
目次
1. 住宅ローン完済までの平均期間と繰り上げ返済
住宅ローンを組むときには、返済期間を長く設定する人が多いです。平均返済期間はどれくらいなのでしょうか?
※完済後の手続きは、次の章から解説しています。
住宅ローンの平均返済期間と完済までの期間
国土交通省の調査によると、新築分譲住宅(集合住宅・一戸建て)取得世帯の住宅ローン返済期間は35年以上が最も多く、50%を超えています。
返済期間を平均すると、分譲集合住宅が28年、分譲一戸建てが29.7年でした。
参考:国土交通省「令和5年度住宅市場動向調査報告書」https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001767858.pdf
最近は、返済期間50年以上の住宅ローン商品も増えてきています。50年ローンのメリット・デメリットについては、こちらの記事で解説しています。
しかし、「返済期間35年」「返済期間50年」などは住宅ローンを契約した時点での約定返済期間です。必ずしもこの期間で返済する人ばかりではありません。
住宅金融支援機構の資料を見ると、実際に完済するまでの平均期間は、平均約定返済期間よりも10~11年ほど早かったです。
昔は今よりも貸出金利が高かったことも影響していると思われますが、なんにせよ繰り上げ返済している方も少なくありません。
参考:住宅金融支援機構「2020年度住宅ローン貸出動向調査」https://www.jhf.go.jp/files/400354669.pdf
住宅ローンを繰り上げ返済するメリットとデメリット
繰り上げ返済とは、毎月決まっている返済額以外で、借入額の全額または一部を前倒しして返済することです。
この記事をご覧の方の中には、「繰り上げ返済をして住宅ローンを完済しよう」と考えている方もいらっしゃるでしょう。そこで、繰り上げ返済について簡単に解説します。
全額繰り上げ返済のメリット
- ● 住宅ローンの返済から解放される
- ● 総支払い利息が減る
- ● 保証料が戻ってくることもある
住宅ローンは、言い換えれば借金です。借金している状態は落ち着かないから早くすべて返したいという方は、全額繰り上げ返済することで返済から解放されます。
また、大きなメリットとしては総支払利息が減ることが挙げられます。特に金利が高い人ほど、繰り上げ返済した時の利息軽減効果は大きいです。
さらに、契約の内容によっては保証料の一部が戻ってくることもあります。
全額繰り上げ返済のデメリット
- ● 手元の資金が少なくなる
- ● 団信の保障がなくなる
- ● 手数料がかかることがある
- ● (住宅ローン控除期間が残っている場合)減税されなくなる
一方で、繰り上げ返済にもデメリットがあります。
まず、繰り上げ返済の金額が大きいほど、手元の現金が少なくなってしまいます。貯蓄が減ることで急な出費に対応できなくなるリスクもあるので、本当に繰り上げ返済するべきなのかはしっかりと検討してください。
次に、完済することで団信(団体信用生命保険)の保障がなくなってしまいます。団信は金融機関によってはかなり手厚い保障内容となっていて、費用を考えると普通の生命保険よりもずっと割安でお得なことがあります。金利が高くないなら、いざというときに備えて、あえて繰り上げ返済しないという選択をしても良いでしょう。
金融機関によっては繰り上げ返済時に手数料がかかる場合があるので注意しましょう。
窓口での手続きは手数料がかかるけれど、インターネットでの手続きであれば手数料が無料となることもあります。
また、全額繰り上げの場合のみ手数料が発生することもあるようです。繰り上げ返済を希望する場合は、まずは金融機関に相談してみましょう。
住宅ローンを借りた場合、10~13年間、所得税や住民税が控除される制度があります。減税される期間がまだ残っている場合は、減税される金額と利息額を比較するようにしてください。
住宅ローン控除についてはこちらの記事で解説しています。
全額一括返済(残金一括決済)を希望している場合でも、すぐに繰り上げ返済できるわけではありません。数週間から1ヶ月以上かかることがあるので、早めに相談することが大切です。
繰り上げ返済についてさらに詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
住宅ローンを繰り上げ返済するタイミングはいつが良い?損をしない返済方法とは!
住宅ローンの繰り上げ返済のメリットやデメリット、ベストなタイミングについて解説します。
2. 住宅ローン完済後にやること
それでは、住宅ローンの完済後にやることを見ていきましょう。
住宅ローンが完済したら、金融機関から完済に関する証明書などが送付されます。これで一安心ではなく、やらなければならない手続きがあります。
住宅ローン完済後に必要な手続きは、以下の2つです。
- ● 抵当権抹消登記の申請
- ● 火災保険質権消滅の手続き(一部の対象者のみ)
特に抵当権抹消登記は、申請せず放置したままでいるとこんなことになってしまいます。
抵当権抹消登記の申請
住宅ローンは、購入した家(土地・建物)を担保にして金融機関からお金を借りる仕組みになっています。そのため、土地や建物の登記には「抵当権」というものが設定されます。
抵当権とは、万が一返済ができなくなったときにはその不動産を競売にかけて、そのお金を抵当権者(金融機関や保証会社)が回収するというものです。
住宅ローンを完済したという証明書があれば問題ないのではないかと思う方もいるかもしれません。実際に、ローンを完済しても抵当権の抹消登記はしないでそのまま放置しているという方もいます。
抹消登記は義務ではないので、罰則はありません。
しかし、抹消登記をせずそのままにしておくと、新規で他のローンを借りる際の審査に悪影響を及ぼすかもしれません。
また、土地や建物の取引をするときには、登記に記載されている情報が重要な参考資料になります。
いざ土地や建物を売却しようとしたときに抵当権が設定されていると、その不動産は敬遠されてしまいます。
自身に売る予定はなくても、土地や建物などの不動産は所有者が亡くなった後は相続人に引き継がれます。所有者が変わっても、不動産に記載されている「抵当権設定登記」は、抹消申請をしない限りずっと残ります。
相続人が抹消登記を申請することもできますが、やはり完済したタイミングでの抹消がベストです。
そのため、完済したら忘れずに抵当権抹消登記の申請をしましょう。申請の手続き方法は、「3.完済後、抵当権抹消登記の手続き方法」で解説しています。
火災保険質権消滅の手続き
住宅ローンを借り入れる際に、金融機関が火災保険に対して「質権」を設定することがあります。
火災保険に加入することで、万が一火災などが起きた場合は保険金が支給されます。質権が設定されていると、この保険金を受け取る権利は、質権者(金融機関)が優先となります。
保険金は直接金融機関に振り込まれ、住宅ローンの残額分に充てられます。もし余りがあれば、住宅ローンを借り入れている人が受け取ります。
ただし、最近この制度はあまり一般的ではないようです。
理由としては、火災保険の最長契約期間が短縮されていて管理コストがかかることや、保険金を残額返済に充てると利息分が回収できないことなどが挙げられます。
もし火災保険に質権が設定されている場合は、速やかに消滅の手続きをしましょう。申請の手続き方法は、「4.完済後、火災保険質権消滅の手続き方法」で解説しています。
3. 完済後、抵当権抹消登記の手続き方法
抵当権抹消登記はどのように手続きをすれば良いのか、見ていきましょう。
手続きは、不動産を管轄している法務局に対して行います。
全国に法務局がありますが、どこでも良いわけではなく、管轄している法務局に申請することが必要です。管轄先は、法務局のホームページなどで確認できます。
申請手続きについては、①司法書士に依頼する方法と②自分でやる方法があります。
司法書士にお願いをすれば、依頼料はかかるものの、申請書の記入や申請手続きはすべてやってもらうことができます。
不動産を購入したときや抵当権を設定したときには、司法書士に依頼したという方がほとんどだと思います。
不動産会社や住宅ローンの金融機関によっては、司法書士に依頼することを必須としていることも多いです。
しかし、抵当権抹消登記については登記申請の中でも比較的簡単なので、自分で申請することもできます。
必要書類と記入方法
抵当権抹消を自分でやる場合には、以下の書類が必要です。
☆については、住宅ローンを借りた金融機関から送付されます。
- ● 登記申請書(法務局ホームページに様式あり)
- ☆ 抵当権の登記識別情報または登記済証
- ☆ 抵当権抹消の登記原因証明情報(解除証書等の完済したという証明書)
- ☆ 金融機関からの登記に関する委任状
- ☆ 金融機関の会社法人等番号→申請書に記入
なお、不動産登記に記載されている所有者(登記事項証明書の甲区)について、住所や氏名が変更されている場合は、その変更登記申請も必要となります。
住所等の変更登記は抵当権抹消登記と一緒に連件で申請することができますが、申請書は別々に作成しなければいけません。
抵当権抹消の登記申請書は、このように記入します。
※これは記入例ですので、実際の記入内容は必ずご自身でご確認いただくか、法務局へご相談ください。
画像は法務局ホームページより引用https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/static/info-net_00001.html
申請内容に誤りがあった場合、内容によっては後日法務局へ補正(修正や書類追加等)に行く必要があります。
そのため、心配な方は事前に法務局の登記申請相談コーナーに行くことをおすすめします。
相談コーナーは基本的には予約制のようなのでご注意ください。
抵当権抹消登記の費用
抵当権抹消登記は申請するときに登録免許税を納めなければなりません。
登録免許税は、土地1筆や建物1棟につき、1,000円です。つまり、土地と建物がそれぞれ1つずつの場合は合計で2,000円になります。
マンションの場合は敷地権付きの登記となっているので注意が必要です。敷地権とは、土地と建物が一体となって登記されている形態のことを言います。
マンションによっては、複数の敷地の上に建物が立っていることもあります。例えば2つの敷地に対して建物(1棟)が立っている場合は、登録免許税は3,000円になります。
抵当権が設定されている不動産については、金融機関から送付される「抵当権の登記識別情報」または「登記済証」に記載されていますので、確認しましょう。
なお、登録免許税は、申請時に印紙を貼付して納めることが一般的です。
住宅ローン完済後、申請期限はある?
抵当権抹消登記について、情報サイト等によっては「3ヶ月以内に申請する必要がある」と記載されていることがあります。
しかし、実際は申請の期限は特にありません。
以前は、登記申請時に「代表者の資格を証する情報(※取得から3ヶ月以内)」を添付する必要がありました。法務局が、住宅ローンを貸し付けた金融機関等の住所や名称に変更がないことを確認をするためです。
しかし平成27年11月に取り扱いが変わり、申請書に会社法人等番号を記載すれば上記の資格情報は不要となりました。
申請の期限はありませんが、早めにした方が良いでしょう。
もし金融機関から送付された委任状や解除証書等を紛失したら、再発行してもらわなければなりません。
また、抵当権の登記識別情報または登記済証については再発行ができないので、「事前通知」または「司法書士等の資格者による本人情報確認」という制度を利用することになります。
いざ土地や建物を売買・贈与などするときに困らないためにも、忘れないうちに申請をすることが大切です。
4. 完済後、火災保険質権消滅の手続き方法
次に、火災保険質権消滅の手続きについて見ていきましょう。
火災保険質権消滅手続きは、火災保険の会社に対して行います。登記申請よりも手続きは簡単です。
手続きの流れ
一般的な流れは、以下のとおりです。
- ①金融機関から「火災保険の保険証券」と「質権消滅に関する書類」が送付される
- ②保険会社に連絡・上記の書類を送付
- ③保険会社から保険証券が郵送される
このように、抵当権抹消登記に比べると手続き内容はかなりシンプルです。保険会社に書類を送付するだけで完了します。
それほど手間もかからないので、すぐに手続きをするようにしましょう。
なお、質権消滅の手続きをしても、火災保険の契約は継続します。
保険会社から郵送された保険証券については、大切に保管をしましょう。
5.まとめ
今回の記事では、住宅ローン完済までの期間や完済後にやるべきことについて解説しました。
住宅ローンを完済する頃には、借入時と家族構成が変わっている方も多くなっています。
「子どもが一人暮らしになったので、部屋が余っている」「家族が増えたので、もっと広い家に住みたい」「定年退職したので、もっと利便性が高いところ(またはもっと自然が豊かなところ)に住みたい」という方もいらっしゃるのではないでしょうか。
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