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最近、ZEH-M Orientedに認定されている新築マンションが増えてきています。普通のマンションや他のZEHマンションとの違いは何なのでしょうか。
今回の記事では、ZEH-M Orientedの基準やメリットについてご説明します。
目次
1. ZEH-M Orientedとは何か
まずは、ZEH-M Oriented(ゼッチマンション オリエンテッド)とはどんなものなのかご説明します。
ZEH-M Orientedとは、ZEHマンションの1つです。
ZEHマンションとは
そもそもZEHマンションとは何なのでしょうか。
ZEHは「Net Zero Energy House(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)」の略語で、「エネルギー収支をゼロ以下にする家」という意味の言葉になります。
ZEHマンションは、家で使うエネルギーと(太陽光発電等で)創るエネルギーの年間収支が実質ゼロになるようなマンションのことです。
収支をゼロにするためには、使うエネルギーを相当減らさないと難しいように思えます。
ですが、ZEH住宅(ZEHマンション)はこの2つによって快適な環境を保ちながら省エネを実現しています。
- ● 住宅の断熱性能が高い
- ● 設備のエネルギー効率が高い
ZEHマンションの種類と基準
ZEHマンションは4種類に分かれています。
- ZEH-M(ゼッチ・マンション)
- Nearly ZEH-M(準ゼッチ・マンション)
- ZEH-M Ready(ゼッチ・マンション・レディ)
- ZEH-M Oriented(ゼッチ指向型マンション)
ZEHマンションは、種類によって基準が少しずつ異なっています。
ZEHマンションと認定されるための重要な基準はこちらの3つです。
- ① 強化外皮基準
- ② 一次エネルギー消費量削減率が規定以上
- ③ 再生可能エネルギーを導入(ZEH-M Orientedは除く)
3つの基準について順にご説明します。
外皮基準とは、家の断熱性能の基準のことです。すべてのZEHマンションは、断熱性能が特に高い「強化外皮基準」を満たさなければなりません。
一次エネルギー消費量削減量(以後、省エネ率と言う)とは、どれだけエネルギーの消費量を減らせたのかを表しています。
すべてのZEHマンションでは、(再生可能エネルギーを除いて)基準エネルギーよりも20%以上削減しなければなりません。
ここまでは、4種類のZEHマンションに共通する基準です。それぞれの種類によって違うのは、再生可能エネルギーも含めた省エネ率になります。
再生可能エネルギーとは、太陽光・風力・地熱など自然界に存在するエネルギーのことです。
石油・石炭・天然ガスなどの化石エネルギーと違って温室効果ガスは出ない上、繰り返し利用することができます。住宅における再生可能エネルギーで代表的なのは太陽光発電です。
ZEH-M Orientedを除いた3種類のZEHマンションでは、再生可能エネルギーを導入しなければなりません。
導入した再生可能エネルギーも含めた省エネ率は、ZEH-Mが一番高く、ZEH-M Readyが一番低いです。ZEH-M Orientedは、そもそも再生可能エネルギーの導入は必要とされていません。
- ここまでのポイント
- ● ZEHマンションは4種類ある
- ● 主な違いは、再生可能エネルギーを含めた省エネ率
- ● ただし、ZEH-M Orientedはそもそも再生可能エネルギーを導入する必要がない
基準がまとめられた画像もご紹介します。
画像は「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス実証事業調査発表会資料」より引用
画像を見ると分かるように、マンションの場合は住棟(共有部分と専有部分)と住戸(専有部分)の両方について評価基準を満たす必要があります。
また、マンションの階数によって目指すべき水準(ZEHマンションの種類)は違います。
基準が厳しいZEH-MやNearly ZEH-Mは1~3階建て、次に厳しいZEH-M Readyは4~5階建て、そしてZEH-M Orientedは6階建て以上です。
ただし、階数によってZEHの種類が確定するわけではありません。地上5階建て以下のマンションの中にも、ZEH-M Orientedに認定されているものがあります。
2. ZEH-M Orientedのメリット
続いて、ZEH-M Orientedに住むメリットをご紹介します。
家の中が冬は暖かくて夏は涼しい
ZEH-M Orientedは強化外皮基準で、普通の住宅よりも断熱性能の基準が厳しいです。
具体的には、断熱性能等等級は等級5で、UA値は0.4~0.6となっています。
断熱性能が優れている家は、家の中の熱は逃げにくく、外気温の影響を受けにくいです。そのため、年中快適に過ごすことができます。
冬場にリビングから廊下に出たら急に寒くなった、という経験がある方もいらっしゃるでしょう。
しかしZEH-M Orientedは断熱性能が高いので、家の中の温度差が小さいです。ヒートショックのリスクも軽減されます。
UA値や高断熱住宅についてさらに詳しく知りたいという方は、こちらの記事をご覧ください。
光熱費が削減されて経済的
ZEH-M Orientedは断熱性が高いので、エアコンや暖房の効きが良いです。使用電力が少なくなり、光熱費が削減されるでしょう。
また、ZEH-M Orientedに導入されている設備は省エネ性能が高くなっています。詳しい内容は後ほど解説しますが、ZEH-M Orientedは地球に優しいだけでなく、家計にも優しいです。
補助金や減税がある
ZEH-M Orientedに認定されたマンションを購入することで、補助金や税金の控除を受けられることがあります。
子育てエコホーム支援事業
ZEH-M Orientedを購入することでもらえる補助金は、子育てエコホーム支援事業です。子育て世帯または若者夫婦世帯がZEH住宅を購入すると80万円がもらえます。
この補助金制度は2024年のものですが、2025年以降も同様の補助金制度が実施される可能性があります。
詳しくはこちらの記事をご確認ください。
次に、2つの税金控除制度をご紹介します。
住宅ローン控除(減税)
住宅ローンでマンションを購入した人は、条件を満たしていれば住宅ローン控除を受けられます。
住宅ローン控除とは、一定期間、所得税や住民税が減税される制度です。
控除期間
新築マンション※:13年間
中古マンション:10年間
※省エネ基準適合以上のマンション
控除額の計算方法
住宅ローンの年末残高×0.7%=1年間の控除額(ただし上限あり)
住宅ローンの年末残高とは、年末時点で残っているローン残高のことです。例えば3000万円が残っている場合は、21万円が控除額となります。
控除額には上限があり、上限額は住宅の省エネ性能によって変わってきます。特に新築マンションの場合、省エネ性能が高ければ高いほど控除額は多くなります。
新築マンションの借入限度額(上限額)
住宅の種類(性能) | 2022年・2023年入居の 場合の限度額 |
2024年・2025年入居の 場合の限度額 |
減税期間 |
---|---|---|---|
長期優良住宅・低炭素住宅 | 5,000万円 | 4,500万円※1 | 13年間 |
ZEH水準省エネ住宅 | 4,500万円 | 3,500万円※1 | 13年間 |
省エネ基準適合住宅 | 4,000万円 | 3,000万円※1 | 13年間 |
その他の住宅 | 3,000万円 | 0円 (2023年中の建築確認で 2,000万円) |
13年間 または 10年間※2 |
※1 子育て世帯と若者夫婦世帯は、2024年入居の限度額は2022~2023年入居と同様になる
※2 その他の住宅は、2024年と2025年の入居だと10年間になる
中古マンションの借入限度額(上限額)
住宅の種類(性能) | 2022年~2025年入居の 場合の限度額 |
控除期間 |
---|---|---|
長期優良住宅・低炭素住宅・ ZEH水準省エネ住宅・省エネ基準適合住宅 |
3,000万円 | 10年間 |
その他の住宅 | 2,000万円 | 10年間 |
ZEH-M Orientedに認定された新築マンションを購入して2024年に入居した場合、年間最大24.5万円が減税されます。
なお、ZEH-M Orientedの中には、さらに低炭素住宅としても認定されているマンションもあります。この場合、限度額は年間最大31.5万円です。
住宅ローン控除の要件などを詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置
マンションを購入するときに、父母や祖父母から援助を受けるという方もいると思います。このとき、条件を満たせば一定額までは非課税になります(住宅取得資金援助制度)。
この非課税制度を活用することで、贈与税を大幅に減税することができます。
普通の住宅の非課税額は500万円ですが、ZEH-M Oriented(ZEH住宅)なら1000万円まで非課税です。
この制度は夫婦それぞれが利用できるため、共有名義であれば最大2,000万円が非課税となります。
住宅取得資金援助制度については、こちらの記事をご覧ください。
3.ZEH-M Orientedの省エネ設備を紹介
最後に、ZEH-M Orientedに認定されたマンションによく導入されている省エネ設備をご紹介します。
※マンションによって設備はさまざまであり、今回ご紹介するのは一例となります。
エコジョーズ
エコジョーズは少ないガスで効率よくお湯をつくる給湯器です。排気熱を再利用することで、少ないガスでも普通の給湯器と同じようにお湯を沸かすことができます。
環境にも優しいですし、何より使用するガス量が少ないので節約になります。
Low-E複層ガラス
窓は住宅の断熱性能を高めるための重要なポイントです。ZEH-M Orientedでは普通の複層ガラスではなくLow-E複層ガラスが採用されていることが多くなっています。
Low-E複層ガラスとは、複層ガラスの内側にLow-E膜をコーティングしたガラスのことです。断熱性能が非常に高く、太陽の放射熱や紫外線をカットしてくれます。
保温浴槽
保温浴槽は浴槽と風呂ふたに高い断熱材を使った浴槽で、普通の浴槽よりもお湯が冷めにくいです。追い炊きの回数を減らせて、光熱費の削減に繋がります。
LED照明
LED照明は寿命が長く、消費電力が少ないのが特徴です。蛍光灯の4~5倍の寿命がありながら、消費電力は2分の1以下となっています。
ZEH-M Orientedでは原則としてすべての照明でLEDを採用しています。人感センサーが付いていることもあり、消し忘れがなく節電になります。
節水水栓・節湯シャワー
ZEH-M Orientedは、節水タイプの水栓が導入されています。給水・給湯量が削減されるので、環境に優しく、さらに水道光熱費も削減されます。
また、日常生活で多くのお湯が使用されるのは「シャワー」です。ついつい出しっぱなしで使ってしまうという方や、勢いが足りなくて多くお湯を流しているという方も多いのではないでしょうか。
ZEH-M Orientedは節湯シャワーが採用されています。節湯シャワーには手元に止水ボタンが付いているタイプや、水圧を変えずに流水を調整するタイプがあります。
このように、ZEH-M Orientedにはエコで省エネな設備が多く備え付けられています。
マンションを購入するときには価格や広さ、立地などに目が行きがちです。しかし、「設備」も毎日の生活に深くかかわってくる大切なポイントになります。省エネな設備は光熱費の削減や快適性の向上に寄与してくれるでしょう。
4.まとめ
今回の記事では、ZEH-M Orientedの基準やメリット、最新の省エネ設備について解説しました。
2025年4月から新築住宅は「省エネ基準適合」が義務化されます。
そして、2030年にはZEH水準が義務化される予定です。将来的にはすべての新築マンションがZEH-M OrientedなどのZEHマンションになるということです。
「省エネ基準適合」義務化や2030年の「ZEH基準」義務化(予定)に伴い、中古住宅は資産性でも居住性でも新築に劣後する形になると想定されます。
しかし新築住宅は価格が高いだけでなく、供給数も昔より減っています。そのため中古住宅の購入を検討している方も多いでしょう。
中古住宅を所有または購入検討されている方は、ご自身で自宅を省エネ化することが望ましいです。そのような方のために、国や自治体もさまざまな補助金制度で省エネ住宅の推進をバックアップしています。
省エネ住宅の重要度は理解できたし、今なら補助金ももらえる。いざ行動しよう!とした皆さんは、以下のように思われたのではないでしょうか?
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